「ゆめ」
あたしは優しくゆめのことを呼んで、離れた指と指を絡ませた。
「…………彩音」
すると、ゆめは恥ずかしいのはもちろん変わってないんだろうけど、ちょっと嬉しそうな声色をした。
「……ん」
そして、唇を上向ける。
(…………あたしはゆめのこと、世界で一番好き、だもん)
咄嗟に心にそう言って、
「ちゅ」
ゆめの唇に口付けた。
「ん、は……」
まずは、軽く唇を触れ合わせて、潤んだ瞳で見つめあう。
「ゆめ、大好きだよ」
「……うん」
そして、
「あむ、ちゅぷ」
今度は本格的にキスをする。
「あぁむ、んぷ、ちゅる」
「……ん、は、ん…にゃ、む……ふ、ぁ」
あたしばっかりがしてたさっきとは違って、今度はゆめもあたしにしてくれる。
ゆめの短くて、猫みたいにざらってした舌があたしの舌に絡みついてくる。
「ひゃむ……あむ…ちゅ」
ゆめがあたしと同じ動きをしようとしてるのに気づいたあたしは、口の中で舌先をくすぐりあった。
チュク、ジュプ
唾液が混ざり合って、粘着質のある音が直接二人の体に響いてく。
「っ、は……はぁ」
そんなに長くてもただでさえ緊張してるゆめが疲れちゃうかなと思ったあたしは適度なところでゆめを解放する。
「はぁ……」
吐息がかかっちゃうくらいの距離は保ったまま、ゆめの顔を見つめると、
「っは、は、はあ、はぁ」
ゆめは真っ赤な顔で激しく息を整えていた。
「んふふ、息するのも忘れちゃうくらい気持ちよかった?」
「……は、は、ふ……はぁ、は。はずか、しい」
「さっきからそればっかりだね」
(……キスだけでこんなんじゃ、これからもたないんじゃないの?)
「……けど……嬉しぃ。はふ……」
そう言ってくれるゆめにあたしも自然に笑顔になる。
「ね、ゆめ……」
あたしはちょっと距離を離すと、ゆめのパジャマをつつーと撫でた。
いい? って声にする変わりに。
……………コクン。
ゆめも言葉じゃなく、小さくうなづくだけだった。
ま、とても口になんか出せてないだけかもしれないけど。
「じゃ、脱がすよ……」
あたしは、ゆめのパジャマのボタンを一つ一つはずしていくと、前をはだけさせて、お腹とシンプルな白のブラに包まれた胸をさらけ出した。
「っ……」
風邪のせいか、もしかしたら他のことでかゆめは火照って、赤みをおびている体をビクンと震わせる。
「なんだ、可愛くないなんていうからまたスポブラでもしてるのかと思ったけど、可愛いじゃん」
「…………可愛くない。……あんまり、みちゃ、……だめ」
「なんで意地になんの。可愛い、可愛い」
「……バカぁ」
恥ずかしさがきわまったのかゆめの瞳がさらに潤んできた。
(っ〜〜。可愛い)
可愛いなんて言葉じゃ表現できないほど可愛い。もっとゆめのこと愛してあげたくなっちゃう。
「そっか、ゆめはブラ見られるのが嫌なんだ。じゃ……」
「……ぁっ!?」
ゆめが甲高く鋭い声を上げる。
あたしはゆめのブラをめくりあげて、可愛いつぼみのあるなだらかな丘陵を露にした。
「やっ……」
ゆめは思わず、腕を胸の前で交差させて、せっかく可愛いおっぱいを隠す。
「ほらほら、ゆめ隠さないでよ」
「……だ、め」
「見られるの初めてなわけじゃないんだしさ。それに……」
含むようにいってぎゅっと固く防御されているゆめの胸にあたしは邪まな手を伸ばしていく。守ろうとしているとはいっても、中々完全にいったりはしない。
「ほらっ」
「…ひゃん」
あたしはゆめの腕に守られている隙間から指を侵入させるとちょっと固くも感じるけど確かに弾力を持つ乳房に到達させた。
「ぁ…ぅ……」
「触るのだって、何回もしたでしょ」
「……〜〜〜」
元から永遠に守るつもりじゃなかったはずのゆめの腕はゆっくりと開いていった。
もにゅもにゅ。
「こうして、揉んであげたことだってあるし」
「…………っ〜〜〜」
「ま……」
「……あや、ね?」
「こうしてあげるのは初めてだけどね」
あたしは一度、胸から手をどけると変わりに顔を近づいていって
パク
ゆめの、ちっちゃなつぼみに吸い付いた。
「チュぱ、はむ……れろ」
音を立てて吸って、唾をつけた舌でくすぐる。
「ひゃん…っ〜〜。はぁ」
ゆめは初めて味わう感覚に舌を突き出して、震えている。
「じゅる…、くちゃ……ちゅぅ、ちゅ」
「……は、ふ…ん、みぁ…あぁ…あ」
あたしがわざと大きな音を立てると、ゆめは小鳥がさえずるみたいな可愛い喘ぎをもらす。
「ひょう? ゆめ? どんな感じ?」
「……乳首、あつ、い……もう、食べちゃ、だめ……」
「そう? でも……」
一度顔を離すと、指でぷくって膨らんだ乳首を摘んだ。
「ここ、固くなってるよ?」
「ひゃぅ!」
「ほら、こっちも」
摘んだ二本の指で片方をこすったまま、もう片方のつぼみを舌先でツンと勃起してるのがわかるようにつついてあげる。
「……ば、か……」
「はむ。ちゅっぅぅぅ、おいしいよ、ゆめ」
「……ばか! ばかぁ……」
右胸を手で揉んで、乳首をこねくり回して。左胸は口で吸って、時に舌で弾いたり、舐めたり。
「……や、へ、ん……ふあ…あ、ん」
「んふふ、気持ちよくなってくれないの?」
きゅっと、二つの乳首を指で摘むとあおるようにゆめに上目遣いをした。
ゆめは恥ずかしさが極まってるのか、涙を流してその潤んだ瞳をあたしに向けた。
「……わ、かんない。こんな、のはじめて……」
「自分のするのとは全然違う?」
「っ!!? そ、そんなの、したこと……ない!」
確認しておくとあたしはからかっただけなの。ただ、恥ずかしがるゆめがあまりにも可愛すぎるからちょっと煽ってみただけ、なの。
なのに……
(うわ〜。地雷踏んじゃった感じ?)
「……ほ、ほんと。自慰、なんてしたこと、ない。嘘、じゃない」
この反応は、ねぇ。必死に違うっていうことが逆に、ねぇ。
ゆめがこんなにあせった声だすなんて、あたしですらほとんど聞いたことないしさ。
にしても、こんな時でもはっきり言葉には出すのがゆめらしいね。
「ふ〜ん、で、何回くらい? やっぱり、あたしでしたの?」
「……っ、して、ない」
「それで、何回?」
「………………バカ」
これで何回目かな? でも、こんなに聞いててむずかゆくなるバカもないよね。
「ちゅ」
あたしは、ゆめのほっぺに軽くキスをすると
「で、どれくらい?」
まっすぐにゆめを見て三度たずねた。
「…………………………………………………二回、だけ。これは、本当」
(っ〜〜〜〜。ゆめ)
あたしを見て答えるなんてとても出来なかったのかプイと顔を背けて、小さくいうゆめにあたしはそれだけで飛んじゃいそうなくらいの快感が突き抜けた。
ゆめが可愛いのなんて知ってたつもりだったけど、また一つゆめの可愛いところ見つけちゃった。そして、もっとゆめのことを好きになる。
「ふふ、エッチ」
「……っ〜。ばかぁ」
そんでもって、調子に乗っちゃったあたしはちょっとした、まぁ、ゆめにとってはちょっとどころじゃないいたずらを思いついた。
「ね、見せてくんない?」
「……え?」
あえて全部を言葉にしなかったせいかゆめは何を言われたかわからないという様子だった。
「ゆめのするところ」
「っ! や、やだ」
「え〜。いいじゃん。もう、ここまでしてるんだからさ、ねっ?」
「……そんなの、見られたら恥ずかしくて、死んじゃう……」
「大丈夫、今まで恥ずかしくて死んだ人はいないよ。ね、ちょっとだけでいいから」
「……私が始めてになるかもしれないから、だめ」
「ま、そういうこともあるかもね。でもまぁ、それはさておき……」
「……っ? ……っ!?」
あたしは指をゆめの唇に当てるとそこからゆっくり肌を滑らせてゆめのピンって張った乳首の頂点に持っていった。
「ゆめが見せてくれないと続き、してあげない」
くりくりとその頂点を指で撫でる。
「……んっ……ヒグ……」
(あら〜、ちょっといじめすぎちゃったかな。さすがに初めてしてるのにこれは、ひどいかもね)
「……………ほんとう、に、ちょっとだけ、だから」
(へ?)
一瞬、それに虚を突かれたけどゆめが何をいったのかはすぐに理解する。
あたしの言うとおりに【する】ってことだ。
「うん、見ててあげる」
「っ〜〜〜」
ゆめは恥ずかしさに破裂しちゃいそうながらもおずおずと手を胸に持ってきた。
「……ん、ふ…はぁ…ぁ、み、ぅ」
そして、ゆっくりと手を動かしてそのなだらかな胸を揉み始めた。
「っは…、ぅ…っく…はぁあ、う」
見られてるのがゆめの羞恥の炎に風を注ぎ込んでるのか、体を火照らせ、涙を流す。
ただ、それでも手や指を動かすのはやめない。
胸全体を撫でるように揉んだり、あたしにされたみたいに指で乳首を擦ったりその動きは静かなものだったけど、こっちとしては見てるだけでもご馳走様って言うか……あんまり動きがなくてあんまりやらしくないのに、すごく官能的でこっちがくらくらしてきちゃいそう。
「……なん、か…へ、ん。一人でする、のと…んふぅ…ちが、う…」
「見られてると感じちゃう? あたしもゆめのエッチなとこ、みてるだけでどうにかなっちゃいそうだし」
「っ。ん、ふぁ、う、ん……気持ち……いい」
それまで控えめだった手の動きが少しずつ熱を帯びてくる。ゆめの揉む手に力が入ったり、乳首を責める指がちょっとだけ早くなる。
「はぁ、ん、これ……すご、い…はぁ」
しかも、片手だけだったのが両手を胸に持っていて同じように心を高めていく。
「ふふふ、少しだけじゃなかったの? そんなに激しくして、ゆめってばエッチなんだから」
「……そんな、こと、ない……彩音が無理矢理、しろっていう、から……んはぁ」
「無理矢理なんていってないけどね、文句言いながらもやめないっていうのはどういうわけかなぁ?」
「はぁ、ふ、ばかぁ……ん」
もうゆめは自分じゃどうにもならないくらいに心と体が燃え上がってるみたい。好きな人に見られるって言うのは時にはすごいスパイスになるもの。
(にしても、ゆめっておっぱいそんなに好きなのかな。さっきからそれ以外全然してないし)
そういや貧乳だと胸が敏感になるとかいうけど本当なのかな?
「はぁ…はぁ、ん、も、ぅ…ん、おかしく、なっちゃ、う……はあぁ」
あたしがくだらない考えをしている間にもゆめは体内に吹き荒れる官能を嵐に変えていってるみたいだった。
上半身裸のメガネ美少女が顔を真っ赤にしながら、自分で胸を責めて、熱っぽい喘ぎをあげて、肌にはじんわりとしめって、所々に玉のような汗が浮かんでいる。
(このままでも絶景なんだけど……)
せっかく珍しくいじわるしてるんだからもっとしたくなっちゃうかなっと。
「ゆ〜め」
あたしは、嬉しそうにゆめを呼ぶと恥ずかしながらも激しさを帯びてきたゆめの手を取った。
「……あ、……はな、せ」
「なぁに? もっと、したいの? やだっていってたくせに」
「……ちがう」
それは多分、本音ではあるだろうけどあたしが言ったことも嘘ではなくて
「……ばかぁ、ひっく」
恥ずかしさに泣いちゃった。
「ばか、ばかぁ……ばかぁ……」
「ゆめ、ん、ちゅ……」
ぼろぼろと涙を流すゆめにあたしは、【キス】を覗いたときみたいに優しくキスをした。
「ちゅく、……ん、ゆめ。ごめんね、ゆめがあんまり可愛いからって調子乗りすぎちゃった」
「……ひぐ。別、に、彩音がバカなのは、知ってる。許さないけど…許してあげる」
「ありがと、ちゅ」
あたしはゆめの涙をぬぐうと、またゆめに口付けた。
「……ふ、ぁ……あやね……んぷ、は…ちゅる」
まだ三回目で慣れてないゆめはあたしの動きに熱くなった舌で懸命に答えようとする。その一生懸命さがあたしの官能を刺激してあたしは舌の動きを激しくさせた。
「ゆ、めぇ……はむ、ちゅぷ、じゅぷ…ちゅく、好き。ん、チュピ」
ゆめの差し出してくる舌を唇ではさんだり、あたしの舌をゆめの中に入れて暴れまわさせる。
「……ん、ぷあ…わた、しも……ん、だい、すきぃ……あやねぇ、ふ、んむぁん」
時間にしたらそんなに長い時間じゃなかったはずだけど、すっごく内容の濃い時間だった。
「はぁ……ゆめ」
「ふ、あ……あや、ね」
二人の間に光る糸を引かせてあたしたちは熱い吐息を互いに交換しながら距離を離した。
ポタ、
そのまま体を起こしたあたしの口から二人の混ざった唾液がゆめの胸に落ちる。
「は、っ…はぁ……ふ、ふふ、キスするの、どんな感じ?」
「……は、ふ……はぁ……よく、わかん、ない。でも、彩音と、するの、嬉しい。はぁ、は」
ただ、二人とも激しいキスの余韻に浸っていてそんなことに気を回す余裕もなく息を整えるのが先決だった。
「うん、あたしもゆめとキスするの嬉しいよ。それに……」
まだ肺は酸素を欲しがっていたけど、もっと別の欲求があたしに次の行動を起こさせた。
「……ふ、ぇ……ひゃ、う」
あたしはゆめの胸に落ちた雫をペロリと舐めあげると、そのまままた丘の天辺を目指していった。
実に短な登頂を終えて、すぐにあたしの舌がゆめの乳首に到達すると、舌先でくすぐるようにしてからまた吸い付く。
「……あ、ぅ…は、ん、ふああ、ん」
「こうやってゆめが感じてくれるのもすっごく嬉しい。ちゅぅ、ちゅぱ」
「…ひ、ぁ、や、ん…ば、かぁ…あ、ふ…ぅうん」
「ほらほら、ゆめは胸がいいんでしょ。さっきもここばっかしてたんだし」
「ん、…くぅ…ん、や……びり、びり、く、る…」
「こっちも、したげる」
あたしは、胸はそのままに手をもう片方の乳房に持っていって中指と薬指と固く張った乳首をはさむと一緒にマッサージするようにもみ始めた。
「ん、ちゅ、ちゅ。はむ、ぺろ……ちゅぅ」
もちろん、もう片方も口でするのはやめない。
「…あ、やねぇ…や、らめ、…へ、ん、変なの……わ、たし……」
「大丈夫、もっとあたしのこと、感じて……ちゅ」
一人でしたことがあるっていっても、たぶん最後までなんてしたことないんだと思う。そういう行為があるとは知ってて、してみるんだけどよくわからなくて、やめちゃうなんてあるもん。
だから、ゆめはその妄想が現実になっちゃった衝撃に心と体が耐え切れてないみたい。
(まぁ、それでも胸だけでこの反応はすごいよね)
こんなになってくれるともっと感じさせてあげたいって思う。
「ちゅぷ、…ちゅく、はむ…ゆめ、……ちゅぅぅう、ぺろ」
「ふぁ、ああ、あ…あっ、ひぁ、ら、めぇ…わ、たし、へん」
「ゆ、め、ほら…もっと、感じていいよ、ちゅ…じゅるる、くちゃ」
口と手、緩急をつけてあたしはそれぞれに違う刺激をゆめに送り込んでいく。
(そろそろ、こっちも、かな)
あたしが胸から下に滑らせていこうかなって思った頃だった。
「……や、しらない、…の、ふあ…ぁあ、きちゃ、う……ん、はあぁああ、ひゃぁあん!」
ゆめが、急に大きな声を上げたかと思うとビクって体をそらせた。
「っ!? ゆ、め?」
突然のそれにあたしも驚いて体を持ち上げると、くた〜っとなってるゆめを見つめる。
「…はぁ、…あ、はぁ、はっ、はぁ」
ゆめはあたしの唾液と汗に濡れた胸を激しく上下させて、真っ赤な顔で呼吸を繰り返していた。
(え、もしかして……)
「は、あ、…ふ、あ……」
「ゆ、め? イっちゃ、った?」
「……ふぇ?」
ゆめは言われて自分の身に何が起きたのか初めて気づいたみたいだった。
「……今、のが?」
「そ。胸から、じわじわ〜って何か来ちゃって頭ん中が真っ白に爆発しちゃった感じでしょ」
「……う、ん……よく、わかんない、けど」
「けど?」
「……彩音がしてくれた、から……気持ち、よかった、かも」
「かも、ってなによ、かもって。素直によかったっていいなよ」
「…………だって、よくわかんない、もん。はふ……」
「ま、いいや。ゆめがよかったんならそれで」
あたしはゆめにしただけだったっていうのに心地いい満足感に満たされて笑った。
それから時折ゆめの顔を撫でてあげながらゆめが落ち着くのを待つ。
「……彩音」
「ん? 何?」
「……今度は、彩音の、番」
「なに? してくれるの?」
「……ち、がう」
「へ? じゃあ、何?」
あたしの番とか言われたって、今度はゆめがしてくれるのかなって思うのが普通だけど、ゆめの言ってきたのはそれよりもある意味過激なことだった。
「……彩音が自分、する」
「へ!?」
「……私、だけ、見られたのなんて、不公平」
え、えっとそれはつまり……考えるまでもなく、あたしに、その……えと……オナニーしろっていってんの? ここ、で? ゆめの、前で?
「そ、そんなことできるわけないでしょ!!」
あたしは羞恥心が高まったせいで思わずそういっちゃった、けど……
「………………」
ゆめがすっごい、不快な目つきであたしをにらんできた。
(……うん、怒るよね。怒るよ、誰だって。あたしがゆめの立場でもすっごい怒ると思う)
「……彩音、最低」
「うっ……」
返す言葉もない。
(い、いや、でも、だって、そんなの、ゆめに見られながらなんて……それこそ恥ずかしすぎて死んじゃうっての)
けど、それをゆめにさせたのはまぎれもなくあたし。
(っ〜〜〜〜〜)
「も、もう。わかったよ」
あたしは、覚悟を決めると自分の服に手をかけた。けど
「ただいま〜」
玄関のドアが開くのに続いて、階下からゆめのお母さんの声が聞こえてきた。
「あ、はは……残念、でした。帰ってきちゃったね」
「……………………」
「ほ〜ら、そんなにむすっとした顔しないでよ。仕方ないでしょ」
「……バカ。……じゃあ、今度二人きりになったとき……」
「あはは、覚えててたら、ね」
「……私は忘れない」