カチャ。
金属のドアを開けて、二人の女性が暗い部屋の中に入っていく。
一人は完全に泥酔しきっており、もう一人はその女性を支えながら、つらそうにも若干嬉しそうにも歩を進めていった。
「へぇ〜、ここが舞ちゃんの部屋なんだぁ」
泥酔している痩身の女性、麻美はそういいながらふらふらと部屋の中を見回す。
一方、部屋の主、舞は部屋の電気をつけると少し前をいった麻美の背中を複雑な表情で見つめる。
(……先輩、何があったんだろう? 友だちの結婚式だっていってたのに……)
一般的な時間からいって舞が麻美とあったのは、式が終ったとはいいがたい時間だ。しかも、少しでも話を聞こうと誘った喫茶店ではとりあえず置いてあるだけと言った感じのお酒を延々と飲み続けていた。
麻美はベッドの脇で変わらず、ものめずらしそうに部屋を見つめている。
舞はその背中をじっと見つめる。
哀愁、悲哀、悲痛、哀切、沈鬱、愁嘆、憂い。
すべてがつまった、背中。
見るに耐えない背中。
舞は、その背中にひかれていき
「……先輩」
後ろから抱きしめていた。
「……っ!?」
麻美は一瞬息を飲み。
「……かえで」
ここにはいない最愛の人の名前を呟いた。
「え?」
「楓っ!!」
ボフン!
そして、すばやく振り返るとそのまま舞をベッドに押し倒していた。
「……せ、せんぱい!? どうしたん、で…っ!??」
舞の言葉などお構いなしに唇を奪う。
「んっ、んん! あむ、っつ…っ……ん、ちゅむ、はぁ……っぁあ、ぁんっ! んぅ…ん、っ…あっ」
「ちュ! ん……せ、せん……んむ、ぴちゅ、ぱ、ふぁ……い。や、やめ……ん、うぁ、あっ、くチゃ…ぁ」
舞は突然のことに麻美から逃れようとするが、完全に麻美は舞の上に覆いかぶさって押さえつけられているので頭を動かすくらいしか出来ることがない。
しかも。
「ふ、は……かえ、で……ジゅる、ぅン。クチュ、く…ちゃ、あふ……ぅ……う、はぁ……ちゅ」
口内では執拗に舌を絡ませ、唇は自分を押し付けるように、口周りにも、お構いなしに熱烈なキスの嵐が吹き荒れる。
『んぅ……あ、ぴちゅ……んっ……ちゅる…ぅ…っう…あぁ、ふむっ……ふあ、は……ぃ…ぅ』
「っ。ふっ…あ、ぁ……あ、はぁはあ」
数分後、ようやく舞は開放され激しく息を整えた。
「ふ、は……はは、ふふふ……はっ…はは」
麻美はどこか狂気的に笑うとまたキスを再開する。
「せ、せんぱい……っ」
頬に。
「や、やめ……あ…ぁ、ん」
首筋に。
「ひゃぁ…ん、だ、めぇ…」
鎖骨のくぼみに。
そこに確かに愛はある。だが、麻美のその愛は舞に伝わることはない。
麻美は一通りキスを終えると、またゆっくりと頭を上げる。顔には常に狂気の笑みが浮かんでいる。
「好きよ、愛してるわ」
「あ……」
舞は状況に頭がついていかず呆然としている。
「きゃん! あっ、や、ぁ」
当然麻美はそんなもの気にすることもなく今度は頬に口づけながら右手を舞の服のしたにもぐりこませると強引にまさぐった。
ブラも力任せにめくりあがらせ直接やわらかな乳房を揉みしだく。
「や、むね……だ、め、だめ」
「楓? どうしたの? いつものことじゃない、このくらい」
「せん……ぱ、い?」
一瞬で舞の目から涙が零れ落ちていった。
「そうね、さすがにいきなりすぎたわよね。じゃあ……」
「あ……ぁ…は」
「私が素直にしてあげるわ」
麻美にさっきまでの強引な勢いはなくなり今度はゆっくりと愛しむように頬にキスをして、胸に当ててある手も乱暴な手つきから優しさをもつものに変わる。
(ぁ、だめ……せんぱい……あぁ……だめ、だめ、です……っあ!)
先輩に何があったかはわからない。でも、何かがあって【楓さん】と……きっと別れることになった。先輩はそれを紛らわせてるんだってわかった。
(……あ……気持ち、いぃ……)
麻美の手つきは手馴れたもの、どうやって快楽を引き出すか知りつくりしてる動きで着実に舞の悦楽を引き出していく。
「ん……はぁ……は、ふぁ…ちゅぴ……ひ…ぁ」
(…ん……んん……先輩のため……ぁ…あ)
これは先輩のため、だから。あたしはこんな形で先輩とこんなことしてもうれしくないはずだから。
舞は自分の希求と矜持の間でさまよっていた。
「可愛い、可愛いわよ……ふぅ…ん」
麻美の行動はどこまでも慣れきっていて、それが舞の劣情を刺激すると共に、涙を溢れさせる原因ともなる。
(あたしのため、じゃない…あぁ…あ……ふ、ぅ…ひぅ…せんぱいの、はぅんっ! ため)
そんなこと言い訳。どんな形であれ今、ここに麻美を感じられる。それを喜び望んでいる自分がいるのだから。
「あむ、ちゅ……ぴちゃ…、くチュ……はぁはあ……んん…ちゅる……あ、む…あはぁ」
唇すぐ横の頬にあった麻美の口に舞は自分からキスをしていった。先ほどまで一方的にされたのではなく今度はこちらから積極的に。
「んあ…ぅ……くちゃ…ぁあ…は…ふ……ちゅ、ぷ…あ…ああ。っ、はぁ。やっと素直になってくれたわね」
舞、麻美にとっての楓が自分に応えてくれたと悟ると麻美は泥酔したままのトロンと潤んだ目でゆっくりとしかしどこかもどかしげで舞の衣服を取り去っていく。
舞はもう抵抗しない。
不安と期待を込めた表情で麻美のされるがままになっていた。
「ふふ、胸、少しちいさくなったんじゃない?」
一通り脱がし終わり、ショーツ一枚の姿にした舞に向かい一言。
「そ、そんなこと、ないです。ひどいですよ、せんぱい」
比べられ、しかもまけたことに舞は思わず反論してしまう。
「楓、どうしたの? 言葉遣いも変だし、せんぱいだなんて。麻美って呼んでよ」
「ぁ……はい。………………あさ、み」
唇をかみ締め、悔しさにたえながら愛しい名前を呼ぶ。
「ふふ、今日の楓は少し変ね。……ね、脱がせて」
「はい……うん。……麻美」
麻美はしおらしくベッドに座ると舞は、麻美のベッドに手をかけていく。緊張とドレスを脱がすというなれない行為に手惑いながらも、麻美は舞の手で生まれたままの姿に近づいていく。
「せんぱ、…麻美、胸、すごくきれい……」
「なに? 今さら、楓こそ……はむ」
「ひゃん! あ、あさ、み……あ…ぁ、はん…ぁ……」
麻美は舞の胸に吸い付き、乳首を舌で転ばせては甘噛みをし、もう片方は余っている手で多少強引に、しかしやはり的確に揉みしだく。
「んっあ! ……はぁあん…ふぁ…ぅん…ひゥ…あは、ぁ」
舞はさっきまでと違い、否定の声を一切だすことなく感じるままに声を漏らしていく。胸から伝わる感覚の波は全身を揺らしさらなる刺激を求めた。
「ピちゅ…くゆ……はむ…はぁ…あん。はー……あ、ほら楓も」
麻美は舞の手を取り自らの胸へと導いていく。
柔らかく、張りのある乳房。舞はそれを麻美とは違いたどたどしく攻めていった。
「はふ……んん……は…もっと、強く……楓、もっと……」
「こ、こう?」
「ん、そう、そうよ……あぁ…ん、いいわ……はあァ……んん……う…ひぃ…ひあぁ、じょうず……」
実際、舞の手つきは麻美にくらべれば児戯のようなものだったが、そんなことほとんど関係なく、誰としていると思い込んでいるかが麻美の気持ちを高めていっていた。
「……わ、私も……はむ……ぴゆ…くちゅ……クチャ…、ふあ…ん、いい…いい、……いいぃ…ぅあ…あッ」
上はキスをし、胸では互いの手で責め合う。
『あ……はぁ…あ……ん、ぁぁあっ…んっ…にゅる、くゆ……はァあぁあ……ふぁッ! ひゃっ! あ、あぁあ! ん…ん…いぃ…あっ! あぁ…ハぁぁ、ひぃ……い、ふぅ……あ、はぁ』
麻美にリードされる形で二人の動きは少しずつシンクロをしていき、まるで自分の快感が相手にまで伝わるかのように、声も意味を成さなくなり、乱れていく。
「……かえで……」
ついさっきまでしていた濃厚すぎるキスを終えると快楽によった目でお互いを見つめあった。
「……あさみ……」
頷くまでもなく二人の手は互いの胸を伝い、腹部を過ぎ、その下へゆっくりと伸びていく。
くちゅ……
と、いう水っぽい音が同時に部屋に響いた。
そこはすでにお互い十分すぎるほど熱く濡れほそっており、麻美はショーツの中に手を入れ何の迷いもなくソコに二本の指を突き入れた。
「きゃぁん!」
そこまでは急にされると思っていなかった舞は驚きの声を上げるが、麻美の指は止まらない。
くちゅ、ぐちゅ、にちゅ
「ふふ、とってもあつくて、やけどしちゃいそうな、くらい……ふふ、痛いくらいにしめてくるし」
その熱く、体の心から響く音を立てるソコは麻美の指はやはり的確に攻めそこから舞の驚きや戸惑い以上に快楽を引き出していく。
「あぁぁ、ひぃ……ぅ…ハぁ! あっぁん! あ、ぅ……あ、うひぃ…ふぁ…いぃ……きもち、い…いぃ…ぃ、ひィ、あぁぁあ……んっ!」
まるで舞の快楽の源泉となったそこにさらに麻美は余っている親指でクリトリスを擦った。
「あはぁああん! ひぁ……あ……ああ、はぁ」
「そんな声だしちゃって……ほんと、こういうとき変わるわよね。楓は」
「ひゃ…あ……あた、あたし……も、ひぅ…もう…よすぎて……もぅ! …イっ! ……あ……?」
限界が近い、と訴えた舞だったが、麻美はあっさりと指を引き抜き……テラテラと妖艶に光る指を舞に見せ付けるように口に含んだ。
「ん、ちゅ、っぱ…はぁ……。おいしい。……だめよ。一人だけ先にいくなんて、はじめはいつも一緒にっていってきたのは楓じゃない」
「あ……」
舞はその姿を物欲しげな顔を見つめた。とめられてしまったせいでなけなしの理性すらほとんど働かない。
「せ、先輩……お願い、して……して。もっと、もっと……ちゃんと」
当初思った、先輩のためなど関係なく舞は楓役を演じることを忘れ、貪欲に麻美を求めた。
そこには自分の欲望以外にはなにもない。
「じゃあ……いつもの、しよう」
「いつ、もの……?」
麻美は舞が言葉の意味を理解しかねている間に自分と舞、のショーツを脱がせ足の間に自分の片足を入れ、自らのと舞のとの距離をゼロに近づけていく。
くちゅぁ。
ゼロになると二人の音がそこから享楽の序曲の音が体に響いていった。
「んっ、ふぁ…あはァッ」
準備万端な状態になると麻美は躊躇なく、ソコを擦り合わせていく。
ちゅ、ぐちゅ! クちゃ……ぬちゅ、にゅぷっ
「ッあ! あ、あぁ……ふああ…んっ! ひぁッ! あ、……ぁあん…すごっ…ふ、はあ…あ…あっ!」
絶頂の頂の直前までのぼり詰めていた舞の声は荒く、途切れ気味で浮き上がる感覚をそのまま口にしていた。
一方麻美は
「ふ、ふふ……いぃ、いいわよ。はぁ……あ、ひ…楓、かえで……楓、かえで! かえ………で。ふは、ほら、かえで、も、うごいて…あぁ…ふゥん、一緒に、感じて……」
自分を高めることよりも相手、楓のための動きでその余剰を受け取っている麻美は、前戯の差もあって乱れながらも余裕が感じられる。
「は、…い。……ぁああ、ひぃ…あ! す、すご……いぃ……きも、ち、い。あっ、あはっ……んぁあ……はぁッ……いい、ぃい…ふっあぁ…いぃ! だめ、もう、もう……こん、ど……あっあ、こそ…も、う……」
舞には麻美のことを考える余裕などなく、ただ一心不乱に腰を動かしていた。
「だめよ、まだ。私は、まだなんだか、っら!」
口ではそういいながらも麻美は動きを止めることをしない。
「そ、っん……な……あぁ、ひぅ…あ…だ、め……がまんできな、いぃ……いか、せて……ひぁ、はああ、ひぅ……ひい…いかせて、ください…せん、ぱ、い…っあ!」
にちゅ、くちゃ……、にゅチュ…ぐちゃ…
「あぅ……あっ…あ……ぁあ」
舞の喘ぎの感覚は短くなり、もはや思考をままなっていない。激悦に耐えながら口からははしたなくよだれをたらし、麻美から伝えられる快楽の波に耐えようとするが、それももはや限界だった。
「だめ、だめだめ、もう…いく…っ…あ、ぅ……あ、あ、あぁ、いく、いくイく…あ、ひぁ…あっ! あっあ、…ぁああっあーーーっっ!!」
舞が絶頂に達し、ひときわ大きな叫びを上げた。
「かえ、で……?」
「っは、っはぁ…はぁ……は、……ひぁっ!?」
あまりにも激しすぎた余韻の中を漂いながら息を整えていた舞に麻美は容赦なく動きを再開した。
「どうして? 私より先に、なんてひどいわよ。私をおいてく、なんって! あ…ひ…んっ」
ぐちゅ! にっちゅ、ちゅく……ぬちゅ…ぐちゃ! くちゅ、くちゃ!
先ほどよりも激しく麻美は腰を動かし、擦り付けていく。楓……舞のためでなく自分のための動き。
「あっ…あ…だめ、…はっ…やめ、あぁ。こん、な、のっ! あっ…あぁ…せんぱい…あ…やめ、やめて」
すでに達していた舞はそこからくる刺激に耐えられず、苦悶の声を漏らした。だが、麻美には届かない。
「かえで……かえで……かえで、かえで……かえでいかせないから、一人でなんってぇ……かえでかえで、かえでかえで……はっ…あ…あは…かえで…ふふ……あ、っはぁ、かえでかえで、かえで! 」
狂ったようにその名前を呼びながら盲目的に動き続ける。
「あ、っあ! うそ、うそ……あた、あたし……また、っあ、ふは…あ……んぁ…ひぅ…はぁ」
快楽の山を徐々にくだっていくはずだった舞は麻美により強制的に上へ上と持ち上げられ再び喘ぎ声を漏らしていく。
「う、そ ……、あぁ…あたし……ひぅ、くる…ああぁ……また、きちゃ……う……ひゃう…はああ…っあ!」
「ふは……はぁ…楓も、いきそう、なのね…あは……私も、よ……ひぅ…あ。こんどは、一緒、に」
「はい、はい……あっあ……ふ…ぁ…ん…ああ、ひう…くる…くる……いき、そ…あっ…あ」
クチュ! ずちゅ……ちゅぷ……にちゅ! ぴゅっ! くにゅ…ぬちゃ!
いつのまにか舞も動くのを再開に卑猥な水音が響いていく。
『ひぁ…あはあッ! あ……んぁあっ、いくっ…あはっ…っいくぅ……あぁあ〜〜っっ!!』
ふれあっている場所から、快感の電撃が全身を駆け抜け二人は体を強張らせる。
『っはぁ、あ…っはふ……あ、は――、う…は、ぁ』
その余韻に体が小刻みに反応していたのもつかの間
「かえで……」
「っ!?」
くちゅ。
また、麻美が動きを始めた。
「だめ、だめです。こんど、こそ、ほんとに…あっ」
「かえで、離さない! 離さないから! 一緒に、ずっと、ずっと一緒に……ずっと、…ずっっと」
ぽ、た……
麻美の下になっていた舞の頬に暖かいものが落ちた。
塩気のある味。
涙。
麻美は泣いていた。
「かえで……かえで……ずっと、私と……かえで」
麻美とて達したばかりではすぐにできることはないはずだがそれでも麻美は舞を、いや楓を感じ、楓に自分を感じてもらうため体を動かし続けた。
「せんっ……ぱい……」
そして、泣いているのは舞も同じだった。
どれほどのときがたったかわからない。
幾度体を重ねあったか、麻美の体はついに崩れ落ち、舞の上に覆いかぶさっていた。
舞は半ば虚ろにもなりながら麻美の熱を感じ、麻美も似たような目で舞をみると
「かえで……あむ……ちゅく…くちゅ」
迷わずキスをする。
「っはぁ」
そのキスは数秒で終わり麻美は舞を抱きしめる。自分のすべてを込めて。
「かえで…いかないで、いかないで……好き…愛してる、愛してる……だから、いかないで私が幸せにするから…私と一緒に、一緒に……いかないでよ、楓」
自分が何を言っているのかすらわかっていない様子で麻美は泣きながら同じようなことを呟き続けながら意識を闇に落としていった。
「せんぱい……」
舞も涙の理由は違うが同じように涙を流しながら麻美の体を抱く。
……抱くことしか、できなかった。