ときなは自分に対して、自信を持っていたでしょう。多分ほとんどの人がときなを優秀だとみるし、実際ときなには実績がある。それをひけらかしたりはしないですけど、むしろ相手を不快にさせてしまうような無意味な謙遜もしない。
 ときなには自分が周りからどう思われているかという自覚があって、実際に自分も同じようには思っている。だけど、心の中では誰にも見せようとしない弱さを自分では感じている。
 その弱さを絵梨子にだけは見せてきた。
 だけど、今回ときなは自分の中にある弱さに堪えられなくなったんじゃないかと思います。
 今回の場合、程度の差はあれ不安や寂しさを感じないほうがおかしいでしょう。そして、ときなはそれを自分で考えていたのよりもはるかに大きな不安を感じてしまった。本編中で絵梨子が「私を信じてくれないの?」と暗に言っているところがありましたが、ときなは自分の中でそれを思ってしまったんでしょうね。絵梨子が感じたよりもはるかに大きく。
 誓い合ったはずなのに、別れを恐れてしまう自分。好きな人すら、いえ、自分すら信じられない自分。自分の中に発見した新たな自分は、あまりにもこれまでとはかけ離れていて余計に自分をしんじられなくなってしまったんでしょう。
 これまでだって十分に想いを通じ合わせてきた。でも、今のときなはそれを信じ切ることができなくて、これからだってそうだと思ってしまっている。ここで、絵梨子を頼っても、受け入れて、信じて、でも、離ればなれになって、その時には絵梨子はもう手の届くところにはいなくて……と、そんな不安ばかりが心を占め、ついには【今の絵梨子】すら拒絶してしまいました。

 一方絵梨子は、完全にときなを信じていました。離れても大丈夫だとそう確信していた。ときながただ、卒業に怯えてるんじゃないということは気づいても、これから先ずっと不安に苛まれるかもしれないとときなが考えているなんて夢にも思わなかった。だから、ときなに手を伸ばせなかった。
 そして、ときながもたらした命題は考えれば考えるほど重くなっていくものです。簡単に答えは出せないし、またそんなものはないのかもしれない。でも、ときなの不安がどこへ通じているかさえわかれば、道はあるのかなと思います。

 絵梨子が、ときながどうするかそれは次回ですが、次回で本編としては終了となる予定です。……まぁ、そんな風に言っておきながら、ずっと閑話を続けてるものもありますが、とりあえず次回がときなの三年の物語の最後となります。
 一応は最終回にふさわしいような結末を考えているので、お楽しみに。

   

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