「ふ、ぅ……」

 先輩の家から帰ってきた私は自分の部屋に帰るなり大きく息を吐いた。

「先輩……」

 そのままベッドに上がると壁に寄りかかって先輩のことを思う。

 普通なら食べたり食べられたりっていうことを思い出すんだろうけど、今日は別のこと。

 今日、先輩は何度か無意味に顔を背けたり、部屋から出ることが多かった。ううん、依然と比べてじゃない。思うと保健室で話すときとかもお手洗いとか言っていなくなることは結構あった。

 私がそう思うから、そう見えるだけかもしれないけど……そういう目で見ちゃってるだけなのかもしれないけど……

 

「なら、麻理子の力になってあげて」

 

 耳に響くのは以前彩葉さんに言われた言葉。

 脳裏に浮かぶのはその次ぐ日に見た血まみれのハンカチ。

「…………先輩」

 私は見る見るうちに表情を暗くさせていった。悲しくて、悔しくて、喉がきゅうっと切なくなって、目頭が熱くなっていく。

(……本当は、嘘、なんですよね)

 あの時保健室じゃなんともないってってたけど、嘘、ですよね。

 どんな風に体が悪いのかはわかりませんけど、きっと最初のテストのお礼のときに言ってたのが本当なんですよね。保健室にいる理由。

 そんなのは想像だけど、でも、そう考えると保健室にいる理由は説明がつかないわけじゃない。少なくても私が最初勘違いした孤立してるとか、居場所がないとかよりも……何か身体に問題があるっていうほうがはるかに説得力がある。

「私じゃ……力になれませんか?」

 私は話してもらえないほど頼りないですか? そりゃ、もし病気とかだったら確かに何もできないですよ? けど、それでも私は先輩の力になりたいんです。何もできなくても、話してもらえるだけでもいいんです。先輩が抱えていることがあるなら私だって一緒に悩んで、苦しみを分かち合いたい。

(……こんなの、私のわがままなの、かな?)

 ふと、そんなことが頭をよぎった。

 先輩が話してくれないのは話してくれない理由があるんだと思うし、話してもらいたい、苦しみを分かち合いたいなんて自己満足なのかな?

 だって、話してくれても私は何もできない。病気だとしたらそんなのを治すことなんてできないし、直接的には何の力にもなれないことはわかりきってもん。

 支えてあげたいなんていうのは私の都合なだけ、なの……? だから、先輩も私に嘘をついてるのかな……?

「なら……」

 それに応えるのことが……知らないふり、気づかないふりをするのが先輩の気持ちに応えること、なの……?

「……先輩……」

 胸に二つの気持ちが渦巻いて、気持ちが定まらない。

 どうすればいいんだろうっていう気持ちだけが私の中でどんどんと膨らんでいくばかり。

「私は……」

その言葉に続きがない私はただ迷うことしかできなかった。

 

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