曲が終わって、私たちはまたお互いのことを感じあう。
体を預け合って、頭をこつんと当てて、目を閉じた私は穂乃果のことを思う。
(あったかい)
穂乃果と触れているところが優しい熱を持っている。ぽかぽかとして陽気に当てられているようなそんな心地よさ。
「ねぇ、真姫ちゃん」
そんな中穂乃果が急に顔を覗き込んできた。
「何よ」
「真姫ちゃんていつから私のこと好きだったの?」
「っ!? い、いきなり何言ってんのよ」
「なんか気になっちゃって。ね、いつから? いつから私のこと好きだったの?」
穂乃果はまるで餌をねだる子犬のような愛らしい顔で私を見つめてくる。
「いつからって……」
そんなの自分でも考えたことなかったけど………
「……ファーストライブを見た時、かしら」
ふとそれが頭に浮かんだ。
ほとんど人のいない講堂。
閑散としたその場所はとてもライブなんかできる場所じゃないように思えた。普通ならそこで立ちすくみ、逃げ出したくなるその場所で穂乃果たちは懸命に歌い、踊っていた。そこには技術じゃなくて胸を打つ何かが確かにあった。
そして、エリーにこれからどうするのと言われた時。
力強く続けると宣言した穂乃果はこれまで私が見た誰よりも輝いていて、その私にはない強さに憧れた。
「……そう、ね。あの時から私は穂乃果に恋をしていたんだと思う。あの時、あの場所で前に進もうとした穂乃果に心を奪われてた」
「真姫ちゃん……」
(あ、可愛い……)
穂乃果の潤んだ瞳、抑えきれない笑顔。
「って、な、何言わせるのよ!?」
穂乃果を可愛いと思った数瞬後、何を言ったのか思い出して真っ赤になった。
「ほ、穂乃果こそどうなのよ」
「私?」
「わ、私は言ったんだから、今度は穂乃果の番よ」
なんてつい言ってしまったけど、この質問は答えるのも恥ずかしいけど……
「私は……初めから、かな?」
「え?」
「初めてここで真姫ちゃんの歌を聞いた時、まるでお話の中から天使とか妖精とかが迷い込んできちゃったのかなって思うくらい素敵な声だって思ったの。きっと、その時から私は真姫ちゃんの虜になっちゃってたんだ」
答えるのも恥ずかしかったけど……聞くのは、もっと……
「あ、真姫ちゃん顔真っ赤。可愛い」
「っ、う、うるさいわよ。っ!?」
手、手が……添えられ、ううん、繋がれて……
「真姫ちゃん」
「な、なな、なによ」
「大好き」
「っ――!!」
あぁ……もう……穂乃果は……穂乃果は……
(……かなわないわね)
これからずっとこんなことを思っていくんだろうと思いながら私は
「私も、大好きよ」
穂乃果の笑顔に負けないくらい眩しい笑顔で答えるのだった。