「ん、ふぁ……あぁ」

 声が、漏れる。

「あ…ぅ、ん……ふぁ…っあんっ……」

 頭の中が痺れて思考がおぼつかない。

「っ……ぁむ…あちゅ……じゅちゅ……ちゅう…あはぁ、のぞみ! ……っのぞ、み」

「えりち…あ……ちゅ……ぢゅ、ふあ……あはぁ…ああっっ…ああ、えりち……ん」

 激しく交わらせた唇から喘ぎと唾液が零れ肌を濡らしいく。

「っはぁ、…はっ……希…」

「んっ…ふ、ぁ、えりち…」

 ベッドで体を重ね合う私たち。シーツはくしゃくしゃになり、汗やその他の体液で湿りを帯びている。

『んんっ……ふ…うっ。んんん……』

 何度も何度も唇を合わせ、体を愛撫し、悦楽の極致に意識を持って行かれる。

(さい……っこう)

 舌を出し合ってのキスをしながら私はそう思う。

 ここ最近は回数こそ多くはなっていたけれど、これほどの充足感はなかった。

 私も希も互いに不安を抱えたままで、体が一時的に興奮しても心は満たされていなかった。

 不安を紛らわせるために相手を求めていただけ。

 心が重ならないセックスは虚しさをもたらすだけで、だからこそ私たちは過ちを犯そうとしてしまったのかもしれない。

 けど今は

「ちゅっ……じゅる。くちゅ、れるっ……っハァ、ッ」

 触れた希の肌、あわせる唇、絡め合う舌、熱く湿った秘所。

 そのすべてが私たちを満たしてくれる。

(忘れていたわ)

 希の肌はこんなにも暖かいということを、こんなにも気持ちいいものだということを。

 重なった心で肌を重ねる快感。その幸せを。

「えりち…っ。もっと……もっと、して……」

「えぇ…もちろんよ希」

 背中から腕を回して引き寄せながら胸を愛撫し、もう片方の手を下腹部の濡れた花びらへと持っていく。

 希は正面から私の胸に手を伸ばし、同じように空いた手を体の下へと滑らせていく。

「っ…あん、ふぁ……っん、んっ……ハァ、ッ! はぁあ、んっぁああ」

 激しく舌を絡め合い、胸を刺激し、ぬちゅぬちゅと膣をかき回して愛液で手を濡らす。

 体中がふわふわと浮き上がりそうな感覚の中、それでも次なる刺激を求めて体勢を変えると希の顔の前に汁を滴らせる秘裂をさらした。

「んっっ……ぢゅる…ぅ…ちゅむぅ…んむぅ」

 互いに迷わずに口づけあふれ出る体液を吸いながら膣へと舌を突き入れかき回す。

「ふあ、ぁ、のぞみの、舌……柔らかくて……んっ…もっと、舐めて……もっと、全部……奥までんっ! …あぁあっ」

「ぁ、あぁ、うちも、気持ち……い。えりちになめられるところが全部……気持ちいい! ああぁ、っああ」

 頭の中が真っ白になっていく、愛する相手のこと以外考えられなくなっていく。体中が痺れるような甘い快楽に満たされる。

 それでもまだ足りなくて

「のぞみ、もっと……!」

 私は体を起こすと、希の足を開いてそこに自らの足を割り込ませ秘所と秘所をこすりあわせる。

 ぐちゅ、にゅぐっ。ぬちゃぐしゅ……

「あぁああ、あっつい……とけ、ちゃいそ……希…もっ、っと動いて……」

「あぁあ、……あ……す、ごい……ぁあ、も、もっと欲しい……えり、ち……。っあぁああん」

 腰が止まらない。希のと私のがこすれ合うたびに今まで感じたことのないような快感が体を揺らし、甲高い声でそれを表現する。

『あぁああ、っあぁ、ぁ! んぁ……、あはぁぁあん』

 あられもなく乱れる。すべてをさらけ出して私たちはお互いを求めて、それがお互いを高めていき

「え、りち……うち…も、う」

「え、えぇ……のぞみ、一緒に、ね」

「っー。えり、ち…ぁあっ…ぁああ」

 真っ白になる。希で頭の中、ううん心まですべてが埋め尽くされる。その感じがこれ以上ないほどに心地よくて私たちは手さぐりに相手の手を求めて指を絡めぎゅっと繋ぐと、その瞬間。

「っあ……ぅ、っあっ……」

 快楽が爆発した。

『ふぁああ、ぁああぁつ…あぁあっん!!』

 心を重ねて迎える絶頂。

「あっ……は、ぁ……」

 満たされていく心が虚脱感の中に暖かな幸せをくれた。

「のぞみ……」

「えりち……」

 ほとんど無意識体を起こすと抱き合って、軽く口づけを交わす。

「愛しているわ、希」

「……うん。知っとる」

 朱に染まった頬と潤む瞳。同じ表情で見つめあい、愛を語る。

 そして

「んっ……」

 深い口づけ。

 大好きな人の温もりを感じあいながら、つぶれるほどに唇を押し付け合って舌で相手の中をかき回す。

(……なんて、満たされているのかしら)

 これまで希と肌を重ねたどの瞬間よりも私たちの心は満たされている。幸せを感じている。

 それでも……まだまだ足りなくて。もっともっと希を感じたくて

「……っはぁ。もう一回、しましょ」

 笑顔でそう言っていた。

 

 

 それから私たちは幾度となく気を遣りながら相手を求め続けた。

 体力の限界が来たのはもう空が白みかけている頃。

「んっ……えりち……」

 もはやシーツの体をなさなくなったベッドで眠る希の寝顔を見つめる。それだけでに多幸感に包まれる。

 もし、あのまま死を選んでいたのならこの幸せは永遠に失われていた。そうならなかったというだけでも死を選ばなかった意味がある。

「……希」

 私は希の体を抱きしめる。

「必ず幸せにするわ」

 本音を言えば不安がないわけじゃない。私たちが選んだ道が本当に幸せへと通じているのかはわからないのだから。

 でも私はこの道を選んだことを、希に選ばせたことを後悔なんてさせない。

 これからもこうして二人で幸せを作っていくの。

 健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも貴女と一緒に歩いていく。

 どんな時もずっと。

 

 繋いだ手を離さずに、幸せに通じる道を。

 

 貴女と二人、どこまでも。

 

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