今日はいきなり寒い。
この前まで朝夕はともかく昼間なんて暖かったくらいなのに、今日はまるで冬みたいだ。
実際陽が落ちるのも早くなって冬の足音が近づいているのはいろんなところで感じてるけど、今日は気温が低いだけじゃなくて吹く風も冷たい。
さっき見た携帯のニュースじゃ木枯らしが吹いたとか。
「ほんと、最近気づいたら冬になってるって感じよね」
「……秋がないみたい」
前を歩く二人も同じようなことを思っているみたいで寒さについて語る。
今は適当に買い物した帰りで、この後はあたしんちでお泊りの予定。
「まったくよ。風邪引かないようにしないとね」
「……うん」
特に理由があるわけじゃないけど私は二人から一歩離れたところを歩いてる。二人を怒らせたりとか、そういうことじゃなくてたまにこうやって話に入らない時もある。
だから、一人で寒い寒いと思っているわけなんだけど。
「…………」
ふと、手に当てる風の冷たさを感じる。
「……ふむ」
それから前を歩く二人を見て頷いた。
(ま、寒いしね)
と、心でつぶやいてからあたしは二人の間に割り込んで
「っ!?」
指を絡めて手をつないだ。
急なことに二人はびっくりしてあたしを見てくる。
「寒いしこうしよ」
あたしは平然とそう答えて二人を交互に見つめた。
「たまには気が利くのね。普段は鈍感なくせに」
「……めずらしい。だから急に寒くなった」
(えーー)
あたしは二人のためにしたつもりなのに、なぜ非難されるように言われなきゃいけないんだ。
いや、まぁ、これは照れ隠しみたいなものだっていうのはわかってるよ? けど、こういう時は素直に嬉しいって一言言ってもらいたいのが乙女心なんだけどねぇ。
「まぁ、お礼は言ってあげるわ」
「……褒めてあげる」
ぎゅ。
ちょっと落ち込んだあたしの手を二人は握り返しながら口々にあたしが欲しかった言葉をくれる(ゆめのはお礼なのか微妙だけど)。
それが嬉しくてあたしも二人を繋ぐ手にもっと力を込めて笑顔になる。
その両脇じゃあたしの可愛い恋人たちも同じ顔をして、三人仲よく歩いていった。
今年の冬も楽しくなりそうだ。
(ま、この二人がいれば一年中楽しいけどね)