一言で言うなら、暑い。

 二言で言うなら、すごく暑い。

 っていうか、熱い。

「はぁ〜、あっつ〜」

「……そうね」

「あぁぁ、暑い」

「……夏だものね」

「暑すぎて死ぬー」

「……死ねば?」

「………………」

 何気に今のかなりひどくない?

 ある夏休みの昼下がり、あたしたちはお昼を食べた後部屋でいつものようにだらだらとしていた。

 外はぎらぎらとした太陽が世界を焦がしていて、それはたとえ家の中にいても暑さをやわらげてくれることはない。

 窓は開けてるけど、風は凪いでいて、家も外も変わらない感じ。

 節電がどうとか騒ぐわけじゃないけど、昼間からエアコンをかけるのはなかなかしないのがあたし。

「……あつ……」

 あたしは、フローリングの床に寝転がりながら少しでも冷たい場所を探してごろごろとし、

「……うっさいっつの」

 美咲はさっきから暑いしか言わないあたしにいらいらしながらテーブルで本を読んでいた。

「だって暑いもんは暑いもん」

「騒いだって、涼しくなんかならないでしょうが」

「そりゃそうだけどさぁ〜」

「わかったら少しは静かにしてなさい」

「……はぁい」

 このまま怒らせてもしょうがないし、少しは黙ってようかなとあたしはまた無言で床をごろごろと転がりだした。

 とはいえ、そんなことしてても涼しくなるわけないっていうか、動いてる分暑くなるような……

(あ、そうだ)

 そんな中あたしはあることを思いついて、すくっと立ち上がると部屋から出て一階へと下りていった。

 向かったのは台所で、冷蔵庫から丁度お昼前に冷やしておいた麦茶を取り出すとたっぷり氷を入れたコップに注いだ。

 夏は暑くて嫌だけど、この暑い日に飲むつめたーい、麦茶は最高だよね。

 あたしは優しいからついでに美咲の分も淹れてあげて、自分の分すら一口しか飲まずに二階へと向かっていった。

(そだ)

 このままただ美咲にあげても簡単にありがとうって言われるくらいだし、ちょっといたずらしちゃお。
 そんなことを考えたあたしは二階に上がると足音を立てないように部屋に戻っていって、変わらずテーブルで本を読む美咲に音を立てずに忍び寄る。

 そして、

 ピト。

 キンキンに冷えたコップを背後から美咲のほっぺたに当てた。

「きゃん!?」

 と、美咲はあたしの思う以上に可愛い声を上げて、

「わっ!!」

 びくっと体を震わせた拍子にあたしは思わず手を滑らせちゃって

 バシャ

 美咲にあげようとしてたコップがひっくり返って、そのまま中身が美咲にかかっちゃった。

「ひゃぁ……んっ」

 美咲がまたらしくもない可愛い声を出して、麦茶に濡れた肢体をさらけ出す。

「あ、っと。だいじょう、ぶ……?」

 あたしは服が張り付いた美咲の体を見ながら、まずは心配していた。

 でも……

(………………)

「大丈夫、なわけないでしょうが。何すんのよ」

「いや、あんな、驚くとは思わなくてさ」

「ったくもう、びしょ濡れになっちゃったじゃない」

 美咲はそういいながら肌に張り付いた服を引っ張った。

(おっ)

 さっきまでの、服が濡れて体のラインが完全に出ちゃってる姿もよかったけど、座ってる美咲がそんなことしたりすれば、当然胸が丸見えなわけで。

(うんうん。眼福眼福)

 まぁ、でも濡れて張り付いた服ってほうがあたしの好みかな? 

「……なにじろじろ見てんのよ」

 なんて実に微笑ましいことを考えていたあたしに美咲のじとっとした目つきが突き刺さる。でも、それはどこか普段美咲があたしを小ばかにしたり、するのとはまた違ってちょっと恥ずかしそうな雰囲気が混じっていた。

「…………」

 それを見落とすはずもないあたしは

「ね、美咲。拭いてあげよっか?」

「は? なにいっ……ゃん!」

 あたしは美咲の返事もまたずハンカチを取り出すとまずは、一番ひどく濡れている胸元に手を伸ばした。

「ちょ、ちょっと……んっ」

 抗議を受け入れるつもりもなくあたしはまずは服の上から優しくふき取ってあげようとする。

「や、やめなさいよ」

 美咲の顔がみるみる赤く染まっていくのを楽しみに感じながらあたしは美咲の胸元でせわしなく手を動かしていく。

(んふふ〜)

 美咲って自分からは色々してくるくせに、不意打ちには弱いんだよね〜。もともと感情を顔に出すタイプじゃないけど、今は顔を赤くしてるだけじゃなくて、わなわな唇を震わせて、怒ってはいるけど唐突で何を言っていいのかわからないって感じ。

「ひ、一人でできる、からぁ」

 冷静なときの美咲なら絶対にこんなこと言わない。「やめなさいよ。この変態」とでも冷たく言って、一人でぱぱっと済ませちゃう。でも、今はさっきみたいなのが精一杯。

(たまんないよね)

 たぶん、こんな美咲、ゆめだって知らないんじゃないかな?

「あたしのせいでもあるんだし、ちゃんとあたしがしてあげるって。……こっちも、ね」

 あたしはぴたっと美咲の体に密着するとつつーっと胸からなでるようにして指を下へと持っていく。

「え? ……ぁ、んっ、そ、っちはぁ!!」

 その指をそのまま服の下にもぐりこませたあたしは小さな穴をくすぐるようにいじる。

「そこは、濡れて、な……んぁ」

「ちょっと濡れてるって、あたしがちゃんとしてあげるから」

 つめ先でぐりぐりと弄繰り回して美咲の反応を楽しむ。

「ふふ、ゆめのおへそもちっちゃくて可愛いけど、美咲もいいよね。すべすべで、さらさらで……」

「あ、やねぇ……」

 怒っているみたいだけど、それよりも悔しそうにしている感が強くてあたしは調子に乗って、そのまま美咲の服をめくれ上がらせた。

「ちょ!」

 まさか、あたしにそこまでされるとは思っていなかったのか美咲は本気であせったような声を出すけど、それもやっぱりあたしを調子付かせるだけで、あたしはそのままぐいっとブラで出ちゃうくらいまで服を捲れさせた。

「ちょ、ちょっとやめてよ……」

「だめだめ、ここが一番濡れてるじゃん。ちゃんとあたしが責任とってあげるって」

「ばかな、こと言ってないで……っていうか……あんまり、見るな」

(っくは)

 こんなことまで言ってくれるなんて。美咲ってば、ほんと珍しく可愛くなっちゃって。

「んっ……」

 ちょっと残念なことに、美咲はあきらめたのからしくもなくしおらしくなっちゃってその後は形ばかりの抵抗は見せなかった。

(まぁ、恥ずかしそうにあたしから目を背けたりしてるところとかはたまんないけど)

 あんまにふざけるのも悪いとは思っていて、あたしは美咲の綺麗な体をもーっと綺麗にしてあげるために体につくで雫を一つ残らずとってあげた。まぁ、さすがにブラのあたりは触ると怒らせそうだからしなかったけど、もまぁ、堪能した。

「……ったく、もう」

 あたしが拭き終わると、美咲は恥ずかしさはよりも怒りのほうが強くなった感じな目つきであたしをにらみつける。

 ただ、直接は文句を言ってくることもなくて、美咲は濡れた服を着替えだしていた。

 そんな後姿を、眺めていたあたしは

「あ」

 と声を上げて美咲の背後から近づくと、

「こんなとこにも」

「?」

 終わったと思って油断してる、美咲の首筋をペロっと嘗めた。

「っ!!?」

 さすがに、やりすぎかなとも思ったけど、たまにはこんなのもいいかなとあたしは無駄に殴られる覚悟すらして美咲に受け答えをする。

「な、なにするのよ!?」

「ん、拭き残しがあったみたいだから」

「だ、だからって何で嘗めるのよ」

「んー、まぁ……なんとなく」

「っ。ば、バカじゃないの」

(ん?)

 正直、一発くらいは引っ張られるのかなとも思ったけど美咲は最後まで予想外の反応をして

 さらには

「………ほんと、バカ」

 怒っているのでも恥ずかしがってるわけでもなく、ただ不満そうにそうつぶやくのだった。

 

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