テレビでは昨日から同じようなニュース。
窓の外はすでに暴風雨。
それと
「……むぅ」
ソファに座って窓の外を一心に眺める小さな恋人ちゃん。
あたしはそんなゆめの隣に座ってテレビと窓の外と、恋人を見比べて思案中。
どこかで見たような状況なんだけど。
どうしようかな。
「残念だったね、ゆめ。澪と出かける予定だったのに」
「……台風じゃ仕方ない」
今日はゆめは珍しく数少ない友人とお出かけの予定だった。よくわからないけど、本を買いに行くとかなんとか言ってたけど、この雨じゃそのイベント自体も中止らしい。
まぁ、ゆめは澪に誘われたというだけでそれほど気にしてはいないようだけど。
「だよね。こんなんじゃ外出れないもんね。今日は一日家で過ごすしかないよねー」
「……うん」
「まぁ食料とかは二、三日分くらい買ってあるから心配はないよね」
「……そうだが?」
うんうんと頷きながらあたしはゆめへと体を寄せる。
「? ……どうした、彩音」
「んーと」
「?」
あたしはゆめの体を抱えるとゆめの背後に回り込んで、当のゆめは膝に乗せる。
「……何、する?」
「ちょっとねー」
と、とりあえず今は服の上からお腹を抱えて肩付近に顔を寄せる。
(さてさて、ここからうまくやらないとねー)
あたしが何をするつもりかはもう説明するまでもないかもないよね。
あ、いやいやこの前美咲としたのが思いのほかよかったとかそういうんじゃないよ。それじゃあたしがエッチな子みたいじゃん。
ほら美咲としたらゆめともしないとゆめに悪いしってことで。断じてあたしがエッチだとかそういうんじゃないんだよ。
と、誰に対してしてるかわからない言い訳はともかく。
ゆめに正面からしたいっていうと怒られる気がするんだよねぇ。美咲はあたしに沿ったことをしてくれるけど、ゆめは拒絶したりはしないだろうけど終わった後とか怒りそうなんだよね。
つまり、ゆめが納得する形で了承してくれるのが必要なわけで。
「……っ?」
ゆめを膝に乗せたままのあたしは片手でゆめを支えながらもう片っぽをお腹へと持って行って、服の下に潜り込ませる。
「……んん…」
そのまま瑞々しいお腹を軽く撫でると短く声をあげた。
ただ、この程度なら普段のスキンシップでもするしゆめが抗議の声を上げることはない。
(ゆめのお腹、いいよねぇ。撫でてるだけで気持ちよくなっちゃいそ)
すべすべだし、滑らかに指が滑っていくだけでも楽しい。
(でーも)
あたしはその指をそのまま上へと進ませていく。
服が伸びて少しずつ露わになっていく肌と
「っ……ん。な、に、する」
指が胸に到着するとようやくこっちを向いて抗議の声をあげるゆめ。
そりゃあ、いきなり恋人だからってこんなことされたら怒るのも無理はない。
「何ってエッチしよってことだけど? この前だって台風の時、朝からしてたじゃん」
あたしはとぼけてそれを言う。ゆめにとっては限りなく有効な言葉を。
「……ん、っ! なに、わけのわからない、こと……言って、いる」
身を捩って逃れようとしてもあたしに抱かれてからほとんど無駄な抵抗でしかなく、そのまま服を完全にめくりあげて胸を露出させた。
「ほら、この前の台風の……あ」
ってわざとらしく声を上げた。
「あー、ごめん。よく考えたらゆめじゃなくて美咲だったね。勘違いしてた」
あっさりとゆめを離し、膝からもを下ろして再び隣に戻る。
「…………どういう、ことだ」
肌の露出は直したものの服は乱れたままのゆめが睨むように見てくる。
(ゆめはこういう怒った時の顔も可愛いんだよね。それに睨んでても、迫力なくて……よからぬ感情を思い起こさないでもないし)
「……美咲とはしたのか」
「…………」
「……私が、いない時に」
「えー、と。まぁ、その若気の至りってやつ? 台風でどこにも出かけられなかったし。ごめんってば。別にゆめを仲間外れにしようって思ったわけじゃないよ。たまたまいなかったから」
「……………」
黙っちゃったけど、何を考えてるかな。ゆめって考え事してる時はフリーズしがちなんだよね。
「ゆめが嫌ならもうしないよ」
それをうまく誘導するのがあたしのいいところなわけで。
「……嫌、だとは言って、ない」
ほら、ね。
「じゃあ、してもいいの?」
「………彩音がどうしても、したい……なら、させてあげる」
ここはなかなか難しい分岐点。
いや、素直に頷いておけばいいところではあるんだけど。
「どうしてもって程じゃないかなー。美咲が起きたら美咲のところ行けばいいし」
「っ……」
どうやらうまくいったみたい。挑発の仕方を間違えると怒って半日は口きいてくれなくなったり下手すると手が出る子だけど、今は
「……私が、させてあげると言ってるんだから、私にしろ」
ソファに押し倒されてこんなことまで言ってくれるんだもんね。
しかも恥ずかしいのは隠せなくて顔は赤くなって、瞳はちょっと潤んでるし。
エッチする前の表情にはあんま思えないかもだけど、
それがゆめへの愛しさで
あたしはゆめの背中に手を回すとこちらにぐっと引き寄せ、体に落とす。
「じゃ、責任とってあげる」
と退廃的な一日を始めるのだった。