これでおしまい、でしょうか。
……いえ、これが始まりになってほしいですよね。
せつなが涼香をあきらめたこと、それが嘘でなく本当の気持ちだったとしてもそのことに未練を持ってしまうのは当たり前です。
あの時ああしていたら、そんなことを繰り返して人は生きている。
せつなには誰かが必要だったと思います。もしかしたら、いつしかせつなの傷は癒えたのかもしれません。悲しいけど、時間が経てば経つほど、せつなの中で涼香が小さくなっていくのは当然のことなんでしょう。どんな気持ちも時間という波の中では揺れて、削られいつしかその波に飲み込まれていってしまう。
でも、飲まれた気持ちにある日ふと目がいってしまったとき、その時せつなはものすごい喪失感を味わう気がします。その時、もし独りであったら……最悪のことだってあるのかもしれません。
でも、きっとそんな時はこない。今のせつなには渚がいます。渚が渚である限り、せつなをそんなことにはさせないでしょう。
そして、渚。何が彼女をここまでさせたのか、正直言って私にもよくわかりませんでした。
でも、涼香以外でせつなを救うとしたら、渚しかいないのかなって思ってました。
陽菜がだめなわけではないし、梨奈や夏樹でも支えることはできたかもしれない。やりようによっては【親友】としての涼香にだってせつなのことを救えたかもしれないです。
でも、私が選んだのは渚でした。誰がふさわしいかとかそういうのじゃなくて、それ以外は考えられなかったんですよね。何も知らず、せつなを傷つけたことすらある渚。でもそんなことができる渚だから一番せつなの隣にいることが自然にできるような気がしました。そして、渚はそれをしてくれました。
渚がせつなのどこに惹かれたのか。それすらはっきりとはしませんでしたけど、私はこれでもよかったと考えています。その理由は説明できるような気もしますが、一言で言うと好きに理由はいらないってことかなw
本編のほうが終了したとき私はかなわなかったからこその想いの先を書いてみたいといっていた気がします。
せつなの叶わなかった想い。涼香への恋。それは想いだけが残って、想いの向かう先だけがなくなりました。これまでせつなはそのために笑って、泣いて、傷ついて。さまざまなことがありました。
恋をしたから。でもそれは叶わなくてせつなに残ったのは涼香を好きという想いと、恋がもたらした記憶と思い出。
そして、せつなが目を向けてしまうのはつらかった記憶ばかり。あんなにがんばったのに、あんなに悲しかったのに、今も苦しんでいるのに。
それは恋だけでなく、さまざまなものに付きまとうものだと思います。
何かをがんばったってその欲しかった結果が返ってくるとは限らない。だからもっとがんばるかもしれないし、そこであきらめてしまうかもしれない。たぶん、あきらめたとしてもそれは欲しかった結果が手に入れられなかっただけで、何も残らないわけではないでしょう。けど、それはその人次第だし、せつなのようにすべてが無駄になってしまうと考えることだってままあることなんだと思います。
あのがんばった時間はなんだったのか、何であんなに苦しまなければならなかったのか、もっと早くにあきらめていれば【今】は別の何かがあったかもしれないのに。そうやって、悪いほう悪いほうにばかり考えてしまいがちです。せつなだけでなく、渚もそれは思ったし、私だってそうです。
そして、渚が言っていましたがそれに意味をつけるのは自分しかいないんですよね。誰に何をされたって、何を言われたって最後に意味をつけるのはいつだって自分。最後に立ち上がるのはいつだって自分。
誰かに好きといわれても、言われた自分をどう思うかそれが重要なんです。
せつなが渚に想われる自分をどう考えているのか、まだせつなにだってはっきりしていないでしょう。
でも……せつなはきっと……
この外伝がせつなの想いの先だったのかまだわかりませんけど、私は渚とせつなの物語を書けてよかったと思っています。
そして、ここまで読んでくださった皆様。本当にありがとうございます。本編のときから迷いながらここまで歩んできましたが、結果的にここまでこれたこと私はそれを嬉しく思いますし、大げさかもしれませんが誇りに感じています。
私がこの二人の話を書き終えたとき、書けてよかったと思えたように、皆様にも読んでよかったと思っていただけたらこれ以上嬉しいことはありません。本当にこれまでありがとうございました。
これからの二人がどうなるか、私としても気になっていますがひとまずここでこのシリーズを終わりということにさせていただきたいと思います。
二人の先。
それが、輝ける未来であることを。