あたしはどうも不本意なことに美咲やゆめ、ついでに言うと最近じゃほとんど会わなくなっちゃった澪にまで変態と思われてるらしい。

 まったくもって事実無根な上に、どうやらゆめから伝わる話は誇張されてて、特に美咲にはあたしがとんでもない女の子に思えてるみたい。

 そのせいかこの前なんてこんなことがあった。

 

 

「彩音はどういう格好が好きなの?」

 学校から帰ってきていつものように二人でいちゃいちゃと過ごす、放課後の時間。

 ベッドで寝そべりながらだらだらと雑誌を眺めていたあたしに美咲はそんなことを言ってきた。

「はい?」

 意味がわからずそういったあたしは雑誌から顔をあげて美咲の姿を確認する。

「だから、彩音はどんな格好してもらうのが好きなのかって聞いてるのよ」

 美咲は帰ってきたのに着替えもせず制服姿のまま、もう一度同じ質問をしてきた。

「え、いや、意味がわかんないんだけど?」

「彩音って、エッチな格好してもらうのが好きなんでしょ」

「ぶっ!!? ちょ、な、何言って」

「この前、ゆめに言ったんでしょ? 体育着とか、メイド服とか着てって。ほんと、変態よね」

「ちょ、な……」

 そ、そういえばいつだったかゆめにそんなような話をしたことあったような……

 つか、ゆめは美咲にそんなこと話すんかい。

 たまに思うけど、ゆめと美咲って二人きりだとどんなこと話してんだろ。いや、どんなっていうか、普通話すことじゃないでしょうが。

 なんで美咲にそんなこと話すんだか。ゆめだって恥ずかしいだろうに。

「で、どんなのがいいの?」

「わっ、ちょ……」

 いつのまにか美咲がベッドに上がって来ててあたしにせまって来ていた。

「だ、だから、あれは冗談みたいなもので」

 あたしは反射的に体を起こす。

「ふーん。そうなの? 今日は特別に彩音の好きな格好してあげようと思ったのに」

「え、まじで!?

 嘘、美咲がそんなこというなんて。美咲なら、ん〜、そうだなぁ

(じゃなくて)

 これは、また美咲がなんかたくらんでるね。美咲がこんなこと言ってくる時は決まってそうだ。

 あたしの甘い顔してるようで、自分の望を果たそうとする美咲。

 それで結構美咲にいいようにやられてたけど、そう何度も思い通りにはさせないって。

「じゃあ、ブラウス一枚とか? もちろん、したもなしでね」

「っ!!

 これでどうよ。体育着とか、メイド服とか(ってそんなのそもそもないけど)ならともかく、これはさすがに無理でしょ。

 美咲が何も言ってこないのに安心してあたしは、もう一回雑誌に目を戻すと。

 パサ

 っと、布が落ちるような音がした。

 まさかって思って顔を上げると

「み、美咲!?

 パサ

 もう一回、布が、制服が落ちる音。

「これでいいの?」

「あ、っと……」

 ブラウス。普通それだけを着ているところをさらすことはない。

 制服と違って体のラインが出ていて、特に胸なんかには目が言っちゃう。しかも、あたしが言ったとおり美咲はスカートも脱いでいて、普段は隠れたふとももが眩しい。

 っていうか、この下って……もちろん、パンツなわけで……

「んく……」

 前はふとももを隠してるはいるけど、それはほんとにふとももすら隠し切れない程度で横なんてほとんど腰まで露出しちゃってる。

 しかもその腰周りはブラウスの端になっているところもあわさって、普通に裸の状態を見るよりもずっと魅力的っていうか、はっきり感想をいうとやらしく見えちゃって、目が離せない。

「ふふふ」

 美咲は年に不相応な、でも実に美咲には似合ってる妖艶な笑みを浮かべて、両手で後ろ髪をかきあげた。

 そして、そのままベッドに上がってくるとギシって、ベッドがきしんであたしは目の前に迫ってきた美咲に釘付けになる。

「どう?」

 あたしの横に手をついて、そのままあたしのほうへと身を乗り出してくる美咲。

「ど、どうって……」

 わざとなのか美咲はあたしの顔の目の前にその……胸を持ってくる。

 さっきは気づかなかったけど、ブラウスはボタンが第二ボタンまで外されてて、た、谷間が見えてたりもして……ブラウスと対照的な肌の色が目に焼き付いちゃう。

「魅力的かって聞いてるの」

「そ、そりゃ、その……」

「はっきりしなさいよ」

「へ?」

 美咲がベッドに置いたあたしの手に自分の手を重ねて、さらにぐっと身を寄せてきた。

 ほんとに目の前まで迫られたあたしはさすがに恥ずかしすぎて、思わず目をそらす。

(っ!!

 でも、そのそらした先に美咲の脚があってまた余計にドキっとさせられた。

 美咲の脚。いくら普段からラブラブとはいえ、こんなところまでまじまじと見るのはそうそうない。

 ベッドの上に膝をついて、さっきも注目しちゃった薄いブラウスに隠れたふとももに、いつのまにか露になっていた生脚。ゆめの場合はほんとに可愛いって思うだけだけど、美咲の場合はそれだけでも芸術品のようで、あたしを惹きつける。

 まぁ、つまりこれも、たまらない。

「どうなの? 可愛い?」

 そりゃ、可愛いし

「綺麗?」

 綺麗だし、

「魅力的?」

 魅力的だし、

「……そそられる?」

 そそられるし、

「触ってみたい?」

 触って……

 って違う!

「ちょ、み、美咲なに企んでんのよ!?

 美咲の言葉にかどわかされてなんだか流されそうになっちゃったけど、美咲は意味もなくこんなことする相手じゃないんだから、きっとこれだってなんか意図があるはず。

 このまま流されちゃったりなんかしたら何させられるかわかったもんじゃない。

「……何にも。そんなのあるわけないじゃない」

「う、嘘ついたってだめだかんね。あんたが何かしようとしてるのくらいわかってるし」

 実際は何にもわかってないけど、こうでも言っておかないとまるであたしが美咲のこと嫌がってるみたいだし。

 美咲が何か企んでるのは間違いないだろうし、それにのるのは癪だけど、嫌だって思われるのはもっと癪だもん。

「ふーん、彩音は私が軽い気持ちでしてるように見えるわけね」

 美咲はちょっとだけ悲しそうに言って、あたしから少しだけ距離をとると

「じゃ……」

 今度はあたしの手をとって、それをそのまま

「ちょ」

「これでも、私が適当な気持ちでしてるって思うの?」

 自分の胸に持っていった。

 フニって、なれた弾力を感じさせるそこは胸の上からでもわかるほどドクンドクンって不確かな鼓動を伝えてきてて、美咲がドキドキしてるんだっていうのを感じさせる。

(あ、あれ? なんで、こんなに……)

 だ、だって美咲はあたしをからかうためにこんなことしてるわけで、いくら美咲でも演技で心臓の動きまでは操れないだろうし……つ、つまり本気で恥ずかしがってるってこと、なのかな。

「じゃ、じゃあ……なんで、こんなこと、すんのよ」

「いつもなら自分で考えろっていうところだけど、少し教えてあげるわ」

「す、少し?」

 って、どういう意味だ? いや、全部じゃないってことなんだろう、けど……?

「っ……ぁん!

 美咲の気持ちを把握しきれないまま、いつのまにか美咲はあたしのことをベッドに押し倒してきた。

「私だって、ものすごく恥ずかしいのよ? でもね」

 あたしに覆いかぶさっていた美咲は、顔にかかっていた髪を軽くかきあげると、少しずつその距離を縮めていく。

(って、ち、近いっての!

 胸元の開いたブラウス、さっきベッドから離れてるときとか、迫られているときも魅惑的でたまらなかったけど。今、こうして下を向いた状態になると、ブラウスの端が垂れ下がっている。あたしの位置からじゃ、正面になっちゃってて丁度下着を隠してるけど、さっき以上にふとももは露出してるし、もうそけい近くまで見えちゃってて……

「私は彩音のためならこんな恥ずかしいことだってしてあげるのよ。私なら、ね」

「い、いや、だから、なんでしてるのかってことなんだけど……」

「だから、彩音はこういうのが好きなんでしょ? 好きな人が喜んでくれることをするのはおかしくないって思うけど? 彩音は嬉しくないの?」

 いや、そんなはっきり正面からそんなこといわれたら……

「そりゃ、まぁ……嬉しい、けど」

「ふふ、そう。私も嬉しいわ」

 ムニ。

「わっ、ちょ、美咲」

 美咲は自分の体を支えていた手をあたしの指に絡めてきて、胸と胸が合わさる。

 美咲のドキドキが伝わってくるのはもちろん、あたしのドキドキも美咲に伝わっちゃいそうでそれがいっそうあたしをドキドキさせた。

「ふふふ、彩音」

 思ったとおりなのか、美咲は嬉しそうに笑って。

「大好き」

 と幸せそうに言ってくるのだった。

(っ〜〜)

 あたしは、そんな美咲にちょっとあきれて、でも……

「……こっちだって、大好きだよ」

 あんまり素直にいえないことを言うのだった

 

 

――――――――――――――――――――――――――――― 

 美咲に深い意図があるのかないのか。

 とりあえず一つだけいえるのは、すごいバカップルってことですねw

 こういうところで終わるのは仕様です。

 

ノベル/Trinity top