「………ふぅ」
私は彩音に背中を向けながら、気づかれないよう小さなため息をついた。
唇に手を当ててさっきまで激しく交わした口付けのことを思う。
このくらいは同然だけれど、まったく彩音ってば節操ないわね。
隣でゆめが寝てるって言うのに。
少しははっきり言ったらどうなのかしら?
もっとも私としては、ゆめが隣で寝てるのに彩音が私を受け入れようとしてくれたというのは、満足なところだけど。
(にしても……)
今度はさっきキスをさせる理由にもなったこと光景を思い出す。
お風呂からなんか彩音の邪な声が聞こえてくるかと思って、様子を見に行ったら正直信じられなかった。
なぜかスクール水着を着ているゆめに、泡まみれになったその水着の中に手を入れる彩音。
何でそんな格好をさせていたのかと問い詰めれば、見たかったからなんて理由にもならない理由が飛び出してきた。
(ほんっと変態ね)
キャミソールとか、ベビードールとかは私もなんとなく理解できるけど、今回のこととなんてもうただの変態じゃない。
思い返してみると、彩音はそういうことすることが多かった気がする。それが主にゆめにっていうのは面白くない。
確かに、ゆめは可愛いしゆめが恥ずかしのを隠そうとしてでも、隠しきれてないところなんかは彩音じゃないけど押し倒したくなるくらいには可愛い。
でも、私はあくまで思うだけというか、勢いで一瞬思うくらいで彩音のように実際にしたりはしない。
なのに彩音は私が家にいるっていうのに、ゆめにあんなことさせて……
(……スクール水着、ね)
でも、彩音がそういうのを好きっていうのなら……
(……っ! ガラじゃないわよ)
一瞬、そういう自分を想像してしまった私はあまりにもバカらしすぎて想像の自分を否定する。
ガラじゃない。似合わないわよ。そういうのは私には。
水着に限らず、そういう彩音が好きそうなのは、ゆめのほうが似合う。
(けど、もし……私が着たら、どう思うのかしら?)
可愛いって、言ってくれるかしら? それともあきれられちゃうのかしら。
(って、だから……私には……)
でも、もし可愛いって言ってくれるなら……
(………っだから!!)
と、私はこんな風に何度も同じような思考をしながら、どれだけ好きなのかと恥ずかしながらも少し自分にあきれながら夜をすごしたのだった。