「さぁ〜てと、どうしようかな〜」 とんでもない捨て台詞を残して彩音の部屋から出てきたひかりは実家までの道のりの途中で空を見上げてそうもらす。 それからここからでは見えない彩音の家の方角を見つめては、彩音の家であったことを思い出す。 (ん〜、相変わらず仲良しさんなのはよかったけど……) 彩音にべったりだった最愛の妹を思い出すひかりは微笑みながらも、心によこしまなものを宿す。 (それにしても久しぶりのゆめちゃん……可愛かったなぁ) 照れた(と思い込んでいる)ゆめの姿を思い出せば、すぐに姉の顔から素に戻ってにやけはじめ (でも……エッチまでしたことあるなんてほんと彩音ちゃんてばずるいんだから) 今度はいじけたように口元をとがらせる。 (あ〜あ、せっかくゆめちゃんとお風呂入ったり、一緒に寝たりいろいろしようと思ってたのに……) やっと歩き出したひかりだが頭の中は相変わらずゆめのことでいっぱいになっている。 (ゆめちゃんのベッドで寝るのは、当然として……) そして、またすぐに足を止めて妹への妄愛に走る。 (……ほんとに下着漁っちゃおうかな〜。お姉ちゃんとしては、妹の成長具合も気になるところだし、もしかしたら彩音ちゃんのための勝負下着とかあったりするかもだし……) 「ふふ、……ふふふ」 すでに頭の中は色とりどりの下着を身に着けたゆめの姿があって、無意識に笑いをこぼす。 (ゆめちゃんって、いつものシンプルなのもいいけど、可愛いものとかもすごく似合うし、大人っぽいのは体とのアンバランスさがたまらないし……あ、キャミソールとかゆめちゃんに似合いそうだよね〜。それに、ベビードールとか……あぁん! たまんない) 「ひかり……ちゃん……?」 往来のど真ん中で妄想に入ってしまったひかりの耳に、女の子のか細い声が聞こえてくる。 「?」 頭の九十九パーセントをゆめのことで埋め尽くしながらも残りの一パーセントで声のほうを向いたひかりは声のほうを見る。 そこにいたのはひかりより大分背の高い女性。黒のセーラブラウスに、さらに濃い色のスカートという姿でひかりのことを情熱的に見つめていた。 「あ、日影」 ひかりはそう名を呼ぶと、女性、日影は嬉しそうにひかりのそばまできて 「かえって、来てたんだ……」 か細い声ながらも熱のこもった声でそう言葉をかける。 「うん。日影には明日会いに行こうと思ってたの」 「そう、なんだ……」 「ふふ、日影」 「あっ……」 ひかりもゆめに見せるのとはまた別の笑顔をすると日影のほおを優しくなでる。 「相変わらずすべすべね」 平均より身長の高い日影の頬を、小学生とは言わないまでも明らかに平均よりも背の低いひかりがそうするのは、ひどくアンバランスな感じある。 「あ、ん……あ、ありがとう。ひかりちゃんにそういってもらうのが一番、嬉しい……」 しかし、日影の気の弱さとひかりの自信にあふれる態度がそれほどの違和感を感じさせなかった。 「それに……」 「あっ……」 ペロ 背伸びしたひかりの舌が日影の頬をそっとくすぐる。 「日影の味、ひさしぶり」 彩音やゆめの前で見せた姿とはまるで違う妖艶な表情で微笑むひかり。 「ひ、ひかりちゃん……」 頬を撫でられるのまでは単純に嬉しそうにしていただけの日影は、頬をなめられたことよりもその表情に体をゾクゾクとさせた。 「きょ、今日は、こんなところで、どうし、たの……?」 その恥ずかしさから逃れるためかあからさまに話題をそらす日影。 「それがさ、ゆめちゃんに会いに行ってたんだけど、振られちゃってさ〜。もう悲しくてどうしようかなって思ってたの」 「そう……なんだ」 日影はひかりとは長い。だから、ひかりが妹であるゆめのことを溺愛している知っている。 それは、日影には悔しいことで…… 「あ、あの、ひかり、ちゃん」 「ん?」 「よ、よかったら、私の部屋、こない?」 勇気を振り絞ってそう伝えた。 「いいの?」 それにひかりは何か含みのある視線で答える。 「う、うん……いつも、みたいに……可愛がって、ほしい、な……」 耳まで真っ赤にしながらも日影はひかりにそう訴えかけ 「もちろん。い〜〜〜っぱい、可愛がってあげる」 言いながらひかりは日影に指を絡めていき、二人で日影の部屋に向かっていった。