ガタンガタンと心地いい振動が体に響く。
窓の外には穏やかな景色と雄大な川。
春の陽気は心地よく油断をしたら眠ってしまいそうだけど、私の心はそんな睡魔の入り込む余地なんてないほどに高鳴っている。
だって、今日から
(せつなさんと一緒に住むんだから)
今日は待ちに待った引っ越しの日。せつなさんと新しい生活が始まる日。
一緒に住むということが決まったその日から私はこの日を待っていた。
だって大好きな、本当に大好きな人との一緒の生活。天原にいたころだって一緒には暮らしてはいたけど、これまでの寮での共同生活とは次元が違う。
本当におはようからおやすみまでずっと同じ部屋で、全部を二人で支え合いながら過ごす生活。
楽しみだけじゃなくて不安だってあるのは否定しきれないけど、それでもせつなさんと一緒にいられる喜びは何よりも勝る。
「ふふ」
自然と口元が笑みを浮かべてしまう。
もうすぐ会えるせつなさんの顔を思い浮かべていると、ケータイにせつなさんから駅に迎えにきた旨の連絡が来てさらに胸を暖める。
会う前からそんな風に幸せに浸る私。
陽菜にでも見られたらからかわれそうだとなんてことをついでのように思っていると、
ガタンと音と立てて電車が止まる。
以前ここに来た時と同じキャリーバッグを引きながら電車を降り、人のまばらな駅の改札を抜けると。
「渚」
駅舎に響く、凜とした声。
「せつなさん」
私も同じように喜色めいた声を出してせつなさんに早足に向かっていった。
「久しぶりね、渚」
「一週間前に旅行にいったばっかりじゃないですか」
「私は一日でも渚に会えなかったら寂しいの。だから、久しぶりに感じちゃうのよ」
「っ……なんだか、逆にうさんくさいですよ。それ」
「あら。そう? でも本当よ」
なんて、せつなさんは少しはしゃいでいるようだった。
普通ならこんなこと言う人じゃないけど、でも私と同じようにこの日を待っててくれたからこそこんな風にはしゃいじゃってるんだろう。
それが嬉しくて私も同じように喜びを感じる。
「……私も、会えて嬉しいです」
だから私も素直に自分の気持ちを告げた。
「……えぇ」
せつなさんは嬉しそうに頷いたあと、手を私へと伸ばし
「それじゃあ行きましょうか」
私は、はいと頷くとともにその手をとって歩き出すのだった。