それはちひろちゃんが汐入に帰った日のこと。
のりえちゃんと麻音ちゃんと別れた後、私はかおちゃんを私の部屋へと誘っていた。
理由は……
(……かおちゃんがなんだかさみしそう、なので)
そんな気がしたから。
笑顔だったけど、それでもなんとなくそんな気がしたので。
「かおちゃん、麦茶入れたよー」
かおちゃんを部屋に待たせて、台所から麦茶を取ってきた私は部屋に戻るとそう声をかけた。
「お、ぽって、ありがと」
かおちゃんは部屋の真ん中に立っていて、私が部屋に入ってくると私のほうに来てくれて麦茶を受け取った。
(?)
かおちゃん、部屋を見てた?
部屋に戻ってきた時、そんな感じだった。
でも、かおちゃんが改めて見るようなことはないと思うけど。
「ん……んく。ぷは」
そんなことを考えながらかおちゃんを見つめているとかおちゃんは麦茶に口をつけていた。
「んー、なんかぽってんちのは香りが違う気がするね」
「あ、え、えと、確か、お母さんがなんかちゃんとした作り方してた、から…、かな」
詳しくは知らないけど、確かパックの麦茶でもおいしく入れる方法があるってテレビで見た気がするので。
「そっか」
(あ……)
答えながらかおちゃんはまた部屋を見渡した。
「これってさ、ちひろちゃんが作ってくれたっていうぬいぐるみだよね」
「あ、うん。そうなので」
かおちゃんは机の上に近づいて行って、そこに置いてあるちひろちゃんがプレゼントしてくれたぬいぐるみたちを軽く撫でた。
「…………」
やっぱり、寂しそう。
「あ、あのかおちゃん!」
「ん? どしたの? 急に大きな声出して」
「え、えと……あ、あの…」
私が緊張でちょっとわたわたとしちゃってるとかおちゃんは私の方に向きなおって目の前までやってくる。
「ん?」
「な、なんか元気、ない?」
こういう時にかおちゃんがしてくれる優しい笑顔を見て私はようやくそう言えた。
「……………そう見える?」
「え、えっと、その……なんとなくだけど、そんな気がした、ので。あ、気のせいかもしれないけど。…………はぇ!?」
確信はあるけど、どこがとか言われちゃうとはっきりわからない私はまたうまく口が回らなくて、かおちゃんはそんな私の頭を抱えると
「……すんすん」
いつもみたいに軽く私のにおいをかいだ。
「合格」
そして、嬉しそうにそう言った。
「いつもと変わんないつもりだったんだけどなぁ。ぽってにはわかっちゃったか」
「かおちゃんのこと、なので」
かおちゃんのことなら少しの違いでもわかる。きっとかおちゃんも同じだと思うので。
「………合格」
今度は小さく、でもさっきよりも嬉しそうに言った。
「それで、どうしたの?」
かおちゃんが嬉しそうなのは私も嬉しいし、さっきの顔はちょっと写真に撮りたいくらい素敵だったけど、今はかおちゃんのことが聞きたい。
「んー……」
ちょっとだけ困ったようにかおちゃんは指でほっぺたをぽりぽりとかいた。
「あんまりぽってには言いたくなかったけど……」
「?」
いいながらかおちゃんはまたちひろちゃんの写真とぬいぐるみが飾ってある棚を見た。
それから、今度はちひろちゃんと私のツーショット写真の私に触れる。
「私は勝手にぽっての一番だ、って思ってたのかなってね」
それは、私にとってあまりに意外な一言だったので。
「え……?」
最初はかおちゃんの言ってる意味がわからなかった。わからなくて
「か、かおちゃんは私の一番の友だち、だよ?」
かおちゃんの気持ちも考えずに単純に答えた。
「…………」
(?)
気まずそうに私を見るかおちゃんはすぐに私から目を背けて、またちひろちゃんの写真に視線を戻した。
「……………ちひろちゃんより?」
「っ!?」
「いや、というか、勝ち負けじゃないってわかってるんだよ」
バツの悪そうに今度はポニーテールの髪を撫でる。
「私は、ぽってとは小さいころからだし、今だって大体いつも一緒にいるし、ぽってのことは一番よく知ってるつもりだった」
「かおちゃん……」
「でも、よく考えたらちひろちゃんのほうがそれこそいつも一緒だったんだよね。……ぽってが竹原に来なくなってた時も、ちひろちゃんはずっとぽってと一緒だった。……私の知らないぽってをきっといっぱい知ってる。……それがなんか、悔しいっていうか、寂しいっていうか……」
私はそこでやっとかおちゃんが何を悩んでたのかわかった。ちひろちゃんが、私に友だちができた時ほんとはちょっと寂しかったって言ってたのときっと同じ。
「……だめだよね。ちひろちゃんはあんなにいい子なのにさ……」
その気持ち私にも少しわかる。私も似たようなことを思ったことがあったから。
「まぁ、そんなことを考えてたら柄にもなく落ち込んでしまったわけなのだよ」
かおちゃんは一転して笑顔になる。でもそれはきっと本当の気持ちじゃない。
「そんなわけだからぽってはあんまり気にしなくても大丈夫。明日になればちゃんといつもの私に………ぽって?」
口を開くたびそこからかおちゃんの気持ちが少しずつ零れていっているような感じがして、それを受け止めたい私は
「か、かおちゃん!」
思わず大きな声を出していた。
「ど、どうしたの、ぽって」
「か、かおちゃんは私の大切な、とっても大切な友だちだよ」
「あはは、わかってるよ。ぽってがそう思ってるってことくらい」
それは、私も知ってる。私がかおちゃんのこと大好きってことをかおちゃんは知ってる。でも、それをもっと伝えたかった。
「だって、全部かおちゃんがいてくれたからだよ。小さいころ、何度も竹原に着たいって思ったのはかおちゃんが友だちになってくれたから。それに……」
それは今まで私の心の中だけにあった気持ち。こうしてはっきり言葉にして伝えるのはすごく恥ずかしい。けれど、伝えたい。
「本当は……迷ったりもしてたの。また、ここに着たいって思ったけど、うまくやれるかなって怖くて、不安だったので。でも、かおちゃんがいてくれるから大丈夫って思えたの。今もね、かおちゃんがいてくれるから毎日、すごく楽しい。のりえちゃんや麻音ちゃんと仲良く慣れたのだって、かおちゃんのおかげ。ちひろちゃんのことも大切だけど、かおちゃんは特別。誰よりも特別で……大好き、なので」
「……ぽって……」
あ、あれ? かおちゃんの声、震えてる。泣きそうな時の、声?
わ、私なにか変なこと言っちゃったかな?
「わっ!?」
またかおちゃんが私のことを引き寄せた。いつもみたいに匂いをかがれるのかと思ったけど……?
「かお、ちゃん?」
かおちゃんはそのまま近づいてきて………
ちゅ。
ほっぺに、キス、された?
「え? えぇ? えぇえええ!!!?? あ、ああああの、か、かおちゃ……」
「ぽって……大好き」
今日、一番嬉しそうなかおちゃんの笑顔。
「あ……うん」
それを見てると、今すごいことをされたはずなのにそれがなんだか当たり前のことに思えてきて
「私も、なので」
ちゅ。
私からもかおちゃんのほっぺにキスをしてた。
「あ………」
「……大好き」
少しだけ震えた声を聞きながら、ぎゅっと抱きしめられる。
小さな私の体をしっかりと包み込んでくれるかおちゃんの腕、体、気持ち。
そんなかおちゃんの全部が心地よくて私はかおちゃんに全部を預ける。
そうして写真には残らなかったけど、私たちは素敵で大切な思い出の一幕を過ごした。
「……大好き、か」
ぽっての家を出た私は、ぽっての部屋であったことを思い出しながらつぶやく。
「……ほんと、大好きだよ。ぽって」
ぽっての部屋の方角を見ながら私は、言葉に反して暗い声をだす。
(……ぽっての好きと私の好きが違ってても、ね)
ぽっての好きは友だちとしての好き。特別なのは、友だちとして特別。あくまで、友だちとしての一番。
(……けど、いいよ)
昔に比べたらずっとましだから。ぽってと会えなかった、会いたいと願うだけだったころに比べれば、天と地ほどの差がある。
「だから、今は、まだいいよ」
好きな人と会える幸せを噛みしめながらぽっての隣を歩いて行こう。
いつか友だちじゃなくて、ぽっての一番になれる、その日を願いながら。
あぁあ、なんかいろいろすみませんでした……って最初から謝るのもそれはそれで卑怯な気がするのですが……とにかく……こんなものですが読んでいただいてありがとうございました!
実は二次創作は初めてだったので、キャラの説明とかなくていいのかとか、知ってるというのが前提なのが二次創作なのかとか考えてしまったりもして、結局はアニメ見てない人にはわけのわからないものになってしまったかなと反省中です。
……でも、漫画とかじゃないからやっぱり軽く紹介とかしておくべきだったんでしょうか……うーん。でも、そんなものより、公式ページを見たほうが早いですよね。というわけで一度ご覧ください。というか、アニメも機会があったら見ていただけたらと思います。実は私もすごいにわかでこれを書いた時点では半分と少ししか見てませんが。
あ、ちなみに五話の後の話のつもりです。見ていない方に勘違いされてもあれなのですが、はっきり言って私の妄想ですw こんなようなことは全然なかったし、かおちゃんはすごいいい子なのでこんなこと思ったりもしないと思います。……お姉ちゃんとぽってが仲良くなりすぎてヤンデレ化……とかも妄想したりして……いえ、何でもありません。
でも、やっぱり七話とか見るとかおちゃんのぽって愛は友情を超えているのでわ、と。思わずにはいられません。
と、まぁこんなことばかり語ってしまいましたが、アニメはいい作品ですので機会があったら一度ご覧ください。
では。
……にしても、せっかく二次創作を書くのならもっと需要のあるものを選べばよかった気もしますが、どちらかというと勝手に作品の宣伝をしているような感じなのでこれはこれでよしとしておきます。