最近、ちょっとした悩みがあります。
それは別に、正直悩みというほどの悩みではありませんし、解決する必要もないものです。
ただ、私としては解決といいますかどうにかしたいとは考えているのです。
まぁ、そんなわけで私の愛しい愛しいはるかさんを部屋に呼んではあることをたくらんでいたりもするのです。
最近では保健室デートもあまりしなくなり、放課後に私の部屋にきてもらうことも多くなって、適当に決めてしまったタイトルとあんまり合わないようなきがするのですが、それはまぁ、別のお話です。
さしもの私もこれからすることは保健室ですと恥ずかしかったりもしますし。
ともかくも、はるかさんを私の部屋に招いてはるかさんにある提案をしました。
「ケーキ、ですか?」
私の着替えの間適当に本を眺めていたはるかさんは、私のいきなりな提案に少しピンときていない様子でした。
「えぇ。おいしいのがあるんです。よかったら一緒に食べませんか?」
好きな人と一緒にケーキを食べる。単純なことですけど、それだけに嬉しいことなんですよねぇ。
もっとも、今回主目的は別にありますが。
「はい。もちろん。でも、また急ですね」
「それはまぁ……まぁ、お気になさらずに」
そりゃ、学校で言ったりなんかしたらもしかして勘付かれちゃうこともあるかもしれませんし。まぁ、だとしても別に断られるとは思っていませんが、心の準備をされるよりは不意打ちのほうがいいですよね。色々と。
「あ、もしかして【あーん】しようとか考えてませんか」
私のそわそわを敏感に察知したのかはるかさんは、ちょっとあきれたようにそう言ってきました。
「っ!?」
正直な話それは、図星といえば図星です。
というか、これが悩みなのです。
昔のはるかさんなら【あーん】をしようと言えば、「な、なに言ってるんですか!」に、始まって、でも私が説得すれば結局は、顔を真っ赤にしながら「し、仕方ありませんね」とか言って、可愛く応じてくれたのに。
今は、
「ふぅ、しかたありませんね。なんかそんな気もしてましたし」
ほら、こんな風に全然恥ずかしがってもくれません。
私のことをわかってくれてるということで嬉しくはあるのですが、私としては昔の反応が懐かしくも、恋しくもあったりします。
しかし、人は知ってしまえばそのことを忘れられないように、一度こんな風になってしまったら以前の状態に戻るということはほぼありえないのでしょう。
「はーい。ありがとうございます。じゃ、すぐとってきちゃいますね」
私は表面上は残念がってケーキを取り行くためはるかさんに背中を向けました。
(【今は】これでいいです)
はるかさんからは見えないのをいいことににやりと笑うとそのまま部屋を出て行きました。
そう、今はいいのです。あーんをしてくれるという言質はとりましたし。
以前と同じことをしていては、だめかもしれません。でも、以前以上のことをすれば……
(ふふふふ)
私は楽しみのあまり早くも顔を緩めながらケーキを取りに行くのでした。
ケーキというのは別になんら変わったところのない普通のショートケーキです。それなりに高いもので、味もいいと評判のものではありますがそれはあまり関係のないことです。
そういうことは重要ではありませんから。
大切なのはこれをはるかさんと一緒に食べることなのです。
「あれ? あの、先輩……?」
私がはるかさんの前にケーキののったお皿を持っていくと、はるかさんは最初目を輝かせてくれましたが、すぐにそこにある異変に気が付いてくれました。
「はい? 何でしょうか、はるかさん」
私はそれに余裕を持って答えました。
「あの? フォーク、もスプーンも何も、ないんですけど」
「えぇ。持ってきてませんから」
私は笑顔でそう答えました。
「はい? え? じゃあ、食べられないじゃないですか」
ふむ、これはこれでもっともな意見ではありますよね。
でも、
「なに言ってるんですか、はるかさん」
別になければ食べられないってわけじゃありませんよね。
私は、ケーキに手を伸ばすと二本の指で生クリームをすくって
「こうすれば、食べられるじゃないですか」
はるかさんの口元に持って行きました。
「はい、あーん」
「え? いや、ちょ、っと先輩……」
ふふふ、はるかさんがちょっとあわてた感じになってくれてますね。
昔はよくある反応でしたが、ひさしぶりということもあって新鮮です。
「どうしたんですか? はるかさん、あーん」
「ちょ、ちょっとこれは………」
「えー、はるかさんさっき、【あーん】してくれるって言いましたよね?」
「そ、それは……いいました、けど……で、でもこれは」
ふふふ、これですよ。これ。やっぱりはるかさんにはこういう感じが必要だと思うんですよ。
「だめですよ。ちゃんとしてくれるって言ったんですから」
「うぅぅ……で、でもぉ……」
はるかさんは見る見る赤くなって恥ずかしがってるのがまるわかりです。はっきり言って可愛いです。ぞくぞくというか、胸がドキドキしてきちゃいますよねー。
そ、そりゃ確かに、あーんするとは言ったけど、こんなことをするなんて……でも、言っちゃったことは確かなんだし、それに先輩の指から直接食べるのも…………し、仕方ないよね。約束はしちゃったんだし、これは約束したからだし、先輩のためで私がしたいからってわけじゃないんだし……うん。
(こんなこと考えてたりするんですかねー)
そんな想像だけでも十二分に楽しめたりはするのですが……
「や、約束だから、ですよ。するって言っちゃったから、なんですからね」
(っ〜〜〜)
こんな羞恥心を満載で、顔が赤くなって、目も潤んじゃってて……想像なんかよりも何倍も破壊力がありました。
「はい、はるかさん。あーん」
私はそれをもう了承の合図と受け取ってもう一度、そういって口元にクリームまみれの指を持っていきました。
はるかさんはやっぱりまだ踏ん切りがつかないのか、ちょっとだけ躊躇しましたけど
「っ……あ、あーん」
これもまた恥ずかしそうに言って
あむっ。
私の指を食べてくれちゃいました。
「んっ…あむ…ちゅ、ぱ」
「んんっ……」
私の指がはるかさんの舌にもてあそばれます。あったかくてくすぐったくて、なによりはるかさんがしてくれているというのが私をゾクゾクさせてくれます。
ぴちゃ、チュぷ、ちゅる
「……ふふ」
はるかさんがしてくれることに私はくすぐったさもあいまって思わず、妖しい笑みを浮かべてしまいましたが、
「っはぁ……」
意外にあっさりはるかさんに終わりを告げられちゃいました。
「こ、これでいいんですよね」
でも、相変わらず顔を真っ赤にしたままはるかさんはやっぱり可愛くて、私ははるかさんの唾液まみれになった指を見つめます。
それは、てらてらと光をはなっていて、でもところどころに白いクリームが残っています。
「だめですよ。はるかさん、残したりなんかしちゃ。ちゃーんと綺麗にしてくれないと」
「なっ……」
ちょっと収まりかけていたはるかさんの高揚がまたいっきに高まるのを感じます。
あぁ、これですよ。これ。やっぱりはるかさんはこうじゃないと。
「ほら、あーんですよ。あーん」
「……わ、わかりましたってばぁ。……はむ」
「ふふふ、可愛いですよはるかさん」
はるかさんのお口に二本の指が包まれ、またぬめっとした舌が私の指を這って行きます。さっきは早く終わらせたいっていうのがあったのかおおざっぱにクリームをなめとる動きでしたが、今度は残しちゃだめというのが利いたのか丁寧な動きです。
「ん、ふ、ぅ……ん」
一本一本丹念に舌が這い回ります。かと思えば二本の指を間に割り込ませてくることもあって、それぞれ違った刺激を私にもたらせてくれます。
キスをするときとはまた別の高揚感に私の頭は思わずくらくらとしちゃいそうです。
「はぁ……ん、ちゅ……ふぅ」
しかも、はるかさんからもれるこのくぐもった声に私の理性は崩壊寸前だったりもします。
「……っは、はぁ……こ、これでいいですよね」
と、私が桃源郷をさまよっているうちにいつのまにかはるかさんは私の指を食べ終えちゃったみたいで口から指を離してました。
はるかさんの唾液まみれとなった私の指。今度は念入りにしてもらったおかげでクリームはまるでなくただはるかさんの液体でぬめっているだけです。
「……?」
それを一端はるかさんの前に見せつけてから
「はむ」
口に含んでみました。
「っ!」
あぁ……はるかさんがまた恥ずかしがっているのが見えます。
「な、何してるんですか!!?」
「何って、はるかさんのあまーい蜜を舐めてるんですよ。あむ……ん、んとってもおいしいです」
「っーー」
はるかさんの頬が染まり、恥ずかしさにブルルっと震えています。
たまりません、たまりませんよ!
はるかさんのことはもうこれ以上に無いほどに好きでしたけど、もっと好きになっちゃいました。
「も、もう終わりです!!」
「あ」
そんなことを思っているとはるかさんは私の腕を取って口から指を引き抜いてしまいました。
「き、気がすんだら、早くフォークを持ってきてください!」
はるかさんはもう限界なのかそんなこと要求をしてきますが。
「? なに言ってるんですか、はるかさん。まだ一口だけしか食べてないじゃないですか」
「っーー」
それだけではるかさんは私の言いたいことを理解したようで一瞬ひるみます。
その隙を逃す私ではありません。
私ははるかさんの手を取ると、その指でケーキをすくって
「今度は、はるかさんからしてください」
「なっ!?」
ふふふ、今日はまだまだ楽しめそうです。