「………………」
私はベッドの上に腰掛けて、ベッドに眠る相手を見つめる。
「……ったく、幸せそうに寝てるわね」
彩音のまぶたにかかる髪を軽く払いながら、私はあえて無感情につぶやく。
「どんな夢を見てるんだか」
夜、月明かりだけが照らす部屋で彩音の寝姿を見つめる。
それは昔、まだ中学生だったころ、今の関係になる前には彩音と一緒に寝るときにはよくしたことだった。
何も考えていないように眠る幸せそうな愛しい人の姿。
ムニ
私はそんな彩音のほっぺたを引っ張った。
「…………バーカ」
これも昔にはよく言っていた言葉。
ただ、その時には不満があったのに対し、今は…………
今は……純粋にバカと言ってる。
だって、彩音はバカだから。呆れるくらい、本当にバカだから。
「ふぅ……」
今度は自分にため息。
こんなバカな彩音をどこまでも好きな自分にはちょっとだけ呆れる。
そして、
今度は優しくほっぺを撫でた私は
「…………」
彩音に覆いかぶさるようにして……
「……寝よ」
と、ひとりごちるとベッドから降りて隣にある布団に横になるのだった。