どういう顔をすればいいのかわからなかった。

「あ……の……」

 なんと声をかければいいのかも。

 意味のなさない言葉を発して、私は……

「っ……」

 ベッドの上に置かれていた蘭先輩の手を取っていた。

「っ……?」

 人形のように白く、細長く白魚のようなすべすべとした綺麗な手。私の体を知っている手、女の子のことを知り尽くしている手。

 どうしてなのといつも疑問だった。なんでこの人はあまりにも当たり前に女の子と体を重ねるのだろうって。

 それを知りたいと思っていた。けど……こんな……

「……………」

 想像もできなかった過去に言葉が出てこない。

 胸を鬱ぐ想いにさいなまれながら、熱くなった瞳を向ける。

「無理に何かを言わなくてもいいわ。話はまだ終わっていないんだし」

 感情が声にはならないものの顔には出している私とは違って、蘭先輩は涼しい顔をしている。でもそれは、なんとも思っていないんじゃなくて、どんな風に表現すればいいかわからないから。だから、笑っているのに泣きそうに見えて、泣きそうなのに笑っているように見える。

「あ、の……もう」

 このまま話を続けるのは蘭先輩を追い込むようにも思えて気づけばそんな風に言っていていた。

「聞いてきたのは鈴ちゃんの方よ?」

「それは……そうです……あっ」

 答えきる前に蘭先輩は私の手を外す。消えたぬくもりの残滓が妙に不安にさせて、私はその手をぎゅっと握りしめ、続きを語りだす蘭先輩の横顔を見つめいた。

 

 

 初めての日こそ驚いたけれど私はその日からお姉さまたちと過ごす時間は今まで以上に増えた。

 あの部屋に誘われることも多くなっていて、私は恥ずかしくはあったけど嫌悪感とかそういうのはなかった。

 だって、その時の私はあれがどういう行為なのかも知らなかったし、普通のことだってみんな言っていたから。

 気持ちよくしてもらって、気持ちよくしてあげる。

 それは正しいって当たり前だってそう思ってた。

 だって、お姉さまに抱かれるのはすごく幸せだったもの。お姉さまにキスをされて、体中触れてもらって、一番大切なところを愛されて、頭の中、心の中まで全部お姉さまで埋め尽くされて絶頂を迎えるのは私の一番好きな瞬間だった。

 お姉さまを気持ちよくしてあげて、上手ねって褒められるのも最高だったし、他の人とも何の抵抗もなく私は体を重ねてたわ。

 私にとって仲のいい人とエッチをするのは、たぶん他の子たちがどこか遊びに行くっていうのと同じ程度の感覚になってた。

 そうやって私は数年を過ごしたの。

 その頃には私は少し違う立場になってたわ。お姉さまたちに可愛がられるのは変わってなかったけど、同級生をその部屋に誘ったり、下級生には私がお姉さまに向けていたのと同じような感情を持たれていた。

 可愛がれて、可愛がって……それが当たり前の生活をずっとしてきたの。

 そりゃ上手にもなるわよね。さんざん可愛がられたおかげでどこをどうすれば気持ちいいのか手に取るようにわかる。

 可愛がられるだけじゃなくて、可愛がる楽しさも知っていった。

 お姉さまが寮からいなくなってもそれは続いて、いつのまにか私がみんなをまとめる存在になってた。

 当時はそれも楽しかったわよ。みんなが私を慕ってくれていた。ずっとお姉さまに可愛がれていたから、少し物足りないところはあったけどね。

 お姉さまが私にしたように何にも知らない子を連れてきては、【普通のこと】を教え込んだ。

 それが私の向こうでの生活。

 何も知らなかった私は、教えられるままにお姉さまのすべてを受け入れて、それを下級生たちに伝えていった。

 たぶん今でも同じことが行われているんでしょうね。始まりがお姉さまだったのか、それとも他の人だったのかは知らない。

 けれど、私はお姉さまからそれを継ぎ次へつないでいった。きっとそれは続いているんでしょうね。

 でも、私はその続きを知ることなく親の都合で日本に戻ってくることになったの。

 

10−1/10−3

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