それは命の退院の翌日だった。

 さすがにその日は学校に通うこともなく、昼間は家で過ごしていたが夕方が近くなると命は学校へと向かっていた。

 丁度、授業が終わり校門から次々と人が吐き出されていく中命は校門に張り付いて、この門を目指してくる人たちからある人物を探し出そうとしていた。

 その相手は命が探し始めてから、数分で命の視界に入る。ただ、命に気づいた様子はなく一人でまっすぐに校門へと向かってきていた。

「理子」

 命は目的の相手、理子が近くなると目の前に飛び出して名前を呼ぶ。

「っ!? みこ?」

 理子は、思いもかけない相手に会ったといわんばかりに驚いて目を丸くする。

「ど、どうしたの? え? もう大丈夫なわけ?」

 何度かお見舞いにも来てくれた理子は命が昨日に退院したという事実はしってはいたものの、学校に復帰するのはまだ先になると聞いていたため目の前の命がいることが不思議でたまらない。

「まぁ、散歩するくらいは平気」

「そ、そう……」

「それで、理子はこれから少し時間ある?」

「え? ある、けど?」

「それじゃ、どこかでお茶でもしない?」

「お茶?」

 急に現れたかと思えばまた唐突な提案をされて理子は混乱し、命がどういうつもりで言っているのかを察知できなかった。

「そう、………………」

 命は次の言葉こそ言いたかったはずなのに、緊張して中々その先が言い出せない。少し前に言ったことではあるが、数年にわたって封印してきたこと。

 ただ、言い出すためらいは確かにあったが、長くはなかった。

「奢る、から」

「奢る……あ………」

 まず、その意味を察せずに首をかしげ、次に命が戸惑いながらも晴れやかな顔をしているのに気づき、

「ジャンボミックスパフェデラックスね」

 命と同じような笑顔で、お気に入りの店の一番高いスイーツのそらんじていた。

 そして、命は二人目の友達を得ることとなった。

 

 

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