もし、ゆかりんとみぽりんが付き合ってたら、という妄想を形にしてみました。

 

 

「西住殿の部屋……二人きりなのは初めてですね。緊張してしまいますよー」

 みほと一緒に部屋に戻ってきた優花里は言葉とは裏腹に嬉々として部屋の中に入っていく。恋人でもあり、憧れでもあるみほの部屋。気が高ぶりやすい優花里がはしゃいでしまうのも無理はない。

「う、うん」

 対照的にみほの表情は固い。

 それは付き合いだしてから初めて優花里が部屋に来てくれたからとかそんなことじゃなくて、もっと別の、みほにとってはとても大切な理由があった。

「西住殿?」

 優花里もそのみほの変化には素早く気づき、不思議そうにみほを見つめる。

 みほはそんな優花里の視線を受けながら、ベッドに腰を下ろすと

「隣、座って」

 そうやって優花里を促した。

「りょ、了解であります」

 みほが何か大切なことを話そうとしているのがわかり優花里もあわててみほの隣へ座った。

「あの……あのね」

 すぐ隣にぬくもりが感じられるほどの距離に優花里が座るとみほは緊張した面持ちで口を開いた。

「……………」

 だが、その続きはなかなか出てこない。

「にし……あ」

 心配そうにみほを呼ぼうとした優花里のベッドに置かれた手をみほはすがるように取った。

「ほ、本当はね。こういう風になる前に聞かなきゃいけないことだったのかもしれないけど、こ、怖くて聞けなかったことがあるの」

 それは最初、照れるだけのものだった。しかし、いつもそばにいて助けてくれる優花里を好きになっていくうちに、怖くなっていったもの。

「なんで、ありますか?」

 自分の手に添えられたみほの手に汗がにじんでいるのを感じて優花里は真剣にみほを見つめ、続きを待った。

「……優花里さんが、私を好きって言ってくれるのって……」

 ぎゅっと、みほは優花里を握る手に力を込める。

「や、やっぱり、私が【西住】だから、なの?」

「に、西住殿……」

 優花里は最初何を言われたのかわからなかった。だが

「優花里さんが、話しかけてくれたのも……私が【西住】だからなんだよね」

 ここでやっとみほの言いたいことを理解した。

 戦車道の家元の娘であるみほ。

 戦車道を愛する優花里がみほに興味を持った要因がそのことであったのは疑いようもない。

「そっ……」

「私」

 そんなことありませんと、大きく否定しようとした優花里を制するようにみほは優花里が言葉を発した瞬間にそれを遮る。

「私は、優花里さんが好き。大好き。優しいところ、いつも気を使ってくれるところ、戦車道に一生懸命なところ、去年のあの試合のことを間違ってないって言ってくれたのもすごく嬉しかった。私は、そんな優花里さんの全部が大好き」

「に、西住殿ぉ」

 改めて告白されているような言葉の数々に優花里は思わず、瞳をうるませてしまうがみほの言いたいことがこれではないことはもう優花里にもわかっている。

「だから、私もっと優花里さんに好きって思ってもらいたい。必要だって思ってもらいたい」

 優花里が好きだから、好きであればあるほど

「でも……優花里さんは戦車道をしてる私が好き、なんだよね。戦車道をしてない私じゃ優花里さんに好きって思ってもらえないのかな?」

 このことが怖くてたまらなかった。必要とされているのは、戦車道をしている時だけの自分なんじゃないか。もし、学校がなくなって戦車道を続けられなくなってしまったら優花里は自分から離れて行ってしまうんじゃないかと。

「そんなことありません!」

 優花里はそんなみほを不安を吹き飛ばすかのように大きな声をだした。

「確かに、きっかけは西住殿が西住殿だったからかもしれません。それに、隊長として指揮をとる西住殿のことも本当に尊敬しています」

 優花里は逆にみほの手を取り、胸の前に持ってくると両手で包む。

「でも、違います! 戦車道をする西住殿を好きな気持ちと、こうして西住殿に触れたいと思う気持ち。それは全然別の気持ちなんです」

「…………っ」

 欲しいと思っていた言葉をそのままくれる優花里にみほは瞳の奥が熱くなるのを感じた。

「私だって、西住殿の全部が好きです。戦車道をしているところも、いつもみなさんのことを考えてくれるところも、笑顔がすごく素敵なところも、全部が好きです。毎日一緒にいたいって思います。戦車道をしてる時だけじゃない、朝もお昼も、放課後も、夜も西住殿と一緒にいたい、こうして一緒にいられるとすごく嬉しいです。だから、戦車道をしてない西住殿が好きじゃないなんてそんなこと絶対ありません」

「優花里さん……」

 熱く、戦車のことを語るときのような優花里の素直でまっすぐな気持ちが伝わってくる。優花里が本当に自分のことを好きだって思ってくれる気持ちが。

「っ…っく、う…」

 きっとこう言ってくれるとは思っていた。しかし、実際に言われるとそれは想像していたよりも圧倒的に嬉しくて我慢しようと思っていた涙があふれ出た。

「に、西住殿!?」

 まさか泣いてしまうとは思っていなかった優花里はあたふたと慌て

「…………みほ」

「え?」

「みほって、呼んで」

 みほのその要望にぽかんとしてしまう。

「優花里さんには、西住じゃない私も見てほしいから。……だから、みほって呼んでほしいな」

 それが好きという証に思えるから。みほと呼ばれるだけで好きだと言われているように思えるから。

「…………み、みほ殿」

 照れながらも噛みしめるようにその名を呼ぶ優花里。

「うん、優花里さん」

 みほも頬を染めながら優花里を呼ぶ。

 そして、二人は見つめあい、

「みほ、どの」

「優花里さん」

 二人の距離を縮め、

「みほ殿」

「優花里さん」

 お互いの名を呼ぶ唇が近づく。

 そして、

「み……」

『ん………』

 その距離がゼロになった。

 

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 おしまいです。

 うーん。ゆかりんはそれなりにらしさが出せたかと思いますけど、みぽりんがなんだかあんまりみぽりんらしくなかったかな。でも、西住じゃない私を〜というのが書けたのでとりあえず満足です。もうちょっとうまく書きたかったなーとは思いますが……

 ガルパンなら後は、定番は沙織ちゃんと麻子さんかと思いますが私はみぽりんが好きなのでみぽりん→沙織ちゃんとかもいいかなーと。あと、麻子さん×みぽりんとかもいいかも。

 と、百合的なことばっかりを書きましたが、内容も(特殊ではありますが)真面目で楽しめるものだと思いますので興味がありましたらご視聴ください。

 では。

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