「ねーねー、彩音ちゃん」
ゆめに二度目のプロポーズをした後
休みや平日に関わらずゆめがあたしのところに来るのはいいとして少し困った事態が発生している。
「……なん、でしょうか、ひかりさん」
なぜかひかりさん来ることも多くなった。
あの結婚式を境にゆめとひかりさんは仲良し姉妹とまでは言えないまでもある程度距離が縮まったみたいで、ひかりさんもゆめに必要以上にべたべたとはしなくなった。
ただどういう意図かまでは知らないんだけど
「私と浮気してみない?」
たまにこういう理解に苦しむことを言ってくる。
「いや……しませんけど?」
「えー、いいでしょー。ゆめちゃんや美咲ちゃんには黙っててあげるから」
「いえ……」
黙るも何も、二人ともそこにいるんですが。
ベッドにいるあたしは助けを求めるように二人に視線を送るけど二人ともひかりさんが苦手なのは変わらないのか我関せずといった様子でほとんど無視をしている。
「っていうか、何でそんなこと言ってるんですか」
「だってー、ゆめちゃんが最近かまってくれなくて寂しんだもん」
それは前からのような……? いや、けどスキンシップが減ったっていうじゃ間違ってはいないのかも? あれが姉妹の仲睦まじい様子にはとても見えなかったけど。
「私の相手をしてくれたら、二人にはあのこと黙っててあげるよ?」
ベッドの上であたしに迫りながらひかりさんはにやりと唇の端を吊り上げるけど
「二人に隠すようなことなんてありませんが……?」
「えー、だって私の胸あんな風に触ったじゃない」
「……っ」
視界の端で恋人ちゃんたちがピクリと反応する。あたしの気持ちを疑ってなんかいないんだろうけど、あの二人はいまいちあたしを信じてないというか、変態だと思っているというか他の子に手を出しそうって思われてるんだよね。
「ね、今晩私に付き合ってくれたらあの時のことは内緒にしてあげる」
その時のことを黙っていられても今ここでこの提案受けたらあたしは後で二人に何をされるかわかったもんじゃないんですが……
「えーと……」
いや、もちろん断るのは決定事項なんだけどどう断るべきか。へたなこと言うと二人に何されるかわかんないし。そもそも何の目的でこの人はこんなことしてるんだか。
「彩音ちゃんがあんな風にするから忘れられなくなっちゃったのに……私のことなんてその時だけだったんだ……」
あからさまな演技だけど、触ったというところは否定しようないからなんというべきか
「……そういえば彩音、それはどういうことかまだ聞いてない」
しかもゆめにはその事実を伝えちゃっているわけで……
「それは……ゆめちゃんになんて言えないよ……」
怪しい雰囲気を背負いゆめがベッドに近づいてくるとひかりさんはあからさまに過剰に頬を染め、一見恥ずかしげにあたしやゆめから顔をそらした。
「……彩音どういうことだ」
「いや……どういうことも何もなくて、そのひかりさんは……」
「胸、触ったくせに」
耳元で小さく囁くひかりさんに悲壮感なんかなくてこの状況を利用して何かしら邪なたくらみをなそうとしていることは明らか。
「……説明しろ。何でひかりのことを襲った」
「いや、襲ってはいない」
「……いいから、なんなのか言え」
相手がひかりさんだからなのかゆめはいつも以上に不機嫌にあたしを睨みつけその横でひかりさんは
「はぁ……こういうゆめちゃんもいいなぁ」
なんてうっとりと見つめてて
(まさか……ゆめを嫉妬させるためだけにこんなことしてるの?)
そんな確信を抱いちゃってこれから先、怖い義姉ができたっていうことになんとなく苦労が増しそうな予感を感じずにはいられなかった。