夏休みが空けてから少しして、後期の始まり。

 ………絢さんが寮母としてやってきたの。

 もともと年の行った人が寮母をしていたんだけど、体を悪くしちゃってね。代わりにやってきたのが絢さんだったの。

 絢さんは………お姉さまに似ていた。もちろん、そもそも国籍が違うんだし髪の色も瞳の色も違うけれど、お姉さまが大人になったらこんな人になるのかなと感じさせてくれた。

 あぁ、だからってそれで好きになったわけじゃないわ。気にはなったけれど私が感じたのは絢さんへの恋じゃなくて、お姉さまへの想い。

 ホームシックというと少し違うかもしれないけれど、それに近い感情を持ったの。

 向こうの生活が懐かしくなった。外国にいた頃、結局私はお姉さまに依存し続けていた。自分が【お姉さま】の役目でもあったけれど、それは私がお姉さまを頼っていたからなの。お姉さまは寮に遊びに来てくれて、悩みがあればなんでも相談して受け入れてくれて、慰めてくれた。

 こっちに来てからの私は寮ではそれなりには受け入れられていたけれど、確執がなかったわけじゃない。この髪もこの目も目立つからね、良くも悪くも。

 支えてくれる人はいなかったのよ。瑞奈には色々話せたけど、頼れはしなかった。甘えることはできなかった。

 それでも周りは私に【お姉さま】としての役割を期待したわ。

 疲れていたんだと思う。どうせ会えないからってお姉さまの頃を考えないようにしていたのに、絢さんが来たことで懐かしくなった。

 ……帰りたくなったの。

 でも、そんなことはできるわけはなくて私は一人になることが多くなっていた。

 一人になってお姉さまや向こうでの友達のことを思い出して泣いたりもしてた。

 それを絢さんに見られたの。

 絢さんは私のことを心配してくれたわ。

 外国から来た女の子が周りになじめずにいるってそんな風に思ったみたい。それは間違いではなかったけど、正しくもなかった。だって、どうして絢さんは私が寂しがっているかわからなかっただろうから。

 でも私は嬉しかった。疲れていて、寂しくて誰かに頼りたいと思ってもその相手がいなくて、そんなところにお姉さまを思わせる人に優しくされたの。

 なびくなっていう方が無理だった。

 私は絢さんと多くの時間を過ごすようになった。すぐにエッチをするようには不思議とならなくて、放課後や夕食後の寝るまでの時間に部屋に行くようになって他愛ない話をした。

 私は少しずつ元気が出るようにもなって、瑞奈や他の子とすることも苦にはならなくて充実した日々を送るようになったわ。

 しばらくはそんな日々。季節は秋から冬になって、クリスマスもお正月も終わって、バレンタインも近くなった二月の寒い日。

 その日も私は絢さんに会いに行っていて、絢さんは何気なしにそれを口にしたんだと思うわ。

 元気になってよかったって。

 それは何もおかしくもない、大人として寮母として当たり前の言葉。

 私も最初は、秋ごろには落ち込んでいたことを認めて、その理由を話していた。お姉さまと会えないことに対する寂しさとか、向こうでの生活が懐かしいってことを。

 でも、それが失敗だった。

 話していくうちに止まらなくなって、私はまた向こうのことが懐かしくなった。……お姉さまに会いたくなった。

 気づけば私は涙を流していて、絢さんが言ったの。

【その人のことが好きだったんだ】

 って。

 そして、私は初めてそれに気づいた。同時にもう会えないことに絶望して声を上げずに私は泣いて……絢さんは私を抱きしめてくれた。

 …………ここで終わればいい話、だったんでしょうね。

 絢さんはそこで終わりだと思ったんでしょうけど……私は絢さんを求めたの。

 もちろん、今あなたが想像した意味よ。

 絢さんは拒絶しなかったわ。理由は……知らない。

 同情だけだったのかも知らないし、都合よく考えれば私のことを少しは特別に思っていたからかもしれない。

 とにかく私は絢さんとの初めての夜を過ごして……好きになった。

 今思えば結局それは代替行為だったのかもしれない。お姉さまへの恋が気づかずに終わった心の隙間を絢さんで埋めていたのかもしれない。

 絢さんはそんな私をどう思っていたのかはわからないけれど、でも少なくも好意的には思ってくれていたのだと思う。

 肌を重ねることも多くなって……寮母室を訪ねることに不審がられないようにあの部屋でするようになった。

 絢さんは肯定的には取ってくれていたとは思うわ。そう思いたいだけかもしれないけれど、私とのエッチは絢さんも嫌いじゃない……ううん、好きだったのだと思う。

 することにも抵抗がなくなっていて、そうやってまた日々を過ごしていった。

 絢さんに依存するようになってから私は元気になったわ。これまで以上に日々の生活を楽しめるようになっていた。

 絢さんとは毎日あっているわけじゃなかったし、絢さんと関係を持ってからも瑞奈を始め他の子との関係を持ち続けた。

 それを私はおかしなことだとは思えていなかったわ。好きな人がいるのに、他の人とエッチをすることが異常なこととは思っていなかった。

 そんなずれた私に報いが来たの。

 絢さんとはあの部屋で待ち合わせするようになっていて、鍵は私と絢さんの二人だけしか持っていなくて、はっきり言うと便利だったのよ。

 二人部屋が基本の寮で気兼ねなく二人きりになれる場所だったから。

 その日も私は別の女の子をあの部屋に連れ込んでいて、偶然絢さんはそこを通りかかったの。

 自分と私以外には来れない場所のはずだった。だから、私がいるのかなって覗いてきたんでしょうね。

 他の子としているところを見られたのよ。

 絢さんはショックを受けていたようだったわ。

 対して私は……………絢さんが何を驚いているのかわからなかった。

 わからなかったから……三人でしましょうなんて言ったのよ。

 絢さんは混乱して、私に問いかけたわ。何を言っているのって

 私は答えた。何がおかしいのかって、何を驚いているのかって、エッチするのは友達なんだから何もおかしくないでしょうって。そうだ、今度みんなでしませんか。せっかくこの部屋広いんだし。

 私にはわからなかったのよ。知らなかったのよ。お姉さまたちに可愛がられていたあの部屋が異常なものだったなんて。

 そして、絢さんは言ったわ。

 

10−3/10−5

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