この前のはなんだったのかなー。
二人が妙な空気になってて、いきなりキスをされた時から数日が経っていた。二人ともちょっと変なところはあるからそこまで気にしてるってわけじゃないんだけど、今日は明日が休みなこともあってゆめが泊まりに来たんで改めてそれを考えてみた。
(大体、まずなんでベッドにいたの)
お風呂上り。髪を乾かしながらあたしは順を追ってみることにする。
あの日はゆめが遊びに来るって話はあって、あたしは買い物がしたかったから美咲を置いて出かけた。
んで、帰ってきたら二人がベッドにいたってわけ。
(……何の整理にもなんないな)
二人でいた時間は一時間もないはずだけど、その間に何かあったのかな。妙な一体感が二人にあって、いきなりキスされて。
「あー、そういえば」
あたしはドライヤーを止めてふと思う。
三人でいる時にキスされたのって初めてかな? いや、もともと人の前ですることじゃないけど。まぁ、美咲とゆめだったら全然問題ないけどさ。
二人だって同じだろうけど……
(だからっていきなりキスするもんかね)
やっぱり考えてもわけがわかんない。そもそもあたしは美咲でもゆめでもないんだから考えてもわかるわけがない。なら
「うん」
あたしは一つ大きくうなづくとドライヤーを止める。
「せっかくゆめが来てるんだし聞いてみよ」
決意を声にしてあたしは部屋に戻って行くことにした。
その意味を体で知ることになるとは知らずに。
「お風呂出た……よ!?」
あたしが意を決して(そんな大層な決意じゃないけど)部屋に戻ると、この前と同じように戸惑いの声を上げた。
(な、なんだ。一体どうなっている)
ちょっと自分のキャラを崩しちゃうほど理解に苦しむ光景が広がっていた。
「おかえりなさい、彩音」
「……遅い」
あたしを驚愕させた二人はベッドの上に座ってあたしに声をかける。
うん、それはいい。人のベッドを占領するなくらいは言いたいけど、今更だしそれはいい。
問題なのは
「な、なんでそんな格好してる、の?」
二人の格好。
「なんでって、彩音はこういうのが好きなんでしょ」
美咲は、いつだったかあたしに見せてくれたベビードール。白を基調として散りばめられたレースや左右を繋ぎとめる大きなリボンが可愛いやつ。あと、ニーソックス。
「……この方が彩音が喜ぶから着てあげた」
ゆめはあたしがプレゼントしたキャミソール。薄ピンクの布がゆめの平坦な体を包み、肩ひもしかない肩が小学生にしか見えないゆめの体すら官能的に感じさせる。
と、まぁ二人の下着のおさらいはこのあたりにして。
「い、いや、あたしがどうとかじゃなくてなんでそんな格好してるかって聞いてるんだけど」
二人ともあたしがお風呂行く前には普通にパジャマ着てたのに。
(……………)
なんだか胸がざわついてる。
この胸の高鳴りをうまくは説明できないんだけど、こ、こういう格好するのってなんていうか特別な時だと思うんだよね。しかもわざわざ着替えてるんだし。
「わかんないの?」
「……彩音は鈍い」
わかんない、っていうか。答えを出すことを怖い……わけじゃないけど、その……なんていうか……えと……
(そ、そういうことにしか思えないんだけ、ど………)
「いいからこっち来なさいよ」
しかもベッドに呼ばれちゃったよ。
これはもう確定的、だよ、ね。
えぇー。な、なんでいきなり? どんな理由でこんなことになってるの? 二人の様子がおかしかったのってこういう意味?
とか考えながらも足は素直に動いてベッドの前まで来ちゃった。
「え、えーと……」
何を言うべきかもするべきかもわからずベッドに座る二人のことを見る。
二人は何も言わないまま下着姿であたしを見つめ返すのみ。
(う、わ……)
なんか、むしょうにドキドキしてきた。
ほ、本当に、する、つもりなのかな。さ、三人で?
い、嫌とかじゃないけど……ほ、ほんとに? 今までそういうの全く考えてなかったわけじゃない、けど……具体的には何にも考えてなかったっていうか……えっと……
「いつまでそうしてんのよ」
「………さっさとこい」
「え? きゃ!?」
二人に手を引かれて、ベッドに引き倒された。
ただ、落ちた先はベッドの上じゃなくて、生の暖かさを感じさせる人肌の上。
右から左から二人に抱きとめられている。
「え、えと……と、とりあえずはっきりさせたいんだけど………これって、その……そういうことでいい、の? さ、三人で、的な」
さすがに恥ずかしくて直接的には言えなかったけどそれでも十二分に意図が伝わるように言った。
(これで違うとか言われたらあたしはとんだ赤っ恥だな)
なんて心配はもちろん、
「そうよ」
杞憂だったらしい。
つか、あっさりそうとか言わないでよ。こっちは今とこれからのことで十分顔が赤くなってるのに。
「……わざわざ言わせようとするなんて彩音は変態」
「ち、違うって、。つ、つか、なんで急にこんなことになってんのよ」
あたしもね、嫌なわけじゃないんだよ!? 二人のことは愛してるんだから全然嫌とかそういうんじゃない。ただもう少しムードというか、順を追ってというか……まぁ、二人でならともかく三人でこういうことするムードとか全然想像つかないんだけど。
「理由がないと駄目?」
「そういうわけ、じゃない、けど」
必要なようなそうでもないような。ただ、知りたいとは思うんだよ。
「……プロポーズ」
「へ?」
「彩音が私たち二人にプロポーズしてくれたから、それに応えてあげようっていうのよ」
「そ、それは別に、こういう形じゃなくてもいいような……」
「……そうさせたのは彩音」
「え?」
どういう、こと?
「……………」
「……………」
なぜ黙る。
「バーカ」
「………バカ」
「ちょ、なっ!!?」
ちゅ。
いきなり二人に罵られたかと思うと二人はほっぺにキスをしてきた。
感触の違う二つの唇にそれぞれのことを見つめると
「っ」
ベッドに押し倒された。
「それがわかんないのなら」
右から美咲が
「……私たちに好きにされろ」
左からゆめが迫ってくる。
可愛いとかそういうよりもいやらしいって表現するほうが正しいような下着姿の二人がベッドに倒れたあたしに折り重なるように迫ってくる。
「……んく」
あたしは部屋に戻ってきてからずっと戸惑っていたけど、同時にドキドキもしてて理性なんかとっくに崩壊寸前で。
「愛してるわよ、彩音」
「……愛してる」
左右から愛のささやきなんか聞かされちゃって
「あたしもだよ」
また二人からのキスを受け入れていた。
そして、あたしたちは初めて三人で愛を確かめ合う。
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次回更新は【拍手上】で、です。……そういうことです。三人で、というのは色々いいのかなとも思うのですが、可能性に挑んでみることにします。
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