(むー、ちょっと遅くなっちゃった)

 あたしは少し早足に家へと向かいながらそんなことを思っていた。

 ゆめが来るって言ってたからそれまでに帰ろうと思ってたけど、もうゆめは来てるだろうな。

 まぁ、でもあたりな新作お菓子を見つけたしこれで喜んでもらおう。

 あたしはそんな風にのんきなことを考えながら二人の笑顔を想像して家に帰ると、手洗いうがいをして部屋に戻って行って

「ただい……へ!?」

 目の前に広がる光景に狼狽した。

「え、ちょ、二人ともな、なにやってんの!?」

 あたしのベッドの上で美咲とゆめが折り重なるように寝ていたから。

「ん、あぁ彩音。おかえり」

「……おかえり」

 二人はあたしに気づくとけだるそうに体を起こす。

「う、うん、ただいま」

 二人が普通の反応をしたことに逆にあたしを落ち着かなくさせる。

(え? え? 何してたのこの二人?)

 昼間っから人のベッドの上でだ、抱き合ってた? いや、そういうわけじゃないか。抱き合ってたって感じじゃないよね。けど、ベッドの上で……こう……体を重ねて、なんていうかそれは……えーと。

「…………彩音がいやらしいことを考えてる」

「そうね。あれはそういう顔ね」

「へっ!?」

 あたしが真剣にこの状況を考えてたはずなのに二人がいきなり茶化してくれる。

 い、いやらしいことってそんなん全然考えてないっつの。だいたい

「あ、あんたらこそ昼間っから人のベッドでなにしてんのよ」

 こっちの方が問題っていうか、おかしな状況でしょ。どんな理由があって昼間から人のベッドであ、あんな風に寝るようなことになんのよ。むしろあたしがした想像の方が健全だっての! い、いや何か具体的なことをかんがえたわけじゃないけど。

「さぁ? 何かしらね」

「………彩音には内緒」

 な、なんだこの空気は。ゆめが来てから一時間となってないだろうにすごいハブられた感がある。

「まぁ、彩音が考えたようなことじゃないわよ」

「……うん。彩音じゃないんだから違う」

「………………」

 あ、あやしい。妖しすぎる。絶対この二人なんかあったよ。

「あ、あたしが何考えてたっていうの」

「どうせ、私たちがいやらしいことでもしてたんじゃないかって考えてるんでしょ」

「………彩音は変態」

「ち、違うって。そんなに具体的には思ってないよ」

「こんな昼間から想像力豊かなことね。まぁ、彩音には昼間とか関係ないのかしら? 私が初めて彩音にされた時も夕方だったし」

「ちょ!」

 ゆ、ゆめの前でいきなり何言ってんだ!

「……私も風邪引いてたのに、昼間から襲われた」

「お、襲ってはないでしょうが」

 いやいやいや。というか、二人していきなりなんてことを言ってくれてる。そんな大切な二人の思い出を。しかもなんかあたし無理やりしてみたいな言い方だし。

「って、ていうか、なんなの二人とも。ほ、ほんとにどうしたわけ?」

「さぁ? 自分で考えなさいな。そんなことよりちょっとこっち来なさいよ」

「は、はぁ?」

 よくわからないままあたしは美咲の言うとおりベッドに近づくと。

「んっ……」

「っ!!?」

 また、意味不明なことが起きる。

 ベッドに上がったあたしに唐突にキスをしてきた美咲。

「ちょ、ゆ、ゆめの前でいきなり……」

 って、美咲の抗議をする間もなく

「……彩音」

「っ!!!???」

 今度はゆめにまで唇を奪われた。

「……はふ……」

 二人ともほとんど一瞬だったけど……え?

「なんだか喉乾いたし、飲み物でも取りに行きましょうかゆめ」

「……うん」

 あたしの頭が?で埋め尽くされている間に二人はそう言って部屋を出ていく。

(な、なんなの一体?)

 一人残されたあたしは二人に奪われた唇に触れながらそう思うしかなかった。

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