この日、先輩は学校には来ていたけれどあんまり調子がよくなくて保健室で休んでるって言う話を彩葉さんから聞いていた。
お昼休みにお弁当もって保健室に駆けつけた私は、先輩がいるであろうベッドに近づくと薄いカーテンを開ける。
「あ………」
と、そこで目にしたのは
「……すぅ……すぅ」
安らかな寝息を立てる先輩の姿だった。
「………ふふ」
彩葉さんからはたいしたことないって聞いてたけど、やっぱり心配だったからこうして何でもなさそうにお昼寝をしてるだけみたいな先輩を見ると安心する。
私はここに通っているときによく使っていたイスに腰を下ろすと先輩の幸せそうな寝顔を見つめた。
「こうしてれば先輩も可愛いのになぁ」
もちろんいつでも可愛いけど、なんていうのかな、純粋に可愛いだけで見てるだけで幸せな気分になれる。変なこといってきたりもしないし、あ、べ、別に言われたりするのが嫌なわけじゃないけど。
「…ん、ぅ……」
なんて、ちょっと先輩に悪いかななんて考えてると先輩は小さく寝返りを打った。
顔をこっちに向けてかけていた布団から肩が出る。
「あ、もう。しょうがないなぁ」
先輩ってば、意外に寝相悪いんだから。
私はちょっと身を乗り出して先輩に布団をかけなおそうとした。
「……………」
そこで先輩のある箇所に思わず目が向く。
……先輩の唇。
見慣れてるし、キスだってもう何回もしてるけど……なんでかそこから目が離せなくなった。
テストとかも近いし最近忙しくてあんまりデートとかしてないし、あ、いつもみたいに個人授業はしてもらってたけど意外にそういうときって先輩はまじめだし。
べ、別に寂しいとかじゃないけど
「い、いい、よね? 先輩は寝てるんだし」
前だったら勝手にこんなことって気がひけちゃってたけど、今なら
「……ちゅ」
私はなんのムードもなく、許可もなく、ただ衝動的に先輩の唇にキスをしちゃった。
「……ふふ」
幸せいっぱいに私は笑って先輩にお布団をかけなおそうとしたところで
「はるかさんってば、たまに大胆になりますよねー」
先輩の嬉しそうな声が聞こえて
「っーーーー」
私は恥ずかしさで顔を真っ赤にするのだった。