年が明けてゆめに会うのは大体三が日が終わってからが。例年だったらそろそろ落ち着いてきた中初詣に行ったり、部屋でごろごろしたり、まぁほとんどいつも通りに過ごす。
ただ、今年は珍しいことが起きた。
「で、なんか用なのゆめ?」
一月二日のお昼。この日、美咲は両親に会いに行っちゃってて、こっちの親も親戚のところに挨拶に行ってあたしは一人ごろごろと正月らしからぬ時間を過ごしてた。
そこにいきなりゆめがやってきたんだけど
「……用がないと会いに来ちゃいけないの?」
ベッドの上で何やらご機嫌斜めな感じ。
「そんなわけはないけど、いつもは二日になんてこないじゃん?」
あたしもベッドに上がってお姫様をなだめようとする。
「……彩音に会いたかったから来た。それだけ」
「おぅ……」
また直球だね。
あれかな? ひかりさんから逃げてくる意味もあるのかね。
「あ、でも美咲ならいないよ。今日は親のところ行ってるから」
「………………彩音」
「ん?」
前を向いてたゆめが急にこっちをみた。
しかも
「……キスしろ」
「はい?」
よくわからない要求をされてしまった。
「……しろ」
いつも眠そうな瞳にちょっと別の色が混ざっている気がする。どんなものかって言われるとうまく言葉にできないんだけど妙な迫力を感じる。
「う、うん」
ともあれ、拒否する理由は特にないんであたしはゆめの肩を軽く抱くと
「ん………」
軽く唇を触れ合わせた。
「これで、い……?」
「…………もっと」
そのまま手を離そうとしたけど、ゆめは小さな声でおねだりをしてくる。
「う、うん」
ゆめの意図はわからないままあたしはもう一度距離を詰めると唇を重ねた。
「ふ……ぅん……ん」
今度はもう少し長く互いに息遣いを感じる。
「ふぁ……」
キスを終えると見つめあう。
(あれ?)
また、ゆめの目にさっきと同じ揺らぎを感じる。やっぱりそれが何かというところには届かないで
「……なんで大晦日の日、電話でなかったの?」
「へ?」
ゆめのその質問に疑問を吹き飛ばす。
「あ、あれは……寝ちゃってたって言った、じゃん?」
まぁ、嘘なんだけど。ゆめから電話がかかってきたのは年が明けて少したったころ。その時間は……まぁ、電話に出られる状況じゃなかった。
だから朝起きてすぐゆめに電話を返して、寝てたって言ったんだけど……
「……………」
じとっとした目で見られてるっていうことは信じられてないってことだね。
「……美咲とはしたの?」
「へっ!?」
「……キス」
び、びっくりした。別のことしたのかって聞かれたのかと思ったよ。
「ま、まぁ、ね。美咲がどうしてもしたいとかいうからさー」
これも嘘だけど。年が明けたのと同時に美咲の承諾もなしにしちゃったけど。
「………ずるい」
「な、なにが?」
「……私だって、一緒にいたかった」
なんだか今日のゆめは変かな? 雰囲気もちょっと変わってるし、なんだか言葉足らずというか。
「………………彩音」
こ、今度は何?
「ぁ………」
体が浮遊感に包まれる。
ドサ。
かと思えば落ちた先にふにっとした触感。
「ゆ、め?」
どうやらゆめに引っ張られて、ゆめをベッドに押し倒した形になってるみたい。
「……………彩音」
ゆめには珍しい情熱的な瞳でこっちを見てる。
「え、えと……」
これは、そういうこと、だよね?
あれかな? 一緒に年越しできなくていじけてるとか? あと、もしかしたら……
(気づいてるのかな?)
年明けに何してたかって。
なら………
「んっ……」
あたしはゆめの唇を奪う。
「ちゅ……ぱ。ちゅく……」
今度は舌を絡めながら。
「んっ…あ…くちゅ……ちゅぷ」
熱い感触。ゆめも珍しく積極的に舌を返してくる。その姿勢にあたしはゆめが今日ここにきた理由を確信した。
「ぷぁ……あ……はぁ……」
キスの余韻に浸って呆けているゆめの頬にもう一回ちゅってすると、ゆめの服の下に手を潜り込ませた。
「みっ……」
「ね、ゆめのこと欲しいな」
お腹のあたりを撫でながらゆめのことを見つめる。
「っ………」
(かわい)
恥ずかしそうで、けど上気してて、どこか不安そうで。でも期待があるようでもあって。
愛してあげたくなる。
「………好きにしろ」
いつものこの了承の仕方。自分から誘ってきたくせに恥ずかしさが上回ちゃってこんな言い方をする。。
「じゃ、好きにしちゃう」
この子供っぽいいいかたがいかにもゆめっぽくて感じちゃって、あたしは
「んっ」
今日四回目のキスをしながらゆめのことを愛し始めるのだった。