一日の終わりと言えば、私にとっては幸せな時間。

 恋人のせつなさんと他愛のない話をしながら、二人のぬくもりに満たされたベッドで横になる。

 いつの間にか冬が明けたのに一緒のベッドで眠ることはやめていなくて、今日もいつも通り互いの熱と香を感じ合いながら幸せな眠りへと落ちていく。

 はず、だったのだけど。

「……………」

 今日の私はベッドにも入らずに悩んでいた。

 それは重大なことというわけではないし、正直言えば放っておいても私たちの関係には意味をもたらさないものではある。

 ではなぜ気にしているのかというと、それは昼間の影響。

 私の数少ない友人である陽菜と合ったときのこと。

 陽菜には定期的にあっていて、せつなさんとのことを話すこともいいのだけど、ふと日菜が聞いてきた。

 せつなさんといつもどんなデートをしているのかと。

 私の回答は特別なものじゃなくて、せつなさんと普段していることを話しただけ。

 その中で陽菜の引っかかったことがあったらしくて、言われてしまったのだ。

 なぎちゃんからデートに誘ったりしないの?

 と。

 言われてから私は初めてはっとなった。

 その通りだったから。

 せつなさんとのデートは、さすがに全部とは言わないはずだけど、そのほとんどがせつなさんからの誘いで私はそれについていくだけ。

 きっかけもデートコースもせつなさんにまかせっきり。

 その事実はショックと言えばショックではあった。

 ただ、私としてはそれに不満があったわけじゃないしせつなさんも気にしていない(はず)

 気にしたのは陽菜の方。

 私がせつなさんにまかせっきりという現状に対しせつなさんに甘えすぎだと憤り、それでもピンと来ていない陽菜に、今度私からせつなさんをデートに誘えと命じられてしまったのだ。

 陽菜の前ではそのくらいなんともないはずだと、了承したのだけど。

(……デートってどうすればいいのかしら)

「そろそろ寝るけど、渚はどうする?」

(確かに陽菜の言う通りいつもせつなさんに誘われていたから勝手がわからない)

「渚? 聞こえてる?」

(それに、せつなさんがもし私が誘ってないってことを気にしてるとしたら、私から誘うなんて何事かと思われるかもしれないし)

「渚―?」

(大体、いつもせつなさんにばっかり任せていた私がいきなりデートを考えろって言われても思いつかないわよ。誘った手前、楽しんでもらいたいけど……)

「渚ってば」

「っ!!?」

 悩む私だったけど、いきなり背後からせつなさんに抱きしめられてビクっと体を震わせる。

「な、なんですか。急に」

「呼んでも返事をしないからどうしたのかと思って」

「……っ」

 確かに言われてみると名前を呼ばれていた気はするけど

「だ、だからって抱くことはないじゃないですか」

「渚は私にこうされるのが嫌なの?」

「そういう意味ではありません」

「ふふ、よかった。いつもの渚ってことは、何か大変な悩みじゃないみたいね」

「っ……」

 そんなにわかりやすく悩んでいただろうか。いや、そうかもしれない。陽菜とあってきてからこうしてぼーっとしてしまうことは何度かあったから。

「それで、どうするの? もう寝る?」

「あ、と……はい」

 反射的にそう答えてしまい、訂正する間もなくせつなさんとベッドに入る。

「……………」

 こんな時でもせつなさんと一緒のベッドには幸せがあって、このまま寝入ってしまいたいという誘惑にも駆られる。

(別に、いいかもしれないわよね)

 何も今日デートに誘うとは言ってないのだし。

 ……まぁ陽菜には何か言われてしまうかもしれないけれど。

 そんな情けないことを考えていた私は。

「そうだ、渚。次の休みどこかいかない?」

「っ!」

 枕に顔を乗せながらこちらを向いて、今の私からしたらとんでもないと言える誘いをかけられてしまう。

「………………」

「渚? 都合悪い?」

 私のとるべき選択は二つで、安易な方を選んでもいいはず。せつなさんと約束したのならともかく陽菜との口約束に過ぎないし、仮にここで頷いてもまたの機会なんてあるのだから。

 それを頭では理解しながらも

「……あ、あの」

 少し距離を詰めて思わずせつなさんの袖をつかんでしまう。

「じ、実は……わ、私行きたいところがあるんです。だ、だから行先は私に任せてくれませんか」

 そして、つい口をついてしまったことに

(な、なに言ってるの私は……)

 激しく後悔をしてデートを考えなければいけなくなるのだった。  

 

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