(…………彩音の、バカ)
「……彩音のバカ」
いつもの病にうなされる時間。
この日、彩音にキスをされそうになった日、ゆめはいつよりも重い病にかかっていた。
気恥ずかしさのせいで本当に熱が出てしまっているような気さえしてゆめはぼんやりと昼間のことを思い出す。
学校はたまたま早く終わって、いつも彩音のことを考えていて眠れてないからと昼寝をしたのに起きたらなぜか彩音が一緒に寝ていた。
まずそのことを思い出すと体中がかぁっと熱くなり、恥ずかしくて汗がにじんでくる。
(……キス、されるかと思った)
その後、いきなり顔を近づけてきてそのときにはキスをされるかと思って、心の準備が出来ていなかったせいもあって逃げてしまった。
(……私の、ばか)
そして、あんなことを言ってしまったことに後悔する。あのときには一緒に寝てたのと、キスしようとしてきたことで頭が真っ白になってしまったが……あんなことをいきなり言えば本当に好きだって変に思う。
しかも、そのキスさえ結局恥ずかしくて逃げてしまった。
(……彩音……)
変に思われてないか。好きじゃないからキスさせなかったって思われたらどうしよう。こんな変なことして彩音に嫌われたら……
と、今までは気にもしなかったことを気にしてどんどん不安を膨らませていくゆめだったが、
(……でも)
「……キスするのって、くるしい」
目を瞑ってからの間ずっと息を止めていたゆめはとにもかくにもそう思うのだった。