人っていうのは一緒にいると今まで見えなかった部分が見えたりする。それはもちろん一緒にいる時間が長ければ長いほどそういうものが見える機会は増えていくもの。

 まして、同じ家で同じ部屋で過ごしてればなおさら。

 それで最近知ったのは美咲が意外にやきもち妬きってこと。

 昔からあたしの見えないところであたしに不満を持ったり、ヤキモチ妬いてくるのは知ってたけど最近はあたしの前だろうとお構いなしになってきたような気がする。

 たとえばこの前だって。

 

 

 まっくらな部屋の中あたしはなかなか寝付けずぼーっと天井を見つめている。

 今日はゆめが泊まりに来てて、今この部屋には三人で寝てる。

 あたしは当然ベッドで、すぐ脇に美咲が布団で寝ている。んで、お客さんのゆめはまた美咲の隣に布団で寝ている。

 二人とももう寝てるみたいだけど、あたしは寝付けずさっきから天井かもしくは下で寝てる二人を見つめる。

 んもー、二人ともまだ起きててくれたっていいのに。

 こんな風にゆめが泊まるときはいつも遅くまで話をする。なのに今日は二人とももう寝ちゃって。

(あーあ、退屈)

 こっちはなんか目がさえちゃってるってのに。

 モゾ。

「ん……?」

 天井を見つめるあたしはなにやら物音がしたのでそっちに目を向けてると

「ゆめ……?」

 ゆめがふらふらっと立ち上がってドアのほうに歩いていった。

 トイレ、かな?

 どうやら思ったとおりみたいでしばらくするとトイレの音がして、ぺたぺたと足音を立ててまたドアを開ける音がした。

(やっぱ、トイレか)

 あたしが一人で納得していると、ゆめは……

「んぅ……」

「ちょ!?

 寝ぼけているのかあたしのベッドに入ってきた。

「うゅ……」

 もぞもぞとベッドの中央に、あたしのそばに寄ってきた。

 すぐに幸せそうな顔ですぅすぅと寝息を

「ちょ、こら」

 たてさせるかっての。

 あたしはゆめのほっぺをぺちぺちと軽くたたく。

「……んぅ」

「起きろって、こら」

「……ん、あ…んう?」

 さすがにまだ寝入ってなかったゆめは……異様に不機嫌そうな目であたしを見てきた。

「……? なんで、彩音が私のベッドにいるの?」

「逆だっての。あんたがあたしのベッドにいるの」

「…………そんなこと、ない」

「いや、んなこと言われても。つか、あたしの部屋なんだからあんたがここにいたらおかしいっしょ?」

「…………眠い」

「って、こら」

 わざとなのか、本当にそうなのか知んないけどゆめは不機嫌そうにそう答えると目を瞑った。

 当然あたしは承服できるはずもないからゆめのほっぺをまた叩くけど。

「……うるさい」

「……ぐっ」

 思わぬ反撃を受けた。

 ……だめだこりゃ。起こすとまたうるさいだろうし、しょうがないこのままにしてあげよう。ちょっと窮屈だけど二人くらいでなら大丈夫だし。

 しょうがないからゆめをそのままにしてまたぼけっと天井を見つめる。

 それからまた数分だか十分だかは知んないけど時間がすぎる。

「……ん?」

 いつのまにかゆめの体温が近くに感じられないのを不思議に思ったあたしはゆめに目を向けてみる。

「っ! おっと」

 そしたらゆめが気づけばベッドから落ちそうな位置にまで転がっていてあたしは落ちないようゆめを手で引き寄せる。

 美咲がすぐ下にいるんだから落ちたら怪我しちゃうかもしれないでしょが。

 ゆめをすぐ横にまで引き寄せるとそれであたしはとりあえず一安心。

 ったく、ゆめ普段は寝相悪くないくせにたまにこうなんだよね。でもまぁ、ここから落ちるようなことはさすがに……

「って、ちょっと」

 あたしはせっかく落ち着けたと思ったのにゆめはごろごろと転がってまたベッドの端にまで来てしまった。

「ん、もうっ」

 落とすわけにはいかないのであたしはまたゆめを引き寄せる。

 のに、

「……なんであたしから逃げようとすんの」

 いや、暑苦しいからなのかも知れないけどさ。理由はどうあれとにかくゆめを落とすと落ちるゆめだけじゃなくて美咲も危ないんだから落とすわけにはいかない。

「しゃーないなぁ」

 あたしはゆめをまたあたしのほうに引き寄せると今度はゆめが転がれないようにゆめの体に手を伸ばすと抱くようにした。

 ま、これで大丈夫っしょ。

 暑いけど、まぁゆめのこの腑抜けた寝顔を間近で見るのも面白いか。

 丁度眠れないんだしゆめを観察するのもおもしろいや。

 だからね、こうしてゆめを抱いて寝てたのはぜんぜんあたしのためじゃないし、っていうかむしろ美咲とゆめ、とくに美咲が危ないと思ったからなわけであたしは美咲のためにこうしたってわけ。

 なのに……

 

 

「……やね……ちょっと! あやね!?

 はっきりしない頭に美咲の明らかに怒ったような声が聞こえてくる。

「んぅ……?」

 目を開けるとぼやけた視界の中、声から推測できた美咲の……激怒した顔が映る。

「なに、よ……もう、朝っぱらから」

「なんで二人で寝てるのよ!?

 あたしは美咲のためにしたのに……なんでこうなんのよーーー!?

 

 

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