他愛のない話ってのは、まぁ名前の通り意味も理由もなかったりする。

 それはただ場を持たせるためだったり、時間つぶしだったり。あたしたちの場合は、そういうんじゃなくてほんとにただ意味もなく思いついたことを言うことが多かったりもする。

 でもそんななんでもない話が意外なものに発展することだってあるものだ。

 

 ◆

 

 冬のある日。

 この時期は寒いから特に理由がない限りは出かけなくて部屋で過ごすことが多い。

 そして部屋で過ごすときに多いのがリビングのソファで三人並ぶこと。

 夏だと暑いからって距離を取ることもあるけど、冬なんかはあたしを真ん中にして二人が寄りかかってくるのがよくある形。

 まぁ今はゆめは自分の部屋で寝てるから美咲と二人だけど。

 それで何かするわけじゃなくて、本読んだりスマホを弄ったり、テレビを見たりと好きなことをしている。

 そんな中あたしはぽつりと特に考えもなしに口を開く。

「そういえばさ、美咲」

「んー? なによ」

 あたしに背中を預けて逆側に脚を伸ばしてた美咲は頭を逆さにして反応する。

「今日、変な夢見ちゃったよ」

「ふーん、どんな?」

「あ、変っていうか、怖い夢かな」

「何なのよ」

「いやいざ話すとなると夢の話ってむずくない? 切り出し方って言うか前提っていうかあとオチがあるわけでもないっていうか」

「……いいからさっさと話しなさいよ」

 あたしを見つめる美咲の表情がかなり険しい。まぁあたしが美咲の立場でもこうなるけど、それはそれとして

(美咲のきつい顔って美人だな)

 とか思っちゃう。

「彩音?」

「あー、はいはい。えーと……」

 これ以上まごまごすると余計に怒らせるしあたしは考えなしに再び口を開いた。

「なんかさ、夢の中であたし美咲に監禁? されてたんだよね」

「…ふーん? なんで? どんなふうに?」

「えーと、確かなんかあたしが美咲に連絡しないで一週間くらいいなくなった? みたいな感じで美咲が怒ってて。で、もうどこにも行かせないってあたしに手錠してた。怖かったよ? 結構なんかめっちゃマジな顔してたから」

「………………」

 美咲はあたしの話に特別表情を変えることなく聞いて、ただあたしを見つめていた。

 大きな瞳であたしの心を覗くみたいにただ見つめて、少しすると体を起こし

「ふーん」

 と言って。

「ん?」

 そのまま体勢を変えた美咲はあたしの脚を跨いで正面に座った。

「えーと……何?」

「んー……」

 戸惑うあたしに美咲は不敵に笑って見せるとさらに距離を詰めて来て

「…んっ!」

 そのまま唇を奪われた。

「はぁ……っ…んっ」

 短いキスに情熱と確かな熱を感じて、吐息と共に唇が離れると唾液が糸を引いて太ももに落ちた。

「ちょ、何」

 慌てるあたしに美咲は不敵な様子を崩さず笑って

「彩音は私のことよくわかってるなって嬉しくなっただけ」

「はぁ? 何が?」

「だって、私するわよ、監禁くらい」

「へ?」

「もし彩音が一週間も連絡つかなくなっていなくなったらもう二度とそんなことおきないようにずっと離さないようにするわね。絶対」

「え、えとー……」

「言ってるでしょ? 私ほんとは彩音と一秒でも離れたくないってできるんだったらこの部屋から一歩も出ないで一緒にいたいもの。だから監禁くらいするわよ?」

(一切冗談に聞こえない……)

「冗談じゃないわよ?」

「っ!」

 心を読まれたみたいに返事されて背筋が震える。

「だから駄目よ彩音? 私のこと少しでも不安にさせたら?」

「っ……」

 美咲の纏う空気が妖しく、有無を言わせない圧を持ってあたしにのしかかってくる。笑っているのにどこか妖艶でそれでいて心を奪われるほどに綺麗だ。

(…多分、美咲は普通に考えたらおかしなことを言ってるのに)

「するわけないでしょ。あたしだって一秒も美咲と離れたくないんだから」

 あたしは当然のように美咲を受け入れる。

(あたしは……美咲のこういうところも大好きなんだよなぁ)

 そんな実感と共に

「彩音……」

「美咲……」

 首元に腕を回して再び近づいてきた美咲と

『ん……』

 今度は深く繋がりあった。

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