「ふぅ、いくらなんでもふざけすぎよ? 八重」
「むぅ〜、だってぇ〜、みやちゃんがあんまりかまってくれないんだも〜ん」
「だからって、やりすぎ。私もイメージってのがあるの。立場上生徒になめられるわけにはいかないの、わかるでしょ?」
「だって〜」
「だってじゃない」
「……クリスマスも我慢して、今日は一緒に年越しできるっておもったのに……宮古が会いにだってきてくれないんだもの……寂しいわよ」
「八重……」
「宮古が責任感あって、そういう所も大好きだけど、わたしはやっぱり寂しいの……」
「……八重。……ごめん」
「じゃあ……ちゅうして」
「ふぅ、わかった」
「みやちゃん……ちゅ」
「んっ……ふ、ちゅっ」
「くちゅ、ちゅっぱ……はぁ」
「んは、ぁ。はい、おしまい」
「え〜。もっと〜」
「駄目。埋め合わせはちゃんとするから、今日はもうおしまい」
「約束、だからね」
「えぇ。じゃ、戻るわよ。ん、八重?」
「だ〜め。なにもしてくれなくていいから、もう少し二人でいよ。若い子の邪魔しちゃ駄目」
「?? なに言って?」
「いいから。もう少しだけ。ねっ?」
「? わかったわよ」
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「ん〜……だる……」
新年だっていうのにやるせない虚脱感を抱えながら私は目を覚ました。
やっぱり、なれた自分のベッドじゃないとなんだか妙な疲れが体に残る。
「っと、美優子はまだ寝てる、か」
上半身だけ起こして布団の上に座って軽く部屋を見回すと、隣でやけにこっちによってる美優子の妙に幸せそうな寝顔が見えて、他に人影はない。宮古さんと八重さんはもう起きてて部屋にはいないらしい。
「にしても、美優子はなんだか腑抜けた顔してるね。どんな夢みてるのかな、っと」
にへっと、だらしがないともいえるかな?
「…………」
体がだるさに支配されてて動く気が起きない。一年の計は元旦にありとかいうけど、いきなりだらけた始まりだ。
「…んー、トイレ」
しばらく呆けたあと、誰に言うわけでもなく呟いて私は部屋を出て行った。
お手洗いに向かうために廊下を歩いていたら……
(げ……)
あんまり顔を会わせたくない人物に出くわして思わず足を止めた。
「あ、あけましておめでとう。涼香ちゃん」
「お、おめでとうございます、八重さん」
とりあえず、新年の挨拶を済ませるけど、内心どうしようかな〜と不安に思う。
昨日のイメージで何されるかわかんないっていうのが定着しちゃってるし、一晩立ったんだから酔いは醒めてるとは思うけどでもと思ってしまう。
「涼香ちゃん」
八重さんが静かに私の名前を呼んで近づいてくる。
うー、また何かしてくるのかな……この人の場合断りづらいし……どうしよう。
「昨日はごめんなさいね」
けど、予想に関してふかぶかと頭を下げられた。
「え、あ、いえ……」
「私、お酒飲むと性格変わっちゃうみたいで。本当、ごめんなさい。よくは覚えていないのだけど、何か失礼なことしなかった? 恥ずかしい話だけど、全然自覚なくて……本当、ごめんね」
「あ、えっと……いいえ! 全然、そんな、謝られるようなこと……」
されまくりだけど……こんな風にされたらとてもいえない。それに、一応美優子とちょっとだけ距離が縮まった気も……するようなしないようなだし。
「そう、よかった。あ、朝ごはん用意するからそろそろ美優子ちゃんを起こしてね」
「は、はい」
なんだか、昨日とは全然違ってすごく優雅な雰囲気。漫画とかに出てくるお嬢様みたいな……惚れ惚れしちゃうくらい。
「じゃあ、私は宮古のところにいってくるから」
「あ、はい」
そういって八重さんは私の横を通り過ぎていったけど、少しすると振り向いて。
「ふふ、涼香ちゃん、優しいのね」
天使みたいに私に笑いかけた。
「え………?」
「それじゃ」
今度こそ、去っていく。気品を漂わせた様子で。
「………………」
昨日の電話のときもきつねに騙されたって思ったけど……また別の理由で同じように思う。
本当に同じ人なのかな〜と、若干疑問持ちつつ私は当初の目的に向かっていった。
今までのおまけの中でも一番の蛇足ですねw 本当は、とにかく八重さんが上品に話して【誰あれ?】って感じにさせたかったんですけど、どうもそういう雰囲気にもならず、とりあえず実際は八重さんが変な人じゃないんだよ程度に止まってしまいましたね。おまけと銘をうっている以上そこまで気にすることもないのかもなのですが……