……どこから話せばいいのかしらね。

 ……そうね、私も帰国子女なのは知ってるわよね。

 えぇ、鈴ちゃんは確か日本生まれだったのかしら? 私は生まれも外国。こっちに来たのはこの学校に入学する時で、それまでずっと学校は向こう寮暮らしだったの。

 その寮は少し変わっていてね、下は小学生から上は私たちくらいの年の子たちが数百人単位で暮らしていて自然と上の子たちが下の子たちの面倒を見るような生活だったの。

 私は小学生に上がるときからその寮に入っていて、最初は両親に会えないのも寂しかったけど、少しずつ慣れていったわ。

 小さいころからの友達もいたし、それに……優しいお姉様が面倒を見てくれてたから。

 

「お姉様……」

 私はその単語を自然とつぶやいていた。

 だって話の流れから言って、その人は………

 話のこれからを思うと胸がきゅっと切なくなる気がした。この先を聞きたい、聞かなくてはとは思うし望んではいるけど……それでも………これから話をさせることは蘭先輩が傷つくことになるんじゃって思うから。

「ふふ、まだ話は始めたばかりよ」

 と、ニヒルな笑顔でその達観しているような顔がなおさら私の胸を締め付けた。

 

 お姉さまとは結構歳は離れていて、入寮したときに案内してくれたのをきっかけによく遊んでもらっていたの。あ、遊ぶっていうのは普通の意味よ? 一緒にテレビを見たり、おしゃべりをしたり、お風呂入ったり。いつでも一緒だったというわけじゃないけれど同級生といるよりも一緒にいることは多かったかもしれないわね。

 数年はそんな風に過ごしていたわ。お姉さまだけじゃなく、友達と遊んで、勉強して、時には喧嘩して、仲直りして。ほとんどの人が通る子供時代。

 当たり前だけれど、私にもそんなことはあったのよ?

 そんな風に数年を過ごしたの。学年が上がると勉強や部活動で時間が取れなくなることもあって、お姉さまと過ごす時間は昔に比べれば少しは減っていた。それでも、一緒にいることは多かったけれどね。お姉さまと仲良くしていた関係で、お姉さまの同級生たちとも仲が良くていろんな人に可愛がられていたかしら。

 …………それが理由の一つでもあったんでしょうね。

 ……そう、鈴ちゃんが今考えたようなことのね。

 その日のことは今でもはっきり覚えているわ。

 お姉さまたちと一緒に夕ご飯を取っていたとき。お姉さまたちはちょうどテストが終わったってはしゃいでいて、そのグループのうち何人かが内緒話をするみたいにしていて、私は何のことかって聞いてしまったの。

 その場でははぐらかされたけど、その日の就寝時間前。お姉さまと一緒にいた私は部屋に戻ろうとしたのを止められたの。

 ごはんの時、何を話してたのか気になる? って。

 少し興奮したように頬を染めてて、浮かぶ笑みは今まで私が見たことない色気が混じっていた。

 私はその顔に見惚れていたと思う。なんのことかわからないけれど、でも私はお姉さまのことを信じていた。

 大好きなお姉さま。夕ご飯の時には仲間外れにされたようで少し悲しかったけれど、でもお姉さまは私を仲間外れにしないんだなんて嬉しく思ってた記憶がある。

 そして私はお姉さまの手を取ったの。

 

「…………………」

 蘭先輩は自分の顔を淡々と話している。私にはその意味が、理由がわからない。それは蘭先輩にとってつらい思い出なのか、それとも好きな人の思い出なのか。

「ぁ……」

 いつの間にかうつむいていた私が顔を上げると、蘭先輩と目があった。

 その碧眼の瞳にはいつものように透き通っていて少なくてもふさいだ気持ちは見当たらない。

「別に辛いことなわけじゃないわ」

「そう、なんですか」

「えぇ。……もっとも、そう思うことが普通じゃないのかもしれないけれど」

 過去を思っている蘭先輩は悲しそうではなかった。でも、今それを口にした時には……いつもの諦観がにじんでいる。

「……つづけるわよ」

「……はい」

 

 お姉さまに連れていかれたのは上級生たちのフロアで、でもお姉さまの部屋ではなくて空き部屋だって聞いてた部屋。

 そこに入ったときはびっくりしたわ。

 大きなベッドが二つ、三つ並んでいてそこには十人近くの人たちがいて、服を着ている人もいれば、下着姿の人、何も身に着けていない人さまざまで、部屋の中は淡い光と生ぬるい空気と甘い匂い。

 その中で体を重ね、抱き合い、舐め合い、胸を触りあい、キスをしていた。

 その時の私には何をしているのかわからなかった光景。

 みんな知っている人たちだし、それにハグやキスなんて日常茶飯事だったから驚きはしたけれど嫌悪感とか恐怖とかはまだその時は感じてなかった。

 わけのわからないままお姉さまを見ると、お姉さまはニコっと優しく笑ってくれてから頬を撫でてキスをしたの。

 キス自体初めてではなかったわ。もう何度かしていた。けれど、キスを終えた後のお姉さんは舌で唇を撫でる姿にものすごくドキっとした。

 それからベッドに連れていかれた。

 私が来るなんて予想してなかったみたいで私の周りにはすぐ人が集まってきたわ。なんなんだろうって思う前に気づけば服を脱がされていた。

 さすがにそこまで来ると少し焦りもしたわ。裸を見られるのはお風呂が一緒だったこともあって慣れてはいたけれど、そういうのとは全然違う気がしたから。

 体中を触られて、知らない感覚がしてた。直に重なる肌がすごく熱くて、当てられる胸が柔らかくて。

 どうすればいいのかわからないまま、私はいつのまにか服を脱いでいたお姉さまをすがるように見つめたけれど、お姉さまはまた笑ってキスをしてきた。

 今度は舌が入ってきて、私はわけがわからなくなってでも、だんだん頭の中がしびれるような気がしてた。

 キスが終わると、お姉さまは髪をなでながら「大丈夫、全部私に任せてくれればいいの」何を任せればいいのか、これから何をされるのか私は何もわからなかった。

 でも、私はお姉さまのことを、大好きなお姉さまのことを信じていたから「うん」って頷ていた。

 ……ん? ふふ、鈴ちゃんがそんな顔をする必要はないって言ってるでしょ。

 言ったでしょ。辛いことじゃないの。思い出したくない話じゃないって。

 あぁ、話が逸れてしまったわね。

 そのあと私は、されるがままだったわ。お姉さまの手が優しく胸に触れた。キスをしながら、誰かが私の指をくわえてなめるのがくすぐったかった。指だけじゃなくて、首も、頬をお腹も、いろんな人が私に触って、キスをして、舐めてきた。

 体がゾクゾクって震えたわ。お腹の奥が熱くなって、下着が濡れたのがおもらしをしちゃったのかって恥ずかしくなって、でもそんな恥ずかしいとか、少し怖いとかそんなことを思うよりも何より、

 気持ち、よかった。

 お姉さまが私を可愛がってくれてるって感じて、もう何十回と女の子との経験をしているテクニックは初めての私を感じさせた。

 脳が焼けつくような快感。それがエッチをすることだって私は知らなかったまま、初めての絶頂を迎えたの。

 何が起きたのかわからないけれど、お姉さまはただただ優しくて可愛いとか、好きとかそんな言葉を囁いてくれて、お姉さまに抱きしめられながらそうされると全部をお姉さまに預けてしまいたい気がしてぎゅっとお姉さまを抱き返した。

 気持ちよかったって問いかけるお姉さまに、はいと頷くと……もう一回気持ちよくしてくれた。

 今度はもっと激しく、初めての時はお姉さまが敏感なところをしてくれていたけれど、二回目はいろんな人がキスをしてきたし、乳首をなめられたり、手を取られて……触らされたりもしたわ。

 初めて人を触ったけれど、熱く湿ってて不思議な感触だって思ったわ。でも、そんなことに気を取られてる余裕なんてなくて、お姉さまは私のあそこを触ってきた。焦ったけど、少し怖かったけど、でも私はお姉さまを頼ることしか頭になかったから……

 最初の時よりも強い快感。びりって体に電気が走って、何も考えられなくなって呼吸もうまくできないほど私の頭は気持ちいことに支配されてて、このままずっとこうしていたいようなそのままでいるのが怖いようなそんな気持ち。

 周りには楽しそうな声。私に触れる人もいれば、私を無視してキスをしたり抱き合ったりしてる人たちもいた。

 そんな、非現実的な光景を目にしながら私は二回目の絶頂を迎えて……その日はそのまま気を失ってた。

 

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