「さぁて、こんなもんかな」
冷蔵庫からケーキを取り出しにきていたあたしは、美咲に言われたとおり紅茶の用意も終えてそう口にした。
「つか、ケーキはあたしが買ってきたんだし、美咲が用意しろっての」
愚痴りながらケーキと紅茶の入ったカップ、ついでに市販のクッキーを御盆にのせる。
「大体、紅茶がつきものとか言ったけど、別にいつもはそんなことないじゃん。まったく」
三人分ともなると結構重くて慎重に二階へと運んでいくけど、その間も愚痴はやむことない。本気で言ってるわけじゃないけど、冷静になると文句の一つも言いたくはなる。
(……まぁ、いっか。なんかゆめがぼけっとしてたし、ケーキでも食べながらその理由でもきこっと)
階段を上ってそろそろ部屋が近くなってくると、今まで声に出してた愚痴を心の中に収める。
また美咲になんか言われちゃいそうだし。
「おまたせー」
手が使えないあたしは体をうまく使って、ドアを開けると
「ぅわっ!!?」
その光景にびっくりする。
「へ……?」
どうにかお盆を落とすことはしなかった。ちょっとだけ紅茶をこぼしたけど、そんなのが気にならないほど目の前に広がっていた衝撃は大きかった。
だって、
「え、ちょ、ちょ、っと……な、なな、なにゆめのこと脱がせてんの!?」
ベッドの上で美咲がゆめのことを脱がせていたから。
裾を掴んで、めくりあげ胸も露出して今まさに脱ぐところ。あたしが来たことで止まってはいるけど明らかに脱がせるところだ。
「あ」
二人に近づく過程で、テーブルのお盆を置いたところで固まってた二人が動いて、ゆめの服を完全に脱がす。
汗ばんだ肌に、しっとりとブラが張り付くゆめの上半身が露出される。
「ちょ、ちょっと、だから何してんの」
「……………」
よくわからないあせりのようなものに急かされ、ベッドの前まできたあたしは二人が同じ顔をしてあたしをみているのに気づいて疑問を覚えるものの、それよりも自分の突発的な感情を吐き出した。
「あたしがちょっといなくなったくらいでいきなりそんな……あっ! いつも紅茶とか言わないのに言ったのって、そういうこと!?」
そういえば、美咲が一緒に住むようになってからゆめと美咲が二人きりなんてなかったし。だからって、いきなり……
「………………」
あたしが突然のことにパニックになって変なことを口走り続けると、二人はなぜかあきれるような顔になっていって
『はぁ』
二人に思いっきりため息をつかれ
「やっぱり彩音って………」
「………バカ」
謎の罵倒を受けてしまった。
そして、数分後風邪を引いて汗をかいているゆめを着替えさせるところだったというのを聞いて赤面するのは言うまでもない。