「んじゃー、電気消すよー」

 あたしは、壁の電気のスイッチに手をかけながら、布団に入ってる二人にそう告げる。

「どうぞー」

「……いつでも、いい」

「うぃーす」

 パチっ。

 軽快な音を立てて部屋の中が一気に暗くなる。

「んじゃ、ねよっか」

 とあたしも三つ並べてある布団の一つのもぐろうとしたけど、

「……彩音、電気、つけて」

 ゆめが注文をつけてきた。

「んー、なに?」

 とりあえずいわれるままに電気をつける。

「どうかしたのゆめ?」

 と、これは美咲。布団にもぐりながら半身になってゆめのことを見つめている。

「……暗いと、寝れない」

「は? いや、暗くないと寝れないでしょ」

 フルフル。

「……電気、ちっちゃいのついてないと、だめ」

「ちっちゃいのって豆電球?」

 コク。

「はぁ? なんでまた」

「……暗いと……怖い」

『…………』

 あたしと、美咲は呆然と沈黙。

「……ゆめ、子供みたいよ」

「そうはいってもさぁ」

 あたしは何度かパチパチと電気をつけたり消したりする。

「ここでしか電気操作できないから、付けてるか、完全に消えるかしかないんだけど? つか、寝るときにはどうせ目を瞑ってるんだから関係ないじゃん」

「……それでも、やだ」

「はぁ……」

 あたしたちは二人して困り顔。だって、どうしようもないじゃん。いくらなんでも電気つけたままは寝れないし、かといって豆電球にする手段もないんだし。

「悪いけど、我慢しなって。ゆめ。ほら、目瞑ってりゃ関係ないし」

「まぁ、そうね。どうしようもないんだし」

「…………ぅー」

 パチ。

 あたしは容赦なく電気を消すと、今度こそ布団にもぐりこんだ。

「ふぁーあ」

 大きくあくびをして目を閉じる。今日は疲れたし、明日早く起きなきゃって目的もあるせいか眠気はすぐにやってきてうつらうつらとなる。

 うー、ねむねむ。

「……彩音、美咲」

「んー?」

「なに?」

 もう少しで眠りに入ると思えたところでゆめがなにやら名前を呼んできた。

「……こっち、寄って」

「別にそこからでも聞こえるわよ?」

「……いいから」

「はいはい」

 眠気の宿ったままもぞもぞとゆめのほうによっていく。

 すると……

『ゆめ?』

 あたしと美咲は同時に、不思議な声を上げる。

 理由は、

「……こうしてれば、あんまり、怖く、ない」

 ゆめが手を繋いできたから。

 小さなゆめの手。緊張で血が通ってないのかちょっとヒンヤリ。

「これじゃ、布団の間に落ちちゃうわね」

 美咲が呟いてまたもぞもぞと布団の中を動いた。どうやら、ゆめの布団に入っていったみたい。

「彩音も来たら? 寝てる間に床に落ちるとやなゆめ見るわよ?」

「んー、でもさすがに三人だと窮屈じゃない?」

「……来て、彩音」

 なんかシチュエーションとゆめの言葉と声が微妙にエロっぽい。表情がみれないのが残念。

「ま、お望みとあらば」

 電気消したせいで寝れなかったとかいちゃもん付けられてもやだし。

 あたしは、いわれた通りにゆめの布団に入っていくけどやっぱ三人はきつい。もろにゆめのぬくもりが伝わってくる。

 この距離なら手を繋ぐまでもないような気もするけど、まぁ、ゆめがしたいんならいいや。

「なんか、家族みたいね。川の字で」

「あはは、そだねー。当然、真ん中のゆめはおこちゃまですな。ちっちゃいし」

「……こどもじゃ、ない」

「手を繋がないと寝れないくせに。なぁにいってんだか」

 暗くてゆめのことはみれないけど、今どんな顔してるか判る気がする。いじけて、まさしくおこちゃまな感じになってるとおもう。

「彩音、あんまりからかうとやめなさいよ」

 一見、美咲がゆめをかばう様子をみせる。けど、

「まだ、子供なんだから」

「………………」

「どっちが……。ゆめちゃーん? 夜中怖くておトイレいけなかったらいつでもママが一緒にいってあげますからねー?」

 あたしはゆめのことを自分のほうに引き寄せて、あたまをぐりぐり。

「あら、ママは私よね? ゆめ、怖かったいつでも私のこと頼っていいのよ? 彩音なんて一緒にいってあげるとか言っておいて、外から電気消すタイプだから」

 美咲が負けじとあたしからゆめのことを取り上げて、ゆめをひとりじめしようとする。

「んなことするかっての。だーめ、ゆめはあたしの」

 グイ。

「小学校のころ、私にしたわよ。そんな人にゆめは任せられません」

 グイグイ。

「美咲なんて、昔あたしに…………あたしに……」

 やば。なんか特に悪いことが思いつかない……

「と、とにかくゆめはあたしが育てます」

「彩音みたいなのには、預けられない。ゆめは私が引き取ります!

 ゆめがあっちにいったりこっちにいったり。特に抵抗はしてこない。

「……痛い」

 ポツリとそうもらすだけ。

「あ……ごめ」

「ちょっと、悪ノリがすぎたわね」

 ゆめの一言だけであたしたちはぱったりと悪ふざけをやめる。

「ごめん、ごめん」

 そして、美咲と二人で乱れたゆめの衣服を整えていく。ゆめと手を繋いでるのはそのままだから片手だけどお互いがお互いをフォローし合ってあっという間に直せた。

「じゃあ、ゆめはあたしたちが仲良く育てていくってことで」

「そうね。私たち二人の子ってことで」

「………………こどもじゃ、ない」

「はいはい」

「わかったわよ。ゆめ」

 美咲がさらにゆめに体を寄せて、空いているほうの手をゆめの、あたし側の肩に置いてきた。

「ま、とにかくねよっか」

 あたしも同じように空いた手を美咲側のゆめの肩に置いて、二人で包み込むようにゆめを抱く形になった。

「…………おやすみ」

 あたしたちはゆめの嬉しそうな声を聞きながら、口々におやすみと返して目を閉じた。

 窮屈っていえば、窮屈だけど、たまにはこんなのもいい、かな?

 

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 本当は4話のおまけに書いていたのですが、別に4話のおまけにしなくてもいいので1話のおまけに追加です。設定よく考えてないけど、多分1話でいっていた卒業旅行の夜かと。でも、普通中学生の卒業旅行だなんて旅行なんいっても、泊りがけじゃなくて日帰りでどっかいくくらいがせいぜいですよね。ディズニーランドにいくとか。

 にしても、ゆめはww どんどん都合のいい属性? がつけられていきますねw 小学生ですかこの子は

 ここの「こども」っていうのは冗談ですけど、なんとなく二人にとっては子どもっていうわけじゃなくても彩音も美咲も似たようにはおもっているんじゃないのかも。もちろん、一番は親友と思っていますけど。

 でも、ゆめはこどもっていわれるのはともかく二人と一緒の布団で寝れて、しかも抱きしてもらえるのは嬉しいなんてものじゃないのかなと。ゆめがどんな風に二人のこと好きなのかはともかく二人に甘えたいっていう気持ちは結構あるんじゃないかなーと。あ、これはおまけなのでいざ本編でリンクしてなくても文句いわないようにw。

 

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