「は……ふぅ……」

 上気した頬、

「……う……に……ぃ」

 とろんと蕩けた瞳。

「ん…ぁ……とき、な」

 熱を感じさせる声。

「それで絵梨子? どういうつもりだったのかしら?」

 ベッドに寝かされた絵梨子に同じく頬を染めた、しかし表情には余裕のあるときなが若干威圧的に話しかける。

「ん〜? 何が〜?」

 間延びした声で答える絵梨子の様子は普通とは違っている。要は

「だから、どんなつもりで私のお酒を飲ませていたのって聞いているのよ」

 酔っぱらってしまっているということだ。

 春休みということで泊まりに来たときなにある意図をもってお酒を飲もうと誘い、順調に飲ませていったのはいいのだが結果は今の通りだ。

「んー……と、内緒―」

 自らの酒量の許容範囲を超え、呂律も回らず果ては子供のようになってしまった絵梨子をときなはベッドに連れてきたのがいいが、中々話は進んでいない。

「……大方、お酒になれていない私を酔わせていやらしいことでもしようとしてたんじゃないの?」

 ときなはときなでそれなりの量を飲まされ、正常な状態ではないが酩酊しているわけでもない。自分を律することには長けており、邪な理由で酒を進めてきた絵梨子とは異なり理性は失わないよう心掛けている。

「…………」

「正直に答えたら膝枕してあげてもいいわよ?」

「うー……ときなの膝枕……?」

 オウム返しのようにその単語を口にする絵梨子にときな有無を言わさず自分もベッドに上がって絵梨子の頭を自らの膝に乗せた。

「ほら、してあげてるんだからいいなさい」

「……う、ん……はぁい」

 ときなの提案を了承したわけではないが、膝枕をされたということに反応して素直にうなづいてしまうと絵梨子。

「えっと……最近、ときなとエッチするときは〜、ときなにされてばっかりだったから、酔わせちゃえば好きにできるかと思ってぇ……」

「……………………」

 恋人から発せられた衝撃の理由に思わず顔をしかめるときな。

「……想像の倍くらいひどいわ」

 せいぜいエッチのきっかけにする程度の理由だと思っていたが、予想以上に節操のない答えが返ってきて思わずため息をつく。

「……まぁ、それだけ私を好きでいてくれると好意的にとってあげてもいいところだけど」

 ときなは優しく絵梨子の頭を撫でる。

「あ……もっとぉ」

 自分が被食者の立場にいることを自覚できていない絵梨子は無邪気にそう求める。

「今度からは自分が先につぶれるかもしれないっていうことも考えておくことね」

 絵梨子の要求に応えながらときなは捕食者の笑みを浮かべ、結局絵梨子の意図とは正反対のことになってしまうのだった。

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