三人で存分に愛し合った夜明け前。

 窓の外からもほとんど光がないような時間。

 そんな頃、一晩中愛し合ったこともあり寝てしまった彩音を二人で挟みながらゆめは美咲に声をかける。

「……そういえば美咲」

「……なぁに」

 部屋には明かりもつけていないので、表情もほとんど見えないが美咲はゆめがどんな感情を抱いているかを察している。

「……美咲は私の作戦を知ってるのになんで彩音とエッチしてた」

 それはゆめからすれば最もな質問だ。彩音に嫉妬を抱かせるというゆめの目的を知っているのに、彩音と体を重ねるのは不義理にも見えるだろう。

「一応、言っておくけど私が誘ったんじゃなくて彩音から誘ってきたのよ」

 さすがの美咲もゆめの理由を知っているのに、それを自分からないがしろにするようなことはしない。

 ただし、

「知ってると思うけど、私はあんまりいい性格はしてないのよ。目の前に餌をぶら下げられれば喰いつく程度にはね」

「…………」

 ゆめは不満ではある。

 しかし反論はしない。美咲がそういうやつだとわかっているし、そもそも自分と美咲の立場が逆だったら同じことをしたかもしれない。

「………………」

 だからゆめにできるのは暗闇の中で相手をにらみつける程度しかない。

 視界のきかない状況であってもゆめの怒りもにらまれていることもわかる美咲は、

「……今、なんで笑った」

「あらら、ばれてたの」

「……そんな気がした」

「あたりよ。でも別に馬鹿にしたりからかってじゃないわ。可愛いって思っただけよ」

「……それはたぶんからかっている」

「まぁ、そういう気持ちがまったくないわけじゃないし、前に黙ってた罪滅ぼしじゃないけど一つ言ってあげるわ」

「……何をだ」

「ゆめは無駄に色々考えてるみたいだけど、直接言った方がいいわよ。したいこととかされたいこととか」

 不用意に計略を巡らせても彩音には効かないことが多い。それは美咲が恋を自覚した小学生の時代から経験していること。

 鈍いというよりも思考の方向性が違っているのだ。

「大体、そうすればゆめの求めることを断ったりはしないわよ」

 こいつは、と頬を軽く引っ張る美咲。

 特にゆめのお願いとあればなおさらと、自分とゆめの若干の扱いの差にやきもちをしながら。

 ゆめはその美咲の微妙な心情には気づかないものの

「……美咲がそういうならそうしてみる。……やっぱり美咲はいいやつ」

 自分を慮ってくれた美咲には感謝をするのだった。