テレビでは昨日から同じようなニュース。

 窓の外を眺めれば暗い空と強い風。

 それと

「んー」

 ソファに座りながらその二つを繰り返し見ては何か考えたようなしぐさをする恋人。

(どうせろくでもないことでも考えてんでしょうね)

 朝食を終えた後、食後のお茶を淹れながらそんなことを思う。

 一見、真剣にも見えて少しその顔にどきっとしないでもないけどこういう時の彩音は大抵の場合その表情に似つかわしくないことを考えてるのよね。

 昔からこいつはそうなんだから。

「はい、お茶」

「ん、ありがと」

 お茶を運びテーブルを置くと私も隣に座って彩音と同じものを見てみることにする。

 テレビでは昨日の夜から台風のニュースだ。

 今回の台風は大分強力らしくて数日前から備えをしろなど外出をするななどのニュースが繰り返されている。

 この辺りも朝から強風圏に入って雨はまだだけど風がすごいのは窓の外を眺めるだけでもわかる。

「んく……ん」

 台風が気になるからニュースも見るし、外を眺めるのもわかりやすい理由ではあるけど、それだけとは思えないような予感がするのよね。

「ねー、美咲―」

「何?」

「今日って一日台風で外に出れないじゃん」

「そうね」

「食料とかは念のため二、三日分はかってあるじゃん」

「それで」

「ゆめは家戻ってるけど、この台風じゃ戻ってこれないでしょ」

「まぁ、でしょうね。ひかりさんも一緒にいるって言ってたから離してくれないでしょうし」

 でさーと、手にしていた湯飲みを置いて私の方を向くと。

「ちょ、っと」

 私の湯飲みも取りあげられ、抗議しよとする前に

「っん」

 ソファーに押し倒された。

 香りまで感じられるほど目の前に迫る彼女の顔。何度見ても好きとしかいえずにこんな形でもついドキドキとしてしまうのに。

「今日さー、一日中エッチしてみない?」

 すぐ幻滅させることを言ってくるのよね。……今更幻滅なんてするわけもないけど。

「……は?」

 呆れはするわ。

「あんたバッカじゃないの?」

「うわ、ばかとかひどくない?」

「言いたくもなるわよ。一日中しようだなんて」

「一回くらいそういうことしてみたいって思ってたんだよね。せっかく外にもでれないしさー」

「……っ。バカじゃないの?」

「好きな人といっぱいしたいのは別におかしいことじゃない気がするけど。駄目?」

(……っく)

 別に異常なことだとまでは言わないわ。その……私だって彩音とするのは……好きだし、幸せを感じられる瞬間だし。

 でも、請われるまま一日中を許すなんてなんだか癪で。いえ、癪と言うより……理由が必要。

「ま、美咲がやだって言うならいっか」

「ぁ……」

 私の上からどいてしまう彩音にふがいないことに寂しい気持ちになる。

「美咲がだめっていうなら今度ゆめと二人きりになった時にでいっかな」

「っ………」

 あぁ……もう! ほんとこいつはむかつくわ。そうやってゆめの名前を出せば私が折れると思っているんだから。

 ゆめは性的なことにそれほど積極的ではないけど、彩音や私からされることを嫌がることはないし。

 それとなによりゆめは見た目通り子供で私に優越感を持つのが好きだ。

 彩音がどう誘うかなんて知らないけど、その時に私は断ってたなんてことを知れば結局は受け入れるだろう。

 そして、その想像を私がするのは彩音なら考えないわけはなくて

 私は、彩音の手のひらの上で踊らされるのが気にくわないと自覚しながらも、

「彩音」

 名前を呼んでぐっとこっちへと引き寄せると

「んっ……っゆぁ」

 強引に唇を奪った。

「ちゅ、んぷ…ふぁ」

 粘膜のふれあいに体が火照り、潤んだ瞳でこいつの思惑通りに動くことににらみつけようする。

 とてもエッチをするという視線ではないけど。

「あんたがさそってきたんだから責任とりなさいよ」

 と、私達は退廃的な一日を始めることになる。

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