それはゆめが泊まりに来た日のある夜こと。
いくら、ラブラブでたまーーーに、一緒にお風呂入ることのある私たちではあるけど基本的には一人ずつ。
で、今ゆめが出てきてちょうど美咲がお風呂に向かったところ。
あたしは結構熱めのお風呂が好きで、ゆめは苦手。今日はあたしが先に入ったこともあって、こういう時ゆめは床に寝転がって熱が冷めるのを待つのが常だった。
だから、あたしは特にゆめが何も言わないのにも気にしないでベッドの上でうつ伏せになりながら本を読んでいた。
背後から迫ってくる影に気づかず。
(ん………?)
本に集中してながらもベッドが沈んだことを感じたあたしは、まぁゆめが珍しくベッドに上がってきたんだなくらいにしか考えず、これから何をされるかになんて考えが及ぶはずもなかった。
しかし、
「んっ………」
「はぇ?」
腰に手をかけられたかと思うと、そのままパジャマをずりおろされられるとさすがに驚いた声を出す。
「ちょ、ちょっと、ゆめ!?」
反射的に体を起こそうとはしたけどゆめがあたしの足に乗っちゃってるせいで体をひねって今の状況を確認することしかできなかった。
で、その状況はっていうと
(よくわからん……)
ストライプのパジャマに身を包んだゆめがあたしの足の上に乗っかって、あたしのズボンを下ろしている。
「あ、あの〜、ゆめちゃん? いつからそんなに積極的になったのかな?」
突拍子もないことをするゆめではあるけど、なんというかこういう感じのことはめったにしてはこない。
大体こういうことで積極的になるのは美咲にそそのかされた(とあたしが勝手に思ってる)時だけど、それにしてはそういう雰囲気がない。いつもはこういう時いじけたようだったり、照れたりとかなのに。
「……違った」
しかもパジャマに手をかけたまま意味不明なこと言うし。
「何が違ったのか知んないけど、違ったっていうんならとりあえずどいてくれるかな? 寒いし、恥ずかしいんだけど」
さすがにこの体制でパンツ丸出しっていうのはかなりきつい。いくらゆめしかいないとはいってもね。
「……むぃ」
ゆめは素直にどいてくれて、あたしはパジャマを履くとベッドに座ってゆめに向き直った。
「で、どういうことか説明して欲しいんですが」
同じくベッドにちょこんと可愛く座るゆめに当然のことを問いただす。
「……お風呂出たら、パンツがなかった」
「……はぁ。それで?」
「……彩音が盗んだかもしれないから確かめた」
うん。意味不明。
「えーっと、何を聞けばいいのかわからんないけど、なんでそう思うわけ?」
「……彩音、私がお風呂入ってるとき脱衣所に来てた」
「え…まぁ…いった、けど……」
でも、それはゆめの歯ブラシを新しいのにしておこうと思って出してだけで……。
(って言っても、多分ゆめは信じないだろうな。なんか決めつけてるし)
「……やっぱり、彩音が犯人」
「違うっつの! っていうか、そうだとしてなんであたしのパジャマを脱がす」
「……彩音が私のパンツ盗んだから」
「盗んでないって。っていうか、だからなんで脱がしたの」
「……彩音が履いてるかもしれないから」
「…………ごめん、ちゃんと説明して」
「……彩音は変態だから。そういうこともするかもしれない」
「変態じゃないって……」
パンっと軽くゆめの頭を小突く。
「……いたい」
「無実の罪を着せられたあたしのほうが百倍くらい痛いと思うけど……まぁ、別にそれはいいけど、盗んだとかじゃなくて、単純に……」
着替えを持ってくのを忘れたんじゃないの? って言おうとしたあたしはあることに気づいて視線を下げる。
(あれ? パンツなかったっていうことは………つまり………)
パン!
「った! 何すんの!」
何もしてない、ただゆめのある部分を見てただけなのにゆめはいきなりあたしのことをたたいてきた。それもさっきあたしがしたような小突くじゃなく、かなり思いっきり。
「……今、私がパンツはいてないかパジャマ脱がせて確かめようとしてた」
「してないよ。あんたじゃないんだから。まぁ、思ってたけど」
「……やっぱり、変態」
「あっ、い、今のはそういう意味じゃなくて。穿いてないのかなって思っただけ」
「……どっちにしろ、変態」
「うっ……」
まぁ、じろじろ見た挙句に思うことではないよね。
それでも九割以上はゆめが悪いはずなのにあたしは、どことなく気まずい感じがして、視線をゆめから外した。
(あ………)
そこであるものが視界にはいる。
「……ゆめちゃん、これはなにかな〜?」
あたしはベッドを下りるとまっすぐ洋服タンスの前に行ってあるものを手に取る。ちょうど、ゆめのパジャマの柄と一緒のストライプの布きれを。
今度はゆめのほうがしまったといった風に顔をそらす。
あたしが手にしてるのはもちろん、ゆめのパンツ。
それが、ゆめの着替えも一緒にしまってあるあたしのタンスの前に落ちていた。で、脱衣所でパンツがなかったというゆめ。
事態は明白だし、ゆめもそれに気づいてるだろうけど、それを認めようとしないゆめはちょっとバツのわるそうな顔で
「……………やっぱり、彩音が盗んでた」
あくまでそう主張した。
でも、自分の間違いに気づいているゆめは表情をちょっとずつ羞恥に変えていき、頬を桃色に染め
「……………変態」
うつむきながらいじけたようにあくまで抵抗するゆめはやっぱり最高に可愛かった。
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……この二人はバカなんじゃないでしょうかw いえ、ゆめは彩音が犯人だと確信していたので……いえ、なんかすみませんでしたw
ノベル/Trinity top