(は、わ……はわわわわ)

 ベッドに入った私は、いきなり胸をドキドキとさせた。

 すでにひと肌であったまってるベッドはぬくぬくでとっても気持ちがいいけど、そんなこと考えられる余裕もないほどに私の頭は沸騰している。

 だ、だって………

「えへへー、はるかさんと一緒に寝られるなんて嬉しいです」

 せ、先輩と一緒に寝るんだもん。

「は、はい……私も、です」

 ベッドに横になった目の前に先輩の小っちゃな体がある。

 お風呂からあがってあんまり経ってないこともあって、湿った髪は妙に色っぽくて、ぽかぽかな体は触れてなくてもぬくもりが伝わってくるし、私も使わせてもらったシャンプーと同じ甘い匂いが私の胸の鼓動を高鳴らせる。

「ほら、はるかさんもっとこっちに来てくださいよー」

「わ、ひ、引っ張らないでください」

 二人で寝るにも十分大きなベッド。普通に寝るだけなら、十分に距離が取れるけど先輩はわざわざ私を自分の方に寄せてきた。

「はるかさんあったかいです」

「せ、せんぱ……」

 先輩が本当に目の前に来たかと思うといきなり抱き着いてきた。小さくて細い腕が背中に回ってきて、そ、その……胸が、先輩の顔に当たってる。

「ふかふかでいい匂いもしますし。このまま寝たら最高の夢が見られちゃいそうですね」

「こ、これじゃ眠れないですよ」

 こんな風に抱き合ってなんて、とても寝れない。そもそも、先輩なんて窒息しちゃうかもしれないし。

(そ、それに……)

「んー、そうですねぇ。はるかさん、こんなにドキドキしてますもんねー」

「ぁ……!?」

 む、胸………

 胸にて、手が……当たって、というか、掴まれて………

 い、いきなりどういうつもりだろ。む、胸に触ってきたりなんかして。そ、そりゃ先輩はそういう人だからたまには触れたりもするし、今日は一緒に入らなかったけど一緒にお風呂入ったりなんか体中洗われちゃったこともあるし。

 あ、お風呂と言えばちゃんと体洗ったかな。う、ううんもちろん洗ったけど特別念入りにとかじゃなくていつもと同じにしか……って、な、何考えてるんだろう。べ、別にいつもと同じだってちゃんとは洗ってるし全然問題ないよ。

 て、っていうか、そもそもそんなこと考える必要はなくて、い、一緒に寝るって言ってもきっとそういう意味じゃなくて……あ、あれでも今日はどうしてこっちの方、先輩の寝室の方で寝るって言ったんだろ。

 いつもは、先輩の遊び部屋の方で一緒に寝るのに。

 先輩の寝室のベッドに入るなんて二回目で……一回目は……

(い、一回目は………)

 あ、あの、時。そ、その……せ、先輩と初めての………

「………るか、さーん」

 初めての……の時。

(う、わあ……わああああ!!)

 その時のことを思い出して一気に顔が赤くなっちゃった。あ、あの時は、先輩のことを愛したいっていう気持ちでいっぱいでなんていうか勢いでしちゃったけど、あれ以降実は一回も、その……し、してない。

「おーい。聞いてますかー?」

 な、何度かそういう機会ってあったって思うけど、で、でも、あの時のことが恥ずかしすぎるのと、や、やっぱりちょっとだけ怖いっていうのもあって、そんな雰囲気な時もごまかしてきた。

 だ、だからもしかして先輩はは、はじめての場所に誘ったりなんかして………

 た、確かに付き合ってからは大分経つし、一回はしたし、お互いのことをもうなんでも知ってて、恥ずかしいことなんてないくらいだけど。で、でも……や、やっぱり恥ずかしくてたまらないし……

「うぅ……はるかさんがまた私を無視します……」

 け、けどもちろん、い、嫌なんてことは全然なくて。恥ずかしいだけで、あでも、恥ずかしいって思うのは嫌って思ってるってことなのかな。

「むぅ〜、こうなったら、いつもの、ですかねぇ」

 そ、そんなことはないよね。どんなに好きでも恥ずかしいって思うのは当たり前だし、先輩は……そういうところを見るのが好き、みたいだ………っ!!!?

「ん〜………」

(ふぇ!!??)

 驚く私の唇に柔らかくて、熱い感触。

「ふぁ…あ」

 甘い吐息が頬にあたる。

 キス……され、た?

 その事実に驚きを隠せないで、呆然と先輩を見つめる。

「あ、やっと気づいてくれました?」

(ど、どど、うしていきなりキスなんてしてきたんだろ)

 しかも、こんなベッドの上でなんて……

(や、やっぱり……)

 今日わざわざ初めての場所に誘ってきたのは……そ、そういうこと、なんだ。

「って、あれ? はるかさーん」

 そ、そうだよね。い、いつまでも子供じゃないもん。私たちは恋人なんだもん。

 それに……先輩が体のこと。

 そうだ。何度だって愛してあげなきゃ。あの一回だけじゃない。私はこれからもずっと先輩と一緒で、ずっと先輩を大好きなんだから。

「……先輩」

「あ、今度こそ気づいてくれました…って、え……」

 勝手に先輩の心を決めた私は、先輩の真意を確かめることもなく……

「大好きです」

「え、あ……んっ」

 先輩に覆いかぶさって唇を塞いでいた。

 

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