「はるかさん。私たちの関係はなんでしょうか」
ある休み時間、ちょっと調子の悪かった私は保健室で休んでいて、そんな私をお見舞いに来てくれたはるかさんに言いました。
それは、私としてはあるたくらみを持っていて、その布石にするつもりだったのですが。
「……………先輩と、後輩、でしょうか」
はるかさんはあたかも私の邪な心を見抜いたかのように、私をじっと見つめた後にそういいました。
しかし、私もそのくらいではひるみません。
「そうですね。他には、何でしょうか」
「…………友達、です」
「えぇ。親友以上ですよね。で、他には?」
はるかさんが言おうとしていないのも、はるかさんが私が何を望んでいて、あえて答えていないのかもわかっているのですが、はっきりしてもらえるまでは私はやめるつもりはありません。
これからすることを思えば、そういうことをいってもらえないとしずらいですからねぇ。まぁ、強引なのはわかってますが。
「………………恋人、同士です」
と、はるかさんは私がひくつもりがないとわかってくれたのかあきらめたように私の望む言葉を言ってくれました。
「はい。そうですね。じゃあ、膝枕してください」
私ははるかさんの言葉を受けて、欲望のままにそう口にしました。
「…………はい?」
あ、呆れてますね。はるかさん、完全に呆れてます。
ですが、今のは冗談ではなく完全に心の底からの欲求なのです。
「だから、膝枕ですよ。膝枕」
「聞こえてますけど、なんでそんなことしないといけないんですか」
「やっぱり、恋人には必須事項かと思いまして」
まぁ、実は昨日読んだ漫画に影響されたんですけどね。
「……とりあえず、嫌ですって言っておきます」
「えー、何でですか。膝枕して欲しいです、膝枕―」
「子供みたいなこといわないでくださいよ」
「うぅぅ、はるかさんが冷たいです。はるかさんの冷たさが私のほうまで伝染してきて、なんだか胸が痛くなってきました。このまま死んじゃうかもしれません」
自分でしておいてなんですけど、私がこういうの言うのって反則ですよね。冗談にならない場合もありますし。
「はぁ、わかりました。じゃあ、放課後先輩の家に行きますから」
「え? ほんと、ですか!? さすが、はるかさ……」
と、言質が取れたことに浮かれそうになりましたが、私の今回の狙いはこれだけではないのでした。
膝枕をしてもらいたいのは百パーセント本音なのですが、それは手段であって目的ではないのです。
「じゃなくて、今して欲しいです。今してくれないと死んじゃいますー」
「っ、だ、だめです。ここでなんて」
「えー、何でですか?」
「が、学校でなんかだめに決まってるじゃないですか。いつ人が来るかだってわからないし」
「えー、でも、キスはしたことあるじゃないですか」
「っ! それはいつも先輩が……と、とにかくだめです」
「むぅ……」
などと、うめいてはいますが実は心の中じゃ笑ってたりします。
(ふふ、これですよ。これ)
最近、なれちゃったのかあんまりこういう姿を見せてくれなくなっちゃいましたけど、こうして恥ずかしがるはるかさんはやっぱりたまりませんよね。
キスとか、今までしたことあることなら私のあしらいかたというか対処ははるかさんの中ではあるのかもしれませんが、未経験のことにはやはり弱いみたいです。
「あーあ。はるかさんの私への気持ちってその程度なんですね。私にあんなに恥ずかしいことさせておきながら、膝枕くらいで断られちゃうなんて、あぁまた胸が苦しくなってきました」
なんて、演技バリバリで私は苦しそうなそぶりを見せて、潤ませた瞳ではるかさんを見つめます。
「あー、もう。わかりました。すればいいんですよね。すれば」
さっすがはるかさんです。私が逃がすつもりはないということをわかってくれたようで観念したようにうなづいてくれました。
はるかさんはベッドに上がると私の側に腰を下ろしてくれました。
スカートから太ももを覗かせて。
(は、はるかさんの太もも……)
そういえばこういうのなかったですからねぇ。
単純に、太ももが見えてるだけじゃなくて奥がスカートに隠されてるっていうのがまたたまらないです。
「は、はい。どうぞ」
あぁ、しかも恥ずかしがりながらもそれを表に出そうとしてないはるかさん。
押し倒したいです。
と、まぁ、それは冗談ですけど。
「では、失礼します」
私は私で興奮していたのですが表面上は冷静を装ったまま起した体をまた、倒していきます。
フニ
そんな感触と共に私の頭は天国に包まれます。
柔らかなはるかさんの感触に、はるかさんの香り。しかも、上を見上げれば、可愛い可愛いはるかさんの顔。
あぁ、たまりません。
「ど、どうですか?」
「このまま死んじゃいそうなくらい気持ちいいです〜」
どんな極上のまくらよりもいい夢が見られそうな気分です。はるかさんを恥ずかしがらせたかったという野心すらどうでも良くなって、ほんとにこのまま寝てしまいそうなくらいです。
「はぁ……最高です」
「そ、そうですか」
ただ、一方のはるかさんはなんというかあまりピンと来た感じではないですね。やはりするほうとされるほうでは大きな違いがあるみたいですね。
「えへへー、今度はるかさんにもしてあげますね」
なんていいながら私は両手をはるかさんの頬に伸ばします。
「べ、別にいいですよ。私は」
恥ずかしさでちょっとあつくなっているはるかさんのほっぺたを軽く撫で回すと、はるかさんは満更でもなさそうに口元をほころばせてくれました。
「ふふふ……」
私が幸せそうに笑って
「…………」
はるかさんも幸福一杯の顔でそんな私を受け止めてくれました。
そして、私たちはここが学校の保健室ということも忘れたように二人の世界の中を過ごすのでした。
おっと、まだ終わりではありませんよ。
いつのまにか、チャイムもなって完全に二人の時間が過ぎていくと私もはるかさんも幸福をかみ締めるように目を閉じていていました。
そんな中私は、ふと目を開けて首を傾けます。
目の前にあるのははるかさんの生足、じゃなく生ふともも。すべすべで、さらさらなはるかさんのふともも。
いえ、最初の予定じゃここまでするつもりはなかったんですよ? 本当に。
でも、こんなおいしそうなものを目の前にちらつかされたりしたら……
「ペロ」
って、したくなるのは仕方ないことですよね。
「ひゃぁあああ! な、ななにしてるんですか先輩!!」
「いえ、あんまりおいしそうだったのでつい」
「つ、ついじゃありません!! こ、こんなこと、学校でなんて……」
「あれ? 学校じゃなければいいんですか?」
私としてはこれは冗談というか、本気だったわけではないのですが。
「そ、それは……その……そういう意味、じゃ……」
なんて、はるかさんが照れるものですから
「ふふふ、はるかさん。じゃあ、今度ゆっくりしましょうね」
と、体を起した私ははるかさんのほっぺたに軽く口付けをして
(やっぱりはるかさんは世界で一番可愛いなぁ)
と、毎度のことながら思うのでした。