せつなさんが先にお風呂に入っているころ。
「う、ぅーん……」
私はクローゼットの前で唸り声をあげながら佇んでいた。
手にはさる上下セットの肌着。水色にフリルのついた嗜好性の強いもの。昼間、せつなさんが手にしていたもの。
渚がつけてるの見たかったのに。
脳裏に浮かぶのはその言葉。
(あ、あれはどう意味だったの?)
その場の流れで口にしたに過ぎなかった? それとも……本音?
せつなさんは私がこれを身に着けているところを見たいと思っているの?
こ、こんな……
陽菜にそそのかされて買ったものの、自分でも恥ずかしくてほとんど着れていない。
(可愛い、とは思っているけれど)
ただ、私は自分が可愛くない人間だというものわかっている。こんな甘いのなんてきっと似合わない。
「でも、せつなさんが見たいのなら……」
私じゃなくてせつなさんのためにならたまにくらいつけても……
心の天秤が自分の都合よく傾く。でも、片方に比重がかかるとバランスを取ろうとでも思っているのか余計な考えも生まれる。
(けど、つけたとしてどうやって見せるの?)
わざわざ下着姿でせつなさんに見せて似合うかとでも聞くの?
「っ!!」
む、無理。一瞬だけそんな光景を想像したけれど、単純に恥ずかしいというよりなんというか……その……まるで、さ、誘ってるような感じもして心が追い付かない。
「はぁ…やっぱりやめておこ」
結局勇気の出ない私はそう思いながらも
(……いつか、自然と見せられて。それで……)
「可愛いって言ってくれたらいいな」
そんな未来を楽しみにするのだった。