理々子が今回悩んでいたことの一つ、美織に対しての責任というものがありましたがこれは結構私の実感が入ったものです。

 よほど例外的なことがなければ人は働かなくては生きてはいけない。そして、働くというのは基本的に楽しいことではない。投げ出したくもなるし、心を病んだりする場合もある。仮に、仮に、ですが、美織がこのまま理々子の部屋いるまま大学に進んで、就職もして、でも、理々子と決定的な別れをしてしまったらどうなるでしょうか。

 それまでは理々子のためと生きてきたのにそれができなくなる。その後は実家に戻ることもあるかもしれないし、働いているのだから美織が目標といっていた自立した生活もできるかもしれない。

 けれど、もう一つ何か壁にぶつかったときふと、何故自分がここにいるのかと考えてしまうかもしれない。今までの自分がなんだったのかわからず、生きていることすらつらく感じるときがくるかもしれない。

 もっとも、それは恋によるものに限らず何でもそうなのかもしれませんが。

 私としては、そんな時自分を支えるのは、自分で道を選んできたかということにかかっていると思います。

 理々子のもう一つの悩みでわかるとおり、理々子は美織と出会う前の自分を好きではないし、生きていること事態にあまり楽しみを得ていないのでしょう。でも、理々子は自分で選んできた道だからと、自分を納得させて生きているし、だから生きていけていると少なくても自分では思っている。思い込もうとしているのかもしれませんが。

 それはともかく、今まで費やした時間、悩み、喜びや、苦しみ。人はその上に立って生きている。前述のような別れをしたら、そんな足場がなくなってしまう。それを、恋のせいになんかしてたら、最後に頼るものすらなくして、自分を保てなくなると思うんですよね。いえ、理々子はそう思っているんでしょう。

 人生にやり直しはない。だから、自分で考え自分で選んで欲しい。間違っても、後悔してもその選択を自分で選ばなきゃいけない。このまま歩いて行ったら、この先に待つ人生の大きな分岐点を理々子のために選んでしまう。そんなことをさせられない。

 今はそう考えていると思います。

 それは理々子の心に確かに存在するものではありますが、それが完全なる本心かは別の話ですね。

 まぁ、それもさておきながら理々子のもう一つの悩み、理々子自身は病気のようなものと考えているかもしれませんが、それがあったからとはいえ、美織を抱きしめてしまうのは……w と、そんな風にかいてはいますがこれはこれでありえることではあると思います。まったく別次元の悩みなんですよね。美織に対する責任と、自分の悩み。本当に落とし穴のようなもので、何でもないことをきっかけに心に沈めていた悩みがじわじわと胸に広がっていく。そうすると、まともにはいられなくなっちゃうんですよ。何も見えない闇の中をさまよっているような感覚。そんな錯覚の中で、思わず美織という光に飛びついてしまった。たぶん、そんな感じだったと思います。

 その結果は、今回のラストの通りですね。

 簡単な構図を言えば、美織は前に進むことを決意し、理々子は後ろに下がることを決意したということです。……若干ネタバレでしょうかw

 

 しかし、理々子は恋愛において大切なことを無視して自分のすることを決めている気もしますね。さて、どうなりますことやら。

 ではまた。

   

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