空が白み、外からは鳥の声も聞こえるころ。
「ん……ぅん……はぁ……ときなぁ」
腑抜けた顔をしてベッドで眠る絵梨子をときなは隣で見つめていた。
「ふぅ、まったく」
ときなはあきれたようにつぶやくと絵梨子の頬を指で軽くつついた。
ぷにぷにと御餅のような感触を楽しむと次に少し強めに指を頬に沈めた。
「ぅ……ん」
それから逃れるように絵梨子は軽く寝返りを打つ。
「すっごく、恥ずかしかったのよ」
逃げた絵梨子に不満をぶつけると、今度は優しく髪を撫でた。
もう早朝だが、ときなは早く起きたのではなくずっと起きていただけ。絵梨子が寝たのも三十分と経っていない。
それほど長い夜を過ごしていた。ときなにとっては屈辱ともいえる夜を。
(……ちょっといじめがすぎちゃったかしら?)
この数日絵梨子に対しきつく当たっていた、というよりもいじめていた自覚はあり絵梨子の性格からして何か仕返しを考えてくるとは思っていたがここまでのことをされるとは思っていなかった。
(まぁ、いいわよ)
人生最大と言っていい羞恥を味わったときなではあるが、絵梨子を撫でる手つきはいつもと変わらぬ、いやそれ以上の愛しみがある。
(こんなことで仕返しをする絵梨子は、それはそれで可愛いし)
もっといくらでも方法はあるだろうに短絡的にこんなことをしてきた。そんなある意味大人でもあり、子供っぽくもあるところもまたときなにとっては魅力的だ。
(ただ……)
屈辱的であったことは変わらない。
ときなはそれを強く認識すると、絵梨子が見たら背筋をゾクゾクとさせてしまいそうな笑顔になって、
「こんなサービスは今回だけよ?」
と、絵梨子の頬に口づけをした。