蘭先輩は一体どういう人なんだろう。

 それは朝蘭先輩と話した時から思ってたことで、お昼に千秋さんと話すことで一層深まった思い。

 蘭先輩がどういう人なのかっていうのもそうだけど、それ以上に千秋さんとの関係が知りたい。

 ………千秋さんは本当に蘭先輩のことが好きなんだって思うけれど、蘭先輩の方はよくわからない。

 あの人は、一体何を考えているの?

 千秋さんは蘭先輩のことをどう思ってて、蘭先輩は千秋さんをどう思っているの?

 それに、千秋さんのあの態度。

(……お姉さまって呼んでた)

 それがどういう意味なのか今ならわかる、けど。

 あの千秋さんがあんな風になるなんて実際に見た今でも信じられない。

(……けど)

 あれは紛れもない現実の事なのは自分が一番よく知っていて

「鈴さん」

 だからこそ、余計に信じられなくて

「鈴さんってばー」

「え? きゃっ!!?」

 ベッドに横になりながら考え事をしていた私の顔の前に急に冬海ちゃんの可愛い顔がうつってびっくりした。

「わっ!? 驚きすぎですよぉ」

 私の驚きに呼応するみたいに冬海ちゃんはわわわっと愛らしい様子で後ずさった。

「お、おかえりなさい」

「あ、はい。ただいまです。まだ、熱下がらないですか?」

「う、うん。えと……そう、かな」

 ぼーっとしてたの意味を取り違えられているような気がしたけど、素直にうなづいておく。

(……そういえば)

 けど、あることを思い出して冬海ちゃんのことを見つめなおした。

「……冬海ちゃんって、千秋さんのこと詳しいのよね?」

「? ……えーと?」

 その反応を見てちょっとしまったなって思った。脈絡がなさすぎてあまりに唐突なこと。冬海ちゃんからすれば、私の心配をしてくれてたはずなのに千秋さんの名前が出てくる意味がわからないって思う。

「詳しいっていうか、まぁ、普通には知ってると思いますけど」

 なんでこんなことを聞かれてるのかわからないとは思ってるんだろうけど冬海ちゃんは素直に答えてくれる。

「そ、そう」

「千秋先輩がどうかしたんですか?」

「えーっと……千秋さんと…………蘭、先輩って仲がいいの?」

 今度は言う前に変なことを聞いてるって自覚はあったけどもう止められなくてそれを聞いた。

「? 蘭先輩と、ですか? うーん、と……ほとんど話してるのは見たことないですけど、別に悪くはないんじゃないですか?」

「そう、なの……」

 転校してきて一週間。私も二人が話をしているところは見たことがなかった。

(やっぱり、内緒にしているの?)

 それは二人の関係を思えばそんなに変なことじゃないかもしれないけど……でも、少し引っかかるような気もする。それは何がってはっきり言葉にできることではないけれど

「蘭先輩って言えば、どうして朝蘭先輩が来てたんですか?」

 考え事の途中だったけど、冬海ちゃんから当然と言えば当然の疑問が飛んできた。

 私も昨日まで蘭先輩と話したことなんてなかった。なのに急に部屋に訪ねてきたりしたらそれは不思議なことなんだろう。

「……昨日、少し話して……その、調子悪いの、気づいてたみたい、だから……心配してきてくれたの」

 本当のことなんて言えるわけはなくて目を泳がせながらそうやって答えた。

(……言えるわけがないもの)

 改めて蘭先輩のしてきたことは効果的なことだったんだって実感する。あんな秘密は誰にだって言えない。

 まして、そういうことに何も興味も知識もなさそうな冬海ちゃんになんて。

「そうなんですかぁ。いいなぁ、私も蘭先輩と二人で話してみたいな」

「っだっ……」

 つい、駄目! って言いたくなったけどその衝動を抑えて、ただ黙った。

 蘭先輩が言ってた通り、冬海ちゃんは蘭先輩と千秋さんの関係も、他にそういう人たちがいることも知らないように見える。

 それはほんの一日前まで私が持っていた純粋さで、それは他人が穢しちゃいけないものだって思ったから。

「………………」

 だから私は不自然な沈黙を作って

「? 鈴さん?」

(……蘭先輩と話してみよう)

 心配する冬海ちゃんをよそにそう決断していたの。

 その危険性を想像できないわけじゃなかったのに。

 

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