世界が赤く染め上げられる昼と夜の境目。

 先ほどまで光に照らされていた場所が少しずつ闇に飲み込まれていく。

大きな広場も、その中心にある大きな木も、所々に設置されている遊具やベンチも、すべてがどんどん闇に飲まれていく。

 広々とした公園。その街灯に照らされ始めた一角を一組の女性、いや少女が並んで歩いていた。

 二人とも顔立ちはまだ幼く、小学校高学年程度である。

 一人は、その年代としては背の高い痩身の少女。さらりとした髪は少女が歩くたびに揺れ、街灯の光や、太陽の変わりに光を放ち始めた月光に照らされると神秘的な輝きを放ち、時おりチョーカーにある紫の石を撫でながらゆっくりと歩いている。

 隣を歩くのは、年相応の幼さを持つ少女。隣の少女とは対照的に髪は短く、ショートカットで同様にゆっくりと歩いているが、不思議と見ているだけで天真爛漫な太陽のようなオーラを感じさせた。

 よく見ると二人は手を繋いでいるがその仕草はどこかぎこちなくも感じさせる。

 公園の中には少女たちのほかには誰もいなく静かで、二人の足音以外は何も聞こえてこない。

 夕闇を越え、本格的な夜が訪れようとしている公園をひたすらに歩いていく。

 手を繋いでいる以上、仲が悪いとは到底考えられないが二人は無言で、二人の間に流れる空気も穏やかには見えなかった。

 髪の長い少女は細い目を若干不安そうにして視線を散らしており、隣の少女も何か含みのある目でぬくもりを繋げている少女を時おり見つめる。

 そのまま二人は道なりに歩いていき、行く手にある石段をゆっくりと登っていく。

 石段の先は小さな広場になっていて、中央には噴水。そこから少し離れた位置にベンチが置かれていた。

 そこに上がってもやはり二人は無言だったが、噴水の前まで来ると足が止まった。

「…………」

 髪の長い少女が隣の少女の名前を呼んで、名残惜しそうに手を離して一、二歩前に出た。手を離す仕草は本当に名残惜しいという言葉では表しきれないような動きだった。

 離そうとしたのは髪の長い少女だったが、肌が、ぬくもりが離れるにつれ動作がゆっくりになり、最後、もはや手を繋いでいるとはいえないような指と指が触れあうだけの状態になっても相手を最後の最期まで感じたいという気持ちがこもっているように見えた。

「…………」

 前に出た少女はそのまま相手に背中を向けたまま、俯き、繋いでたのとは別の手を持っていた手さげの中にあるあるものに触れて、それを確認した。

 そうしていると、少しずつ胸の鼓動の高まりと体の深淵から湧き上がる絶望にも似た想いを感じ繋いでいた手を胸に当ててそれを受け止める。

「…………」

 しばらくの間そのまま沈黙のときが過ぎた。

 しかし、後ろに立つ少女が何か言葉を発し、ためらいがちに前に立つ少女は振り向いていった。

 そのあとも、ニ、三言髪の短い少女が何かを告げると、髪の長い少女は意を決したように何かを問いかけた。

「えっ……?」

 それに一瞬驚いたようだったが、少女は神妙な面持ちで確かめるかのように頷いた。

 その返事に歓喜とともに胸に訪れた悲しさ、懺悔を感じながら髪の長い少女は泣きそうな顔で笑みを浮かべた。

「ねぇ……」

「……なに?」

 二人の間に流れる空気が明らかに変わった。ここにくるまでは穏やかではない程度だったが今は、明らかに緊迫したものが漂い、臨界寸前になっていた。

 二人はそのまましばらく息をするのすら忘れお互いを見詰め合う。

 そして、背の高い少女がゆっくりと口を開いた。

 希望への意志と、絶望への諦めの言葉を。

「一緒に……死のう?」

 そういって少女は震える手で手さげから刃をむき出しにしたナイフを取り出した。それは月光を反射に目の前にいる少女にもはっきりと見えた。

「え……?」

 言われた少女は心底驚愕はしたが、現実感を消失することはなく、しかし、逃げも、叫びも怯えもせず、またそんな狂言を前にして取り乱しもしなかった。

 ただ、見つめ返す。意思のこもった瞳で。

 月とわずかな街灯が二人を照らす中、ナイフを持った少女はゆっくりと時には激しく、取り乱した様子をも見せながら、瞳には涙を浮かべ必死に訴える。

 自ら狂気とわかっている自分の気持ち、想いを。

「……だ、から、一緒、に、死のう? 死んで!! そうすれば、私、あなた、を……ずっ、と……」

 掠れ、消え入りそうな声で少女はさらにその先を続けていく。そのまま闇に吸い込まれていってしまいそうなほど不安や戸惑いに満ちた、完璧ではないがしかし確固たる気持ち。

 その、想いの相手は一切口を挟むことなく一度も目をそらさずに痛すぎるほどに向けられた純粋な想いを受け止めていた。

 数瞬目を閉じ、目を開くとナイフをカタカタっと震わせ瞳からは涙を流す、自分を殺そうとしている相手を見つめ返す。

 暖かく、包み込むような目で。

 そして、答えを返す。

「…………」

 その瞬間、二人の間を強い風が駆け抜けていった。

 

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 Immoraliteと同じじゃん、とかいわないでくださいw 一見、似ているようにも思うけどかなり異なってます。と、いわれてもこれだけでは何がなんだかさっぱりですよね。

 これは、Immoraliteのときのように長編のプロローグ? いや、プロローグとは言わないけど、導入というか、最初の部分にくるものと意識して書きました。

 これを書いた、書きたい理由はImmoraliteのあとがきにも触れた愛の表現の一種としてです。あそこで書いたものの一つの形を現したいということです。といっても、ラストを考えているのみであとは大まかな設定以外は漠然としたものしか考えてませんが。ただ、Immoraliteのときとは違って、これは絶対に続き? を書こうと思っているものです。その勇気があれば、ですが。

 

 これはかなりとはいわないけど、それなりに重い話にするつもりです。Immoraliteがどちらかというと死というか、殺すことがメインだったのに対して、こっちはとにかく【愛】ですね。書いていて恥ずかしいですけどw 主人公は髪の長いほうです。うまく言えないけどイメージとしては太陽と月な感じ、でしょうか? ヒロインが太陽で主人公が月。主人公が日陰者というより、太陽がいるから輝けるというようなことを……うーん、やっぱりわかりませんw もしかしたらあんまり関係なくなるかも。

 展開やら性格が他のとかぶってしまうと思いますけど……元々HPは長編もの、表現したいものを書くための練習という意味合いもあるのでそれは大目に見ていただけるとありがたいです。いえ、この言い方は悪いですね。自分の力のなさを隠そうとしてる上にHPの作品に対して失礼ですよね。

 というか、ここに書く順序が滅裂なのですが主人公の【一緒に死のう】は当然ではあるんですけど、簡単に言えたものではないんです。自分でおかしいってわかってるし、Immoraliteのときとは違い、それを相手に伝えるというのは勇気なんて言葉じゃ言い表せられないほどの想いが必要だったんです。そんなこと伝えれば、例えどんな関係の相手だって普通に考えれば離れていく。一緒に死ぬというのはある意味結果でしかなく、ただそうするだけじゃ意味がないって何よりも自分がわかってる、でも例えそれで嫌われるとしても言いたい、伝えたい。……一緒に、死に、たい。という純粋な気持ち。それは、主人公が本当に望んでいることだけど、きっと二番目の想い。

 ヒロインは、ナイフを構えられながら一緒に死のうといわれても逃げもしなければ、嫌いにもなってはいません。でも、少なくてもこの範囲じゃ頷いてもいない。最後の答えは風に消され、二人以外には届かなかった。っていうか、本編じゃないからですけどw

 

 自分の書きたいもの表現したものがかけるかどうかはわかりません。でも、書きたいと想いがある以上、いつかはやって見たいと思います。

 その時HP上での連載という形式にするか、書き上げてから一気にとするかは決めてません。やっぱり、それによって多少なりとも影響が出ると思いますし。

 唐突にこんなの書きましたけど、思い返すと理由がよくわかんない。こういうものをやりたいという意思表明をしたかった、ということですかね。多分。それをはっきりといわないところがなさけないですが。

 

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