それは遠野……はるかさんが私の家に来てくれた日の翌日でした。
いつもどおりに保健室にいた私は、ちょっとふらふらと出かけたところで
「あーつかれたー」
体育着に身を包んだ私の愛しい人を見つけました。
どうやら、さっきの時間は体育だったようです。お友達と楽しそうにおしゃべりをしながら私には気づかないようでこっち向かってきます。
「はるかなんだか、朝から機嫌いいね」
「うん、昨日ちょっといいことあったから」
「へー、なになに?」
「さーて、なにかしらね」
「いいじゃん、教えなよー」
「だーめ、秘密―」
「けち」
楽しそう、うん楽しそうです。お邪魔しちゃいけないかなとは思うのですが、好きな人が目の前にいれば話をしたくなるのが人です。
「はるかさん、体育だったんですか? お疲れさ……んっ!?」
私は、はるかさんの前に出て軽い挨拶をしようとしたつもりですが、なぜかはるかさんに口をふさがれてしまいました。
そのまま、はるかさんのお友達と離れたところに連れて行かれてしまいます。
「っぷは、な、なにするんですかはるかさん」
「は、はるかって呼ばないでください」
…………はるかさんって変なところ多いですけど、これはわけがわかりません。昨日、そう呼んでといわれたばかりなのに。
「えー、だって昨日……」
「ふ、二人きりの時じゃないとダメなんです」
「ダメって、名前を呼ぶなんて友達でも普通じゃないですか。まぁ、今まで読んでませんでしたけど」
「だ、だって恥ずかしいじゃないですか」
……はるかさんって、本当に難しいです。こんな風にいうくせに時にははるかさんの方から恥ずかしいこと言ってきたりもするし。
「とにかくダメですかね」
「それは、わかりましたけど、いいんですか? お友達がさっきからこっち見てきてますけど」
はるかさんと呼ばれていることよりも、人前なんかで密着しているほうがよっぽど恥ずかしい気がするんですけどねぇ。
「っ〜〜」
はるかさんはそこまで気が回っていなかったようで、顔を赤くすると「気をつけてください」と言い残してお友達のところに戻っていきました。
おそらくお友達に私のことを詮索されて困りながらはるかさんは行ってしまいました。
それを見送った私は、やっぱりはるかさんは本当に可愛いなぁと、改めて思うのでした。