連休ともなれば先輩の家に泊まりに行くのが普通になってきた今日この頃。
合鍵なんかをもらっちゃうくらいで行くって連絡さえすればもう自由に入ることも少なくて、今日は夕方あたりに行くって連絡をして先輩の娯楽用の部屋を訪れた。
「せんぱーい。来ましたよー」
って明るく声をかけながら部屋に入ると
「っ! っと、はるかさんですか。びっくりしました」
先輩はテーブルの上にティッシュを広げて
(爪を、切ってる?)
爪切りもあるしそれは間違いないみたい。
(だから、びっくりしたのかな?)
爪切ってる時に急に話しかけられたりするとびっくりするしね。
「ちょっと待っててくださいね。すぐ終わりますから」
「あ、はい」
やめろなんていうわけはなくて私は先輩の隣に座ってその様子を眺めてみる。
パキン、パキンと爪を切ってちゃんとやすりで整える。
「……………」
あんまり人の爪をじっくり見ることなんてないけど先輩の指って綺麗だな。小っちゃくてとっても可愛い。
でも、なんで今わざわざ爪切ってるんだろう? 私は爪切るときは痛いのが嫌だから大体お風呂の後にするのに。
(あ。も、もしかして……)
ふと、この前先輩の部屋にあった本に書いてあったことを思い出す。
女の子同士でする時にはツメに気をつけなきゃいけないってあった。
伸びてたりささくれてたりすると痛かったり、傷つけちゃうかもしれないからって。それは言われてみれば当たり前のことなんだけど、ちゃんと意識したことはなかったから呼んだときにはなるほどって納得したりもした。
「ふぅ、終わりましたよ。はるかさん」
そ、そういえば最近してないし。わざわざ私が来る時間にしてたっていうのはそういう、こと? だ、だって普通はお風呂の後で切るもんね。雑誌とか、ネットとかでみる女の子が足を組み替えたりとか、髪にふれたら……とかそういうののつもりかな?
ああいうのくだらないとは思うけど先輩はわざとそういうことをするのかもしれないし。
それに何度かしたことはあっても、先輩は体のことがあるからやっぱり自分から言葉にするっていうのは少なくて、遠まわしに誘ってくることも多いし。つまり、これはその……やっぱりアピールって、ことなのかな?
「はるかさーん?」
あっ! きょ、今日の下着どんなのだっけ? 可愛いのにしてきたっけ? 先輩ならどんな格好でも可愛いとは言ってくれるけどそういう問題じゃなくて、見られる方としては自信のない姿を見られるなんてやだし。
あ! そ、それと私爪長い!
「あのー? はるかさん………?」
今までならそんなの気にしてなかったけど、そういうことを意識しちゃったら無視なんかはできないし。
「うぅ……いつものですね。それもはるかさんの魅力といえば魅力なのですが。話しかけてるのに無視されるってつらいんですよ」
なんて先輩が落ち込んでるのなんかもちろん気づくはずもなくて私は
「あ、あの私も爪切り借りてもいいですか」
先輩からしたら突拍子もないことを要求した。
「へ? え、えぇ、もちろんかまいません、けど……?」
?マークを浮かべる先輩の手から爪切りを受け取ると
「ちゃ、ちゃんと綺麗にしておきますからねって」
先輩からの誘い(妄想)に遠まわしな承諾をした。
そして、今回も私の誤解から先輩のことを襲っちゃう私だった。