付き合い始めた時からいつかっていうのはなんとなく考えてた。

 陽菜には色々そういう本を薦められたりしたし、いつかっていうのがいつなのかはわからないし、意識もしたことはないけど、いつか自然とそういうことをするのかなって抽象的には考えていた。

 付き合い始めてからも、最初は手をつなぐのも恥ずかしくて、キスなんて本当の意味で付き合えた時まで半年以上もかかってる。

 その後もやっぱりキスなんて恥ずかしいままで、せつなさんからしてくることはあっても私からなんて全然なかった。

 せつなさんとは一緒にいられるだけで嬉しくてそれだけで満足できちゃう自分がいた。

 だけど、それは唐突にやってきた。

 

 

 それはせつなさんと暮らし始めてからそろそろ一年が過ぎようとしていた頃。

 初めての大学の春休み。

 忙しかった一年も終わりを迎えて長期の休みをせつなさんと日々を過ごすだけの幸せな時間。

 春休みのはじめに一大イベントだったせつなさんの誕生日を終えて、本当にせつなさんとただ普通の時間を過ごすだけだったはずのあの日。

「? せつなさん、それって……?」

 私の用意した夜ご飯を終えて、時計も九時を回ってそろそろお風呂にでも入ろうかなとい準備をしていると、せつなさんがテーブルの上に見慣れないものを置いているのに気づいた。

「ん? あぁ、コレ? お酒」

「それは……わかります、けど」

 せつなさんがテーブルに置いたのはコンビニなんかで見かける缶に入ったお酒? ビールとかじゃなくて、こういうのチューハイっていうんだっけ? それが二缶テーブルに置かれてる。

「せっかく飲める年齢になったんだから一回くらいは飲んでみようかなって思って買ってきたの」

「ふーん」

 正直言って、あんまり興味ない。お酒なんてまだ飲めないし、そもそも二十歳になっても飲みたいなんて思ってもないから。

「まぁ、いいですけど。私はお風呂入ってくるんで飲んだらちゃんと片づけておいてくださいね」

 だからせつなさんがお酒を飲むということに対しても特別な感想を持つことなくそれだけを伝えてお風呂へと向かって言った。

 この後何が待っているかも知らずに。

 

 

後日談3-2

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