子供のころから転校ばかりでずっと一人だったうち。

 小さい時からそうだとなんとなくこれからもそうなんじゃないかって不安に思っていた頃もある。

 けど、音ノ木坂に来て初めて親友ができた。

 いつしか親友は好きな人に変わっていて、好きな人は恋人になった。

 手を繋いで、抱き合って、キスをして、肌を重ねた。

 幸せすぎて怖いくらいに幸せだって言える。

 それを本気で思っとるけど………今うちはあるもどかしさを感じていた。

 

 

「希……」

「えりち……」

 うちらは見つめあう。

 うちのベッドの上で直に肌を触れ合わせながら。

「好きよ、希」

「……うちもや」

 軽く言葉を交わすと、えりちは身を乗り出すようにしてうちの手に自分の手を重ね、自然と指を絡める。

「……希」

 潤んだ瞳と濡れた声。

「……うん」

 それが何を意味するかをわかるうちは目を閉じると、それを合図にえりちは空いた手でうちの肩を抱くと

「んっ……」

 唇を合わせてきた。

 ふっくらとしたえりちの唇。そこから暖かく湿ったものがうちの唇に伸びてくる。

「ちゅあ…ぷ、んぁ……くちゅ、んぅ……む。……はぁ、ん」

 うちの中に侵入してきたえりちの舌に応えるようにうちも舌を伸ばすと、ぴちゃぴちゃと艶めかしい水音が響く。

「っ、はぁ……は……」

「ふぁ……ふふ、希。顔、真っ赤よ」

「し、仕方ないやん。こんなん……恥ずかしいに決まってるんやから」

「それだけ?」

 えりちはうちの髪に手を伸ばすと優しく撫でながら少し意地悪な笑い方をした。

「っ……」

 うちはその笑顔にうつむいてしまう。

 もちろん恥ずかしい。

 もう何度か目のことやけど、キスもこうして肌を重ねるのも恥ずかしいのは変わらない。

 でも、うちは今体を熱くしてるのは羞恥だけじゃなくて………他の意味も含んでるのは否定しようがない。

「……えりちの、あほ」

 けどそれを認めるのはそれこそ恥ずかしくてえりちが答えさせようとしてるものの代わりにいじけたように返す。

「あら? このかしこいかわいいエリーチカに向かってひどいわね。そんな希はこうしてあげる」

「あっ……」

 えりちがまた迫ってきたかと思うと

 ボフン。

 ベッドに押し倒された。

「ん、もう。えりち……んっ」

 形ばかりの抗議の声をあげようとしてもそれよりはやくえりちの手がうちの胸に伸びてきた。

「んふ、やっぱり希の胸っていいわよね。揉みごたえがあるわ」

「ふぁ……えりちの、だって、そんな変わらんやろ……ぁ、ん。ふぅ」

 えりちの細くてしなやかな指がうちの乳房に沈み、くにくにといやらしく形を変えると、そこからさざ波のような快感が広がって甘い声が漏れてしまう。

「あ……ん、あ……っふ…」

「希の声、可愛い。もっと聞かせて」

「やっ……えりち! あ、胸……あ、ぁ」

 手をそのままにえりちはうちの胸に顔を寄せると舌を伸ばして、胸の先にあるものを舐めあげる。

「乳首固くなってる……はむ……んちゅ、ちゅぅ…ぺろ。ちゅ、ぷ」

「ぁ、あん、そ、れ……あかんっていってるやん……ふあ」

 えりちがうちの胸の突起を舐めて、吸う。時には優しく噛んだり感覚の違う刺激を与えてくる。その間も胸を責める手が休まることはない。

 こういうことになれてしまえばこれくらいは激しいことにはならんのかもしれんけど、まだ数えるほどしか経験のないうちには激しくて浮き上がるような感覚が体を貫く。

「は、ぁ……んっ……ふぅ、ん。あ、ぁ……」

「希、可愛いわ……んっ」

 再びキス。

「じゅぷ、ぢゅく。ちゅぷ、くちゅ……ちゅぁ」

 激しく舌を絡め合わせると体の中に、気持ちいいのがたまっていくのがわかる。

 その熱さにうちは無意識にか、意識的にか腿をすり合わせた。

「っは……ぁ、えりち……」

 唇が解放されるとうちは、潤んだ瞳でえりちのことを呼ぶ。

 その声と、先ほどの行為にえりちはうちの求めるものを理解して

「えぇ」

 優しく微笑むと、さっき胸に当てていた手を下に進めていく。

 胸から、お腹、下腹部、そしてショーツに手をかけるとゆっくりそれを下ろした。

「んっ……」

 そこが外気に触れるひんやりとした冷たい感覚にうちは身震いした。

 これも慣れない感覚。

 本来肌をさらす場所じゃないところで一糸まとわぬ姿になるのはどことなく心細い感じするから。

「希……」

 えりちはそんなうちの気持ちがわかるのか安心させるようにうちを呼ぶと腿に手を当てて付け根へと指を進ませていった。

 クチュ。

「んっ」

 そこに指が到達すると湿った音がした。

 それはうちがえりちを求めている証。

「もうこんなにして、そんなにして欲しかったの?」

 さっきからやけど、えりちはこういう時意地悪や。

 うちが恥ずかしがる言葉をわざわざ選んでる。

「……えりちの……あほ」

 意地悪なえりちに対してうちはさっきと同じようにいじけたように返すのが精いっぱい。

 こんなんはしたないんかもしれないけど、えりちの言うとおりやから。

 えりちのことを求めてるのは自分が一番よくわかっている。

「……して」

 潤んだ瞳でそれを訴えるとえりちはそこに当てた指を動かし始める。

「っ、ふぁ…んっ、はぁ……ぁ」

 うちの女の子の部分からにちゃにちゃといやらしい音が響くのと一緒に痺れるような感覚が体を駆け抜けていく。

「希はここ、好きよね」

 えりちが楽しそうに言って、うちのナカに指を進めた。

 じゅぷ、ぐちゅ、くちゅ。

 浅いところを何度か出し入れしながら膣壁を掻く。

「ふふ、どう希? 気持ちいい?」

「ん、う……うん…ええよ…気持ち……いぃ。ふぁ……」

 それは本当。

 えりちの指がうちの中を往復するたびに快感が広がって体の力が抜けていく。代わりに頭の中がえりちに染め上げられていくようなそんな幸せな感覚。

(けど……)

 もどかしさを、感じてる。

「……っんく……」

 うちはそのもどかしさの正体を知っていて、口を結んだままえりちの手を見つめた。

 ぬちゅ、ぷちゅ、ぐちゅにゅぷ。

 うちに愛してくれるその手はうちの体も心も満たしてくれる。

(けど……)

 同じ言葉を心でつぶやく。

 もどかしさ。

 えりちと肌を重ねるたび大きくなっていった感覚。

 うちはその原因も解決方法も知っていて、でもそれには勇気が必要。一線を越えるための勇気が。

(……今日こそは……)

「……えりち、もっと……」

「ん? 希ってばおねだり? じゃあ……」

 えりちはうちの意味を理解せずに空いた指でぷっくらと膨らんだもう一つの女の子の象徴に触れた。

「ちゃう……そうやなくて……」

(……こんなん恥ずかしいし、怖い。……けど)

「もっと………奥」

 消え入りそうな声でうちはそれを口にした

 一生で一度の感覚を求めて。

「奥って……っ!?」

 瞬間、えりちの表情が変わる。

「のぞみ………」

 えりちが戸惑った表情でうちの中から指を引き抜いた。

「……えりち」

 うちも戸惑ってる。迷ってる。

 でもこれがうちの感じてるもどかしさの正体。

 えりちとエッチをするのはもう四回目。

 けれど、うちもえりちも【初めて】のまま。

 それがどうしたっていうわけやない。今のままでも十分に幸せやし、これをして何かが変わるわけやない。それをしなきゃ恋人じゃないとかそんなことも考えてない。

 そもそも恐怖もある。

 それでも、えりちにして欲しいって思うんよ。

 女の子にとっての一番の特別を一番好きな人にもらって欲しい。

 そんなんはうちの自己満足なのかもしれないし、こんなん言われてえりちも困ってるかもしれないけど……

「………いいの?」

 えりちはうちの気持ちを汲んでくれたように真剣な顔で一言それを聞く。

「………うん。えりちになら……えりちじゃなきゃ……だめやから」

 うちも多くは言わずにそれだけを答えた。

 それから軽くキスを交わしてから

「……希」

 最後の確認をするかのようにもう一度えりちがうちのことを呼ぶ。

「………………」

 うちは何も答えないで小さく頷いた。

 えりちの指。

 細くて長くてしなやか、まさに白魚のようなっていう言葉が似合うその指が今はうちの愛液に濡れててらてらと蠱惑的に光っている。

(やらしいなぁ……)

 この指が紅く染まる。

「んっ……」

 その想像に身震いしていると、えりちの指がそこに触れた。ただ、えりちも緊張してるのか入ってすぐに動きを止める。

(怖いなぁ……)

 自分が望んだことでも確約された痛みに不安は消えない。

(……小さいころ、注射を待ってる時もこんなだったかな?)

 なんて場違いなことを思っていると、

「っ!?」

 えりちの指が進んだ。今まで誰も踏み込んだことのない場所に。

 最初は熱いような、かゆいような感覚。

(い…っつ!)

 それが一瞬で痛みに変わった。

(痛い……痛い!)

 これまで感じたことのないような激しい痛み。

 背中や額に脂汗が伝う。瞳の奥が熱くなって、涙がたまっていく。

 想像もして覚悟もしてたけど、それをはるかに超える痛み。こんな痛みがあるのって疑いたくなるくらい信じられないほどの激痛。

「っ……ぁっ!!」

 その痛みに咄嗟に声をあげそうになって必死に止めた。

 そういう声をあげたくないって決めてたから。痛いのなんて当たり前やし、声を出すのも普通かもしれんけど、そんなことをしたらまるで拒絶してるように思えて嫌やから。

「希……」

(えり、ち……)

 うちは潤んだ瞳で視線を交わす。

 見たことないような不安そうな顔。

(そんな顔、せんといて……)

 そう言いたかったけど、口を開いたら悲鳴になってしまいそうでうちは口を結んだままシーツをぎゅっと握るしかできなかった。

 感じたことのないところにえりちの指を感じる。内腿に破瓜の証が伝うのがわかる。

「…ぁっ……ぐ」

 声が……でそう。

 覚悟もしてて、我慢しよと決意しても耐え切れないほどの痛み。

 悲鳴をあげたくないなんてうちの勝手な都合やし、我慢しても何かになるわけやない。

 けど、それでもうちは声を抑えた。

 えりちの記憶にそんな姿を残したくないから。

 これは痛くて苦しいことでも、決して嫌なことなんかじゃないんやから。

 そうやって痛みに耐えるうちにえりちは

「…………んっ!?」

 キスをしてきた。

 大丈夫? ともやめるとも聞かないで、黙って唇を重ねる。

 そのままえりちに舌を吸われてえりちの口内へと持って行かれた。

「んっ……ふぅ……れろ、ちゅ」

 丁寧に舌が絡んでくる。前も横も後ろも余すところなく慈しむようにうちを愛してくれるとてもとても優しいキス。

(……あかんわ。えりち)

 きっとえりちはうちが声をあげたくないっていうことをわかってくれたって勝手に思って、その気持ちが胸を熱くさせた。

 痛みには流れなかった涙が優しさで溢れる。

 痛いのは変わらなくても痛みに勝る気持ちが胸に灯った。

 えりちの手がうちの中にあるってわかるこの感覚。えりちとつながって一つになれたような感覚は痛み以上に喜びをくれた。

(えりち……えりち!)

 気づくとうちはシーツを掴んでいた手をえりちの背中に回してぐっと引き寄せていた。

「んぅ、ちゅ……る……くちゅ。じゅぷ」

 それと同時に自分からえりちの唇に吸い付いて唾液が二人の顔を汚すのもお構いなしに激しく交わらせた。

「じゅる……ちゅぱくちゅ…えりち……ん…ぅむあ、んちゅ」

「あむ……ぢゅぅ……んっ…のぞみ……ぴちゅ……にゅぷ…」

「っ……はぁ……あ、えりち……」

 唇を離すとうちは今度はえりちの首元に手をまわして、熱にうかされたような目で見つめあった。

「はぁ……はぁ。……もっと……して、ええよ。えりちになら大丈夫やから。うちのことえりちのことしか考えられんようにして」

「……えぇ」

 えりちは嬉しそうに微笑むと、いれているだけだった指を動かし始めた。

 奥に、手前に、じゅくじゅくと音を立てながらえりちの指がうちの中を満たしていく。

 痛みはあるけど、それ以上にえりちと通じ合ったっていう感覚が快感を強めていく。

「んっ……あ、は……ぁ……っ」

 声が出る。

 痛いからじゃなくて、えりちの指が嬉しくて、気持ちよくて。

「希、好き。愛してるわ。希」

 えりちも興奮してるのか上ずった声をあげながらうちの体にキスの雨を降らせてきた。

 頬に、唇に、首筋に、鎖骨に、胸に、えりちの唇がうちの体を覆い尽くしていく。

「ぁ、あ、…えり、ち……んっ…うち、も……愛して、る……んぁ」

 下半身の痛みと上半身の快感がまざりうちはとぎれとぎれに答える。

(えりち……はげ、し……)

 うちのアソコがえりちの指に吸い付くのと、それでもえりちの指がその中を抉っていくのがわかる。何度も何度もうちの抵抗をかき分けて膣壁をこすりながら奥を突く。

(指……えりちの……指……)

 あのえりちの綺麗な指がうちの中に突き入れられていると思うと体が余計に熱さを増していく。

「っくぁ、……ぁふああ、っん……ぁうあぁ」

(っこんな……、こんなん)

 キスの柔らかな刺激と、秘部から伝わる激しい刺激。

 その対照的な二つの快感にうちは早くも限界に近づいていく。

「えりち……はぁ……っ……んっ…ぁあ…えりちぃ……」

 何を求めたのかわからない。ただ真っ白に染め上げられていく意識の中でえりちのこと呼んだ。

「っ……んっむ……ん」

 またキス。

「っむっ……んちゅ……じゅぷ…ちゅ」

 隙間なく唇を合わせ、えりちの舌が奥の奥まで入ってくる。

 さらには再び離れていた肌が触れ合ってえりちの熱がうちに伝播していく。

 本当にえりちと一つになったみたい。

 えりちの熱。えりちのキス。えりちの指。

 全部が気持ち良すぎて

「っは、ぁ。えりち、…うち、…も、もう……」

「……うん。見せて、希の……イクところ、希のえっちなところも全部」

「っ……あ、あほぉ……っぁ…っ」

 えりちの意地悪な言い方などうにか抵抗して、うちは

「っあぁ……ぁああ。っああぁぁっ――っ!!」

 多分、これまでで一番の絶頂を迎えた。

「っは、あぁ……ぁ」

 快感にはじけた体で息を整えるうち。

「ぁ……待って」

 脱力したうちからえりちが指を引き抜こうとしてるのを感じてそれを制止した。

「……もうちょっとだけ、そのままにしといて」

「っ……え、えぇ」

 えりち、ちょっと不思議そうやな。

 うちも理由ははっきりとはわからんけど、多分えりちにはもっとわからんやろな。

「っあ……はぁ……は、……ぁ」

(……じんじん、する)

 えりちの指をうちの中に感じるって今さらながら不思議な気分。

まだ痛みは強いけど、その痛みも、さっきの快感もえりちがくれたものなら愛しさに変わる。

(……あぁ……うち、幸せや)

 不安だった。怖かった。でも、終わった今はそれしかない。

 体に満ちていく幸福感にうちは自然と笑みをこぼして

「えりち……ありがとうな。大好き。……ううん、愛しとる」

 そう伝えながら喜びの涙を頬に伝わらせた。

 

 

 これでうちらの関係がなにか変ったわけやない。

 そもそももう恋人だったんやし、本当にこれは自己満足だったんかもしれない。

 それでも、勇気を出してよかったって思う。

 【初めて】のうちにえりちはどこまでも優しかったから。えりちの想いを今までで一番強く感じたから。

 あぁ、さっき変わったわけじゃないって思ったけど、違ったわ。

 もっとえりちのことを好きになった。

 好きな人をもっと好きって思えるそれもまたすごく幸せなこと。

 これからも二人で色んな経験をしてもっと、もっともっと好きになっていく。

 そんな未来が見えた気がした。

 

 

「私もよ、希。愛してる」

 きっとえりちも同じことを想ってくれていることを

「………んっ」

 もう数えきれないくらいにしたキスに、これからも数えきれないほどしていくキスに感じるのだった。  

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