「ちゅ……ん、ちゅ、ぱ」

 キスをする。

「あ、あの……はるか、さん…んっ」

「ふ、ぅ……ん、ちゅぅぅ……ぺろ」

 時折吸ったり、舐めたりしながら私は私の精一杯の気持ちを持って先輩の傷を愛撫していた。

「はる、か、さん……あ…っ…ん」

 私に腕を掴まれて満足に身動きも取れない先輩は、か細い声を出しながら震えていた。

「……ん、好き、好きです。先輩。ちゅ……」

 私は先輩の手を握ったまま、キスをしたまま、体重をかけていってある場所へと向かっていった。

「ん、ん……はるか、さ……っ!!?

 ボフン!

 体を襲う柔らかな衝撃。ギシっと音を立て沈んだベッドがすぐに浮き上がる。

「先輩!

 二人の重みで皺のついた白いベッドシーツの上に先輩の小さな体が乗って、私はその体に覆いかぶさっていた。

「は、はるかさん……」

 先輩は顔を真っ赤にしたまま、潤んだ瞳で私のことを見つめていた。

 ドキドキ、ドキドキ。

 私は今胸に訪れた衝動に突き動かされている。少しでも止まったら多分もう前には進めない。

 ドクン、ドクン。

 だから、こんなにうるさく胸の鼓動が聞こえても、自分の体を支える腕が震えてても、

「……ん」

 私は自分の気持ちに、想いにしたがっていった。

「く、ちゅ……ちゅ……ん、ちゅぷ、くちゅ」

 こんな、何だ。キスって、先輩のお口の中って。

 あったかくて、ちょっとぬるってして、熱くて……甘い。

 初めての大人な、キス。

「ふ、は……」

 一方的な口付けをした私はもう胸が爆発しちゃいそうなくらいで、顔も心も全部真っ赤になって

「はぁ…あ…は、ぁ……ん、はるか、さん」

 いきなりキスをされた先輩はちょっと苦しそうに息を整えながら、ぽーっとした顔で私を見ていた。

「あ……」

 そうして私はまた先輩が一番、反応するところに触れて、数秒だけ目を閉じる。

「ど、ど、どうしたんですか? はるか、さん。ら、らしくない、です、よ? え、っと……」

 驚いてて、ちょっとだけ不安そうな先輩の言葉は聞こえてはいても、私の頭には届かなくて私は自分の中に集中していた。

(先輩の傷、先輩の体……)

 否定するのもわかる気がするし、怖いのもわかるつもり。

 でも、私は先輩が好きだもん。こんな、こんなことで先輩に悲しんでもらいたくないもん。

「先輩……私、先輩が好きです」

 万感の想いを込めた、単純な言葉。

「はるかさん……」

「全部、好きです。可愛いところも、ちっちゃいところも、ちょっといじわるなところも、私の前で平気でゲームとかしちゃうのも、時々変なこといったりしてくるもの、先輩が嫌だって思う先輩も……全部、全部大好きです。愛し、たいんです。先輩が好きだから、大好きだから、先輩に自分を嫌いになってもらいたくない。自分で自分のことを気持ち悪いなんて思って欲しくないんです」

 自分で自分を否定すること。

 それってすごく悲しいことだって思う。しちゃいけないことだって思う。

「こんなの何にもならないかもしれないけれど、こんなんじゃ足りないかもしれないけど……先輩をあ、愛して、あげたいんです。先輩に変なところなんて、気持ち悪いところなんて一つもないって私が思い知らせてあげるんから」

 目が潤んでるのはわかったけど私は強気な目でそう訴えかけた。

「はるかさん……」

 あ、先輩泣いちゃいそう。でも、これは悲しいとか、恥ずかしいからとかじゃなくて、

「きゃっ!!?

 さっきベッドに落ちたときとは違う衝撃。

 やわらかくてあったかな肌に、甘い匂い。

 背中に回されたちっちゃな腕。

 そして、耳元で優しく囁かれる、先輩の曇りのない声。

「……優しく、してくださいね」

 

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